・タイトル
ガンダムSEED
・点数96点(小説としての評価)
表現力☆☆☆☆☆
深み☆☆☆☆☆
芸術性☆☆☆☆☆
ストーリー性☆☆☆☆☆
読みやすさ☆☆☆☆
・点数 98点(アニメとしての評価)
ストーリー☆☆☆☆☆
構成☆☆☆☆☆
視覚的面白さ☆☆☆☆☆
聴覚的面白さ☆☆☆☆☆
熱中度☆☆☆☆☆
・評価
ガンダムのノベライズということを一度忘れて、戦争と遺伝子組み換えをテーマとする作品。と捉えた場合、小説版のほうがアニメより優れている部分があります。
というのも、小説版はアニメでは描かれていないキャラクターの心理描写の補完が非常に多く、表現力・文章力、共に長けています。
そこがノベライズ版SEEDの最大の魅力です。
テーマがテーマだけに結構重めのストーリーです。
遺伝子組み換えの有無で人種が分かれて戦争を行っている中、中立国で過ごす時間が長かった主人公のキラは現在の友達を守る為に戦場に立つも、戦う相手はかつて再会を誓い合った幼馴染みの親友も含めてもれなく全員同族であり……という。
この設定があるがゆえに、心理描写重視のノベライズ版が非常にハマってました。
そんな中、映像+音楽+声優さんの熱演が入るアニメ版と比べてどうしても見劣りしてしまう戦闘の描写も巧みな創意工夫により、細やかに再現されています。
遺伝子だったり、覚醒演出に使われる種割れという表現等、歴代ガンダムの中でもかなり分かりやすいのがSEEDだと思います。
アニメ・小説共に構成力が素晴らしく、SEEDの世界観やストーリーに無駄はほぼない印象です。個人差はあると思うので、あくまでも個人的な意見です。
キャラクターに関してはアニメよりも小説版のほうが「生きている」という感じがします。
人間性を重視したいなら小説版、躍動感を重視したいならアニメ版という感じで差別化が出来ているので、共存出来ているのもSEEDの魅力です。
どちらにも固有の良さがあるので。
SEEDはキャラクター同士の会話の中でハッとさせられる部分が数多く存在します。
大人にこそ見て欲しい作品です。
福田監督と両澤さんの夫妻、サンライズが作り上げたアニメーションをノベライズ版として新たな解釈や描ききれなかった心理描写を足して描かれた。という点でも、関わってる人の人数に対して大きくブレてないところが素晴らしく、それでいてブッ飛んだキャラクターがエッジを効かせてくれるのが作品の売りの1つだと感じました。
遺伝子操作の末に生まれたコーディネーターが敵・味方がいることにより、キャラクターそれぞれが様々な感情を抱いて行動するので、誰かしらには共感出来ると思います(小説版の場合)。
また、1年規模の作品とその続編、劇場版、更には数多くのグッズ展開がなされてるモンスター級の影響力と人気がある作品です。
グッズ展開させやすいのって強いですね!
ノベライズ版に関しては、アニメへのリスペクトを持ちながら、負けないように作られているので、熱量が凄いです。
だからこその劇場版の脚本に後藤リウさんが選ばれたのだと思います。
ノベライズ版ならではの魅力としては、冒頭の資料と挿絵によるキャラクターの過去の写真が絶妙なタイミングで出される。もあります。
結構感情揺さぶられました!
アニメ版の魅力は戦闘シーンの格好良さとカメラワーク、いいとこでかかるT.M.Revolution音楽(挿入歌含むBGM全般)と声優陣の熱演です。
アニメの醍醐味は結構詰まってます。
そして、結構もってかれる没入感があります。
SEEDに関してはあんまり無駄がないので一部の物議を呼んだシーンを除けば総合的に見てもバランスのいい作品と言えます。
この先は商品リンクを挟んで、内容に触れた感想を書いています。
ネタバレが気になる方はご注意下さい。
・著者情報
著者 後藤リウ
経歴
三重県四日市市出身。愛知県名古屋市在住。
南山大学文学部国語学国文学科を卒業後、文筆の道に進みます。
2003年にノベライズ ガンダムSEEDでデビュー。主な作品
オリジナル
イリーガル・テクニカ
ちょこプリ!
うしろシリーズ
夢守の姫巫女シリーズ
こっこ屋のお狐さまノベライズ
ガンダムSEED
ガンダムSEED DESTINY
ラメント
こばと。
貞子3D2―再誕
人間回収社シリーズ
・本の概要
アニメ『ガンダムSEED』のノベライズ版で、角川スニーカー文庫より全5巻が発刊されました。
各巻の個別レビューは以下のリンクから。
1巻
ガンダムSEED: 青春と戦いの物語 - 神黎の図書館
2巻
熱砂で織りなすガンダムの戦い~砂漠の虎 熱砂の戦場を駆け抜けろ、ガンダム~ - 神黎の図書館
5巻
明日への闘い: ガンダムSEEDの物語 - 神黎の図書館
アニメでは描ききれていない各キャラクターの心情が丁寧に描かれていますが、あとがきでご本人が言われている通り、後藤リウさんの解釈によるガンダムSEEDということなのでアニメを知っていても別の角度から楽しむことも出来るかと思いますが、あまりにもこだわりが強すぎる方にはおすすめできません。
さて、そもそもガンダムSEEDとは何か?
知らない方向けに、アニメ版の設定も交えてざっくり説明します。
ガンダムSEEDのキャッチフレーズは、
「決闘(デュエル)、暴風(バスター)、電撃(ブリッツ)、盾(イージス)、攻撃(ストライク)五機のガンダム現る!!」
です。
この作品は「新しい世代(当時)に向けた、新たなスタンダードとなりうるガンダム」、「新世紀(21世紀)のファーストガンダム」、「原点回帰」を目指し制作された作品です。
タイトルの意味には「種子」以外に「遺伝子操作」や「発端」という意味も含まれていて、さらに頭文字のSには「ガンダムズ」の意味もあります。
また、ガンダムシリーズの通例になっていた主人公の搭乗機=タイトルの法則ではなく、その代わりに「SEED」と略記される未知の突然変異遺伝子の設定を反映した作品です。
また、シリーズとしては初めて『ガンダム』の意味が明かされた作品でもあり、同時に主人公のキラ・ヤマトが自分の愛機をペットネーム代わりに呼んだ愛称に過ぎず、機体の正式名称ではない為、ガンダムタイプが『ガンダム』と呼ばれる回数が少なめなのも特徴の1つです。
また、一部に性的・残虐な描写があり、ベッドシーンを匂わせる描写があります。
設定としてはこんな感じです。
では本題のガンダムSEEDとはどんな作品なのかについてですが……
この作品はロボット作品である前に人類が直面するであろう危機に対する危惧から生まれたのではないか……と、僕は認識しています。
ガンダムSEEDのテーマはキラとアスランの2人を主人公とした『非戦』です。
幼い頃に別れた幼なじみの親友が本人の意思とは無関係に『敵』として戦争をすることになり、互いに仲間や友達を理不尽に奪われ、後悔し、互いに憎しみ合い、更に突き付けられる残酷な真実に翻弄されながらも立ち向かう。
戦争を終わらせる為には、説得するには誰にも負けない『力』が必要だという矛盾を抱えながら彼等は戦います。
・まとめ
僕がこの作品をオススメしたい理由は戦争の理不尽さを描いているからだけではありません。
同じ目的があって同じ方向を向いているなら人種も性別も関係ない。
人の『業』によって命を弄んでいいはずがない。
戦争、差別、遺伝子操作etc.
実際に『現実で起こった事象』に少なからず影響を受けて生み出されたこの作品は今を生きる現代人が読んで損はないように思える教科書的な作品だと思います。
ちょっとメカニック的な専門用語が読みづらいという欠点はありますが……
ガンダムSEEDは元々が従来より低年齢層向けに作られた作品でした。
なので、子供の頃に見る『ガンダムSEED』と大人になって読む『ガンダムSEED』では全く異なる印象を持ちました。
何が言いたいかと言うと、たとえ(作者と読書による)そういう解釈、そういう見方もあるのか。という1つの見解に過ぎないとしても、小説版のガンダムSEEDは個人的にはなかなか興味深い内容でしたし、読んで良かった作品でした。
アニメと見比べるのも結構オススメです。
アニメ表現ならではの魅せ方と文章表現ならではの美しさはどちらも甲乙つけがたいので……
強いて言うなら、
ロボットや生身の銃撃戦、ラウの口上、巧みな話術etc.等の視覚的、聴覚的演出を楽しみたければアニメ版、
キャラクター達の細かな心理描写が気になって、バトルよりも人間ドラマや設定、世界観をより深く見たい、知りたいのなら小説版、
ガンダムSEEDの全てを知り尽くしたい!という方はゲームや外伝やが入ります。それはオススメしません(笑)
アニメ版はスペシャルエディションは所謂総集編的な内容です。
HDリマスター版はパーフェクトストライク(ムウが乗ります)等の新規カット有りです。
どちらも続編を受けてなのか一部内容(演出)に変更有りです。
矛盾点を消す方向に変えるとそれが新たな火種を生むという皮肉……
今回オススメするのはあくまでも小説版(とアニメ版)のガンダムSEEDです。
また、SEEDの裏側を描いた作品でもあるSEED系列のほうのASTRAY作品の商品リンクとSEED、ASTRAY双方の主要なガンダムのガンプラ等も商品リンクも貼ってあるので、SEED系列のまとめとしても使って頂ければ幸いです。
ASTRAYは主人公がジャンク屋であり、民間人目線の戦争や、生き抜く為のジャンク屋という生き方の在り方について描いた作品であり、こちらもガンダムSEEDの補完的な意味合いを兼ねた面白い試みの作品です。
SEEDをファースト、DESTINYをZのオマージュとすると、ASTRAYは設定にZZ要素が若干あるかも?っていう認識です。
小説版
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