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戦いと人間の絆を描くガンダムストーリー『ガンダムSEED③ 平和の国』

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・タイトル

ガンダムSEED③ 平和の国

・点数88点(小説としての評価)

表現力☆☆☆☆☆
深み☆☆☆☆☆
芸術性☆☆☆☆
ストーリー性☆☆☆☆
読みやすさ☆☆☆

・点数 94点(ラノベとしての評価)

キャラクター☆☆☆☆☆
ストーリー☆☆☆☆
世界観☆☆☆☆☆
構成☆☆☆☆☆
文章力☆☆☆☆☆


・著者情報

後藤リウ

三重県四日市市出身。愛知県名古屋市在住。
南山大学文学部国語学国文学科を卒業後、文筆の道に進みます。
2003年にノベライズ ガンダムSEEDでデビュー。

主な作品
オリジナル
イリーガル・テクニカ
ちょこプリ!
うしろシリーズ
夢守の姫巫女シリーズ
こっこ屋のお狐さま

ノベライズ
ガンダムSEED
ガンダムSEED DESTINY
ラメント
こばと。
貞子3D2―再誕
人間回収社シリーズ


・本の概要

難敵″砂漠の虎″を下してアラスカを目指し続けるアークエンジェル
その追討命令を受けたアスランは、イザークディアッカ、ニコルを率いて出撃する。

敵と分かっていても親友を撃つことに未だ葛藤し続けるキラとアスラン
だが、目の前で悲劇が新たな悲劇を呼び、ついに二人は避けようのない対決に突入する。もはや後戻りは出来ぬのか……

その絆すら断ち切るのか、ガンダム


・お気に入り度
☆☆☆☆☆

・好きな登場人物
この巻で……という意味では好きなキャラはなしです。強いて言うならやっぱりムウさん。

・好きなセリフ
「だいじな友だちにもらった……だいじなものなんだ」

・好きな場面
これも沢山ありまして、詳しくは下記を見て下さいと言いたいですが、キラとカガリの出会いを推しておきます。

得た学び
何が正しくて何が間違いとか、何が重要で何が不要とか、誰が敵で誰が味方とか、これら全ては状況次第で大きく変化するガイドラインのない曖昧なものなので、一方的な見方や考え、或いはエゴで判断して決め付けるのは絶対にしてはいけないと最初に考えるきっかけくれたのはもしかしたらガンダムSEEDのここら辺の話だったかも。


・評価
アニメとしても小説としてもちょうど中間地点となり、キラにとっての転機となる話が中心となるので、後藤リウ先生の得意な心理描写の描き方とのシナジーが抜群です。

これまでは、「友達だから」が戦う理由だったキラにとっての衝撃的な出会いがあり……。

また、カガリとの出会い(厳密には2回目)の描写も素晴らしかった。

ざっくり言うと、敵味方それぞれにキラの理解者が現れる⁉️そんな中でキラは……って感じの内容です。

タイトルになってる「平和の国」は内容を知ってたらそうなんだけど、初見だと誤解を招く可能性もあるのかな?って少し思いました。

設定・構成・世界観に関しては原作であるアニメの功績であるとも言えますが、抜群の解釈と翻訳力で一人一人のキャラクターを人物として描いているので、文字で読むガンダムSEEDとしては最高級のバランスで描かれていて、満足度最高でした!


以下、商品リンクを挟んで内容に触れた感想を書いています。ネタバレが気になる方はご注意下さい。


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・感想
まず、冒頭挿絵の(おそらくヘリオポリス時代の)仲間(キラ、トール、ミリアリア、サイ、カズイ)の微笑ましい写真?が切ない。もうあの日に帰れない感……

冒頭の設定資料付いてます。地図もあります。相変わらず分かりやすいです!

前巻までのあらすじもちゃんとあります。こちらも分かりやすいですが、1巻の内容が2/3なのでやや不満。でもバルトフェルドさんのことはちゃんと書いてくれてるので良しとしましょう。

3巻の冒頭ではMS(モビルスーツ)とは何なのかが書かれています。あ、意外と説明されてないんだっけ?って思いながら読みました。

地味にロボット工学においては地球側のほうがプラントより優れていたことも書いてます。まあ、これは前の巻でもニコルパパとかがちらっとそれを思わせる発言してますが。

この巻ではキラは最初ウジウジしてます。キラはバルトフェルドとの出会い、戦い、その結末に酷くショックを受けていました。

みんなを守るためなら……そう決意していたのに、敵将であるバルトフェルドさんを好きになってしまった。キラの中で葛藤は続きます。

そんな中、現れたのはカガリでした。キラが泣いているのを見て、子供をあやすようにキラを抱き締めるカガリ。そんなカガリに不思議と母親のような安心感を抱くキラ。

あ、これってやっぱりそういう?って読みながら思いましたが、同時に中学生の頃は本気でこの2人くっつけばいいのにって思っていたことを思い出しました。いやはや懐かしい。

ここでのキラとカガリの話は実に深い話になっています。

人類の夢として生み出されたコーディネーターのはずなのにナチュラルから迫害される……それは即ち、親から忌み嫌われる子供達と同義ということでした。

こういう部分は大人にこそ読んでもらうべき部分かなって思いました。明けの砂漠モードではない?カガリはどこか温かくて好きです。

良くも悪くも負けん気の強いカガリはこの後の戦闘で半ば強引に出撃したり、ムウさんに怒鳴られてカッとなって言い返したりもしますが、最後はグッと堪えて屈辱を覚えながら退避します。成長したねぇ…( ´∀`)

そして、地味に明かされたプチ情報。MSのパイロットの適齢は30歳程まで。
まあ…言われてみればそうか、反射神経とか反射速度とかですもんね?スポーツ選手と一緒ですね!

そして、戦線離脱をしようとしていたカガリアスランを乗せた輸送機が遭遇し、お互い墜落してしまいます。

カガリを捜すよう命じられたのはキラ、アスランを捜すよう命じられたのはザラ隊の3人。

そんな中、カガリアスランに捕縛されかけますが、持ち前の天然純真無垢さでアスランの心を少し開き?解放されます。(武器は取り上げれ丸腰)

アスランを本気で心配するニコルに対して嘲笑ったり面白半分にふざけ続けるイザークディアッカ

そして、マリューとの2時間で戻る約束を無視して捜索するも、手がかりすら見付けられず焦るキラとそれを止めるムウ。

尚も言うことを聞かないキラの頭を冷やさせたのは『彼にとって』意外なムウの姿でした。

ムウはカガリの実力を見込んで、カガリの出撃を許可し、被弾した後は自力で帰還するよう促しました。

その結果と自身の判断を後悔しているムウの姿に、キラは、『大人も自分たちと同じ不完全な存在』と知り、冷静さを取り戻すのでした。

もう1人の主人公、アスランのほうにも動きがあります。アスランにとってのカガリはシンデレラ?キラ以外では初めて自分の意思で親しくなった人物との出会いとなります。

一方、カガリにとってもアスランは『初めて出会った生身の敵』ということになり、お互いにとって大きな存在となります。

アスランカガリを見ながら無意識にキラと重ねている節もあり(唯一の友人で民間人でパイロットの経緯等が似ていた)、カガリアスランと出会うことでバルトフェルドの言葉を思いだし、その意味を理解することになります。

つまり、現時点ではある意味、キラとバルトフェルドの関係性に近い存在となったアスランカガリでした。

このシーンの描写は本当に美しいと思いました。

この巻の中盤では物語としても大きな変化が訪れます。

カガリとキサカの『正体』、中立国『オーブ』の真実。

『地球軍』とも『ザフト』とも争いたくはないから中立国である。でも、この戦禍の中で『中立』として意見を押し通すには自国を守り抜く為の『力』と『経済力』が必要。だが、『力』を持てばその『力』は狙われることになる。

確かに……この雁字搦めの状況だと秘密裏に開発するしかないかもしれない。綺麗事や正論だけでは主張は通らないし、守りたいものが守れない。それが戦争というもの……。

2巻の解説に書かれてあった作品全体のテーマが浮き彫りになった瞬間とも言えます。

これまではキラ、バルトフェルドアスランカガリのやりとりで『ナチュラル』と『コーディネーター』や『コーディネーター同士での敵対』が主なテーマでしたが、中立国『オーブ』なりの正義も加わることで戦争というものの難しさが分かります。

そう考えると小説で見る『アスハ家の血筋』のストレートさは対峙するキャラクターを通じて読者の心に直接問いかける力を持っているように感じます。

そして、キラとフレイの泥沼の関係にもとうとう終焉の時が……。

フレイがキラに言った言葉

『―辛いのはあんたのほうでしょ!?』

『可哀想なキラ!ひとりぼっちのキラ!戦って辛くて、守れなくて辛くて、すぐ泣いて!―そうじゃない!』

『なのに……なのに、なんで私がっ……あんたに同情されなきゃなんないのよぉっ!』

キラがフレイに言った言葉

『……間違った……。間違ったよね、ぼく……ぼくたち……』

それぞれの想いを考えると切ない。

そして、この巻においては何より重要かもしれない話もとうとうやってきます。

キラに面会を断られたヤマト夫妻は何故かウズミ・ナラ・アスハと会っていた。

この『事実』を考えると、今までキラがカガリに抱いた感情も納得ですよね、コーディネーターの直感って凄いね!って思います。

カガリとキラが出会ってからここまでずっと匂わせてますからねw初見の人はスッキリするのか、モヤモヤするのか分かれそうです。

そして、運命の悪戯がキラとアスランを再開させるシーン。アスランの手からトリィがキラに返される間際、

『―だいじな友だちにもらった……だいじなものなんだ……』

キラのこのセリフは悲痛でした。

フェンスに隔たれて見つめ合うキラとアスランはまるでロミオとジュリエットのようですね……2人とも男ですが。

哀しい話の前に深いと感じたことを1つ。
マルキオ導師の考えとして描かれていることなのですが、『上下という概念が重力下でしか通用しないこと』と、『人々が頑なに守っている価値観』が似ているていう話。

なにが正しくてなにが間違いなのか、なにが重要でなにが不要なのか、誰が敵で誰が味方なのか、これらは時代や状況、立場によって縛られた限られたものにすぎない。P253

アスランはキラとの戦いの中でとうとう仲間を失います。それも自分のせいで……

当初の予定ではこの件に関してはここで止めるつもりでした。しかし、読んでいるとこれは書かずにはいられない……という思いに変わりました。

ニコルを失ったことで最も取り乱していたのが意外にもイザークでした。

何故アイツが!?とアスランに詰め寄り、口論になります。割って入って止めたのはディアッカディアッカも得意の皮肉の1つも言わない辺り、相当ショックだった様子。

そして、アスランは敵のキラばかり気にして同僚のニコルの話をまともに聞かなかったことを後悔し、『自分の最も大切な人を自分の手で討つ』ことでニコルに報いる……と決意します。

一方のキラは自分の意思に反して不可抗力でやったことに落ち込んでいました。そんな中、喜んで自分を出迎えて称賛するクルーに嫌悪感を覚えます。

ムウさんはそういうキラの様子を見て、クルーともいざこざがあり、ヘリオポリスの仲間ともギクシャクしているキラの今後の身を案じていました。

3巻のクライマックスはストライクとイージスの一騎討ち。そのはずでした。

と、その前に、キラとアスランが戦っている最中、ディアッカはムウさんと引き分ける形になりながらも、機体が動かずに投降します。

アスランは自分を許さない。でも自分はアスランを討てない。それなら初めから結末は決まっている……弱気なキラは1度諦めます。

そこに割り込んできたのは……

友を失ったキラは怒り狂い、一転してアスランに憎しみを向けます。

動きが見違えたストライクを見て、キラが本気じゃなかったことを知り、アスランも怒ります。2人の様子はまるで獣のようと表現されています。

ストライクのSIGNAL LOST、そして赤い硝煙。立ち尽くすマリューナタル……というところで3巻は締め括られます。


・まとめ
この巻をざっくりまとめると、既に満身創痍だったキラの精神が更に追い込まれる……という巻です。

そういえばアスランがキラに負けた時の心の声が結構あの時のサイに似てました。

にしてもフレイがなんか可哀想っていうか見てて切なくなりますね……

さて、巻末の解説はまさかの、アスラン・ザラ役の石田彰さんです!驚きましたね!

アスラン役として作品に関わっている石田さんの目から見たガンダムSEEDアスランの心情についての解釈はなかなか興味深いものがありました。

人同士の争いは『エゴイズム』のぶつかり合いと表現したり本当に興味深い内容だったので気になる方は是非に。

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おまけ
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