・タイトル
ガンダムSEED DESTINY
・概要
前作より2年後の世界を舞台に、新たな主人公と機体を駆り、戦場を駆け巡る!!
前作でのオーブでのアークエンジェルと地球連合軍との壮絶な戦い(フリーダムとカラミティのバースト撃ち合い)によって家族を……最愛の妹を失った悲劇の少年、シン・アスカは憤怒の象徴?真っ赤な瞳で守る為の力を欲し、軍へ入り、パイロットとなる……。
少年の瞳は何を見る?
・著者情報
・点数 76点
表現力☆☆☆☆☆
深み☆☆☆☆☆
芸術性☆☆☆☆
ストーリー性☆☆
読みやすさ☆☆☆
・評価
読むガンダムSEED DESTINYとして満点以上、120点でも150点でも200点でもあげたいぐらいの丁寧で分かりやすい(原作アニメでは伝わりづらい)キャラクターの心理描写を見事に描いていて、これを読むと、『SEED DESTINY』も捨てたもんじゃない。と思える可能性はかなりあると思います。
そして、個人的には中学生時代から思い入れのある大切な小説です。
ネタバレになるので詳しくは後述になりますが、実はガンダムSEED DESTINYのテーマはかなり深いです。
単なるドロドロした愛憎劇でも、優柔不断男の自己満作品でもないのです。
そういう部分はアニメでは伝わりづらかったので、小説版のアドバンテージ、強みと言えます。
反面、元々のストーリーを大きく改編は出来ない制約の中、元々賛否両論のあったスペシャルエディション仕様(主人公の当初の目的としては報われない結末)に対して、追加台詞を加えて綺麗にまとめていて、最大限の称賛は送りたいものの、アニメ本編のストーリー性そのものに問題点があるので、そこはどうしようもない部分なのかな。って思います。
面白くないというよりは、主題をズラされたことを納得するかしないかの部分なので、これは仕方ない。
むしろこの不安定で未完成なことこそが『ガンダムSEED DESTINY』と言えるのかもしれません。
作品としては格段に読みやすくはなっていますが、テーマが重すぎて沈みそうになる場面もあるので、総合的には中間点にしました。
ネタバレなしで書ける範囲はここまでなので、
ここまで書いた中でネタバレ覚悟で内容が気になる方や、アニメやゲーム、漫画版で基本的な内容を知っている方のみ、この先へ進んで下さい。
商品リンクの先が作品に対しての個人的な感想+僕なりの小説版ガンダムSEED DESTINYのプレゼンになります。
・感想
前作では、実際に起こったいくつかの戦争を組み合わせ、エンタメ要素も加えつつ、引き裂かれ、戦う道に追い込まれた幼馴染み2人を中心に、非戦がテーマの作品でした。
今作は一転して、本当は戦いたくないけど、大切な人を守る為に仕方なく戦う民間人のキラ・ヤマトとは対称的に、守る為の力を欲し、自ら戦禍に飛び込んだ軍人の少年が主人公の物語となります。
内気で物腰の柔らかい初期のキラとは対称的に生意気で皮肉も憎しみもストレートにぶつけて来るシンは嫌われやすいですが、非常に分かりやすいキャラクターとも言えます。
アニメでは中盤からキラに主役の座を奪われ、コミカライズ版では最初から主役の座をアスランに明け渡す等、史上屈指の不遇主人公ですが、ノベライズ版では名目は保ってました。
結末はスペシャルエディション仕様ですが、アニメ版の突然の展開ではなく、(時間的猶予の差なのか)一応は納得のいく結末として仕上がってました。
ここに関しては、因縁の決着を優先するか、落としどころを優先させるかで意見が別れる平行線なので、深掘りはしません。
面白いのは、敵に対しても内向的なキラ、敵に対しては好戦的なシンという真逆の性質の主人公でありながら、両作品共に戦争の悲惨さを謳っているところにあります。
どちらも最終目的は戦争の終結なのに何故争うことになるのか……そこの人間心理やバックボーンの描き方はさすが後藤リウさんでした。
勝手に安心と信頼の後藤さんって思ってます。
そして、前作から続くのは戦争の悲惨さだけではなく、タイトルの「SEED」に起因する裏テーマも重要だと個人的に感じました。
例えば、オーブという国の理念を守る為に凄絶な最期を遂げたウズミとカガリの別れのシーンも、裏から見れば「理念にこだわった為にシンの家族は犠牲になった」と解釈することも一応は出来ます。
どちらの状況も知っていれば、これが逆恨みに等しいのは分かりますが、そのウズミの娘であるカガリが、今度はオーブを守る為に連合に参加してザフトと敵対する……となった時のシンの心境を思えば何とも言えない複雑な気持ちになります。
大切なものを守る為に理念を捨てること、大切なものを守る為に母国を撃つ覚悟が必要なこと……前作とは違う角度から戦争の悲惨さを伝えてくれました。
ゲームで例えるなら、テイルズオブファンタジアとなりきりダンジョンXの関係性、テイルズオブシンフォニアとラタトスクの騎士の関係性に似てるのかな?
戦争である以上、正解なんてない。
そして、前作以上に立場フラフラで一貫性のないアスランですが……散々なイメージです。
議長には半ば洗脳され、後輩に噛みつかれ、軽蔑され、フェイスという艦長と同等の立場からろくなアドバイスも貰えず、再び戦場で友人を失いキラに噛みつくも論破され、カガリの選択に苦言を呈するも論破される。
たまにいいこと言うし、なんだかんだでシンは懐いてるほうだし、いい関係性築けそうだったのに持ち前の優柔不断さと迷いが邪魔をする残念な結果です。
「戦争はヒーローごっこじゃない!」←お前が言うな
アスランがラクスに与えられる愛用機の名前はなんだい?そう、ジャスティス。
ここからはデスティニー独自の魅力についてです。
前作の遺伝子操作から更に発展した「ゲノム」と「クローン」がテーマとしてあります。
ナチュラルは遺伝子操作で生み出されたコーディネーターを嫌うが、それに対抗し、子供に薬物を投入して実験し、殺し合いをさせて狂戦士を生み出していた……
「遺伝子操作は悪でこれはアリなのかよ⁉️」
作中でシンも同様のことを口にしますが、これは本当に思いますよね。
プライベートで偶然知り合った強化人間の1人であるステラという女の子を妹と重ねて気にかけていたシンだからこそ出る憤りだったと思います。
クローン人間自体は前作でもいました。
ラウ・ル・クルーゼという人物が。
ラウと同じ人物のクローン体がデスティニーにも存在します。
シンにとって同僚であり、かけがえのない友になる人物……そんな彼等の関係性があるからこそ、クローンについて深掘りできたのかもしれません。
全ての主要人物と何かしらの関係性があるのはシンだけなので、シン・アスカは稀有な存在と言えるかもしれません。
そして、ガンダムSEED DESTINYと言えば……というか、中学時代に初めて見たガンダムであるこの作品を見て覚えたというか、存在を認識したのが、作中ではロゴスと呼ばれる「戦争屋」の存在。
戦争屋には武器商人も含まれてますので、思ってる以上の数がいると思います。
そんな戦争屋がお金の為にわざと戦争を起こしているのではないか?
何故なら、世界から戦争や紛争、内戦が終結すれば彼等は廃業なのだから……
という観点から戦争を描いていく後半の展開は必見……と言うと大袈裟ですが、見て損はないと思います。
アニメーションというエンタメだからこういう風に描ける。
でも、だからこそ、これを機にいろいろな人に戦争がどういうものなのか、戦争の悲惨さを知って欲しい。
と、願いを込めて作られた作品とのことなので、このブログでもその旨はお伝えさせていただきます。
・まとめ
前作同様、アニメとは異なる視点から作品を楽しむことが出来、且つ改めて考えるきっかけにもなりました。
意外と大人のほう向いてるテーマなのかも?
あとがきの福田さん、池田さんのコメントは作品ファンには必見な内容でした。裏話も込みで!
鈴村さんのあとがきも裏話と言えば裏話ですが、ちょっと哀しくなったかな……プロ根性が強い方で良かったです。あ、ちなみに僕は鈴村さん大好きです!
アニメ版の監督である福田さんのコメントの中の「知らない誰かからの恨みを買っても文句言えないんじゃないか?」は深すぎて刺さりました。
興味がある場合はコメント全文読んで欲しいので、全部は書かないですが、SEED(発端) DESTINY(運命)と捉えて福田さんの言葉を加味して考えた場合、前述したウズミ&カガリとシンの関係、フリーダム(キラ)とシンの関係に繋がるのだと思います。
その上でのあのラストは感慨深いものがありました。
アニメを知ってても感慨深いので、後藤リウさんが福田監督の意思を汲み取り、再現したと言っても過言ではないと思っています。
本当は全巻に見所ありますが、活字が苦手……でもSEED DESTINYは好き。という方は最終巻の5巻のラストだけでも読んでみてほしいなって思います。
作品の深さをお伝えする為に多少のネタバレを書いてしまいましたが、改めて読んでみたら思いの外、深い作品だったので、興味がある方は是非是非ご覧になってみて下さい。
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