・タイトル
機動戦士ガンダムSEED DESTINY ②さまよう眸
・著者情報
後藤リウ
三重県四日市市出身。愛知県名古屋市在住。
南山大学文学部国語学国文学科を卒業後、文筆の道に進みます。
2003年にノベライズ ガンダムSEEDでデビュー。
主な作品
オリジナル
イリーガル・テクニカ
ちょこプリ!
うしろシリーズ
夢守の姫巫女シリーズ
こっこ屋のお狐さま
ノベライズ
ガンダムSEED
ガンダムSEED DESTINY
ラメント
こばと。
貞子3D2―再誕
人間回収社シリーズ
・点数68点(小説としての評価)
表現力☆☆☆☆☆
深み☆☆☆☆☆
芸術性☆☆
ストーリー性☆☆☆
読みやすさ☆☆
・点数 75点(ラノベとしての評価)
キャラクター☆☆☆☆
ストーリー☆☆☆
世界観☆☆☆
構成☆☆
文章力 ☆☆☆☆☆
・評価
タイトルからして既に誰が主人公なのか、不穏な空気が……アニメなぞってるから仕方ないけどねww
本編で言うと、ちょうどカガリの周りが騒がしくなるタイミングだったり、キラが戦場に戻るきっかけだったり、シンやミネルバはおろか、ザフトの関係ないところの話が多いので、シン・アスカを主軸とした新たな物語としては2巻にして既にブレています。
とはいえ、冒頭で外伝(アニメではやってないところ)のキャラクターの話を挟むことにより、コズミック・イラ(大戦)全体の構図がアニメ本編よりも分かりやすくなっていたり、小説版独自の工夫と構成はなかなか素晴らしいものがあります。
良くも悪くも読み手の感情を逆撫でしがちな本編の展開やキャラクターの雰囲気を上手く再現してる辺りはさすがの文章力でした。
冒頭のみとはいえ、小説として本編の中に外伝の話を入れたことで、メディアミックスの外伝作品や外伝限定の機体の宣伝がさらっと出来てるのが凄いです。
その自然な導入技術に憧れます!
以下、商品リンクを挟んで個人的に感じた感想を書いています。
ネタバレが気になる方はご注意下さい。
・本の概要
世界は再び戦禍に呑み込まれ、少年たちもそれぞれの運命に翻弄されていく――。
オーブ近海での戦闘を制したミネルバは、連合軍に虐げられる人々を解放すべく新たな戦場を転戦する。
一方、ザフトに復隊したアスランは新たな剣を手に戦場への帰還を果たした。
そして揺れ動く情勢に背を向け、いまだ隠棲を続けるキラにも決断の時は近づいていた――
大人気アニメの完全小説化第二弾!
その手に運命を掴み取るために甦れ、フリーダム!!
・感想
隠棲しててもやっぱり主人公的扱いを受けてしまうのがSEEDクオリティ。(良くも悪くも、ね。)
今作も前作同様、冒頭に設定資料、前巻のあらすじが付いてます。
分かりやすくまとめてくれてますが、読み飛ばしても問題はないです。
プロローグではC.E.70に起こった大戦についてざっと説明されてますが、元々知らないとちんぷんかんぷんだろうなってぐらい簡潔にまとめられてます。
そして、有名な話扱いされている、″切り裂きエド″の二つ名を持つエドワード・ハレルソン……知らないw
このキャラクターはガンダムSEED MSVという映像化されてない所謂裏設定的なキャラクターですね、漫画化はされてるっぽい?
とはいえ、同じくMSVで活躍するイザークの部下こと、シホ・ハーネンフースはガンダムSEEDシリーズのゲームに出てきますし(スパロボやSDガンダムにも出てたり)、エドワード・ハレルソンにまつわる逸話の中で言うと、ソードカラミティはうっすらと記憶にあります。
何にせよ、ガンダムSEEDシリーズのコアなファンなら知ってて当然的な話をぶっこまれたのでちょっとビビりました(笑)
そして、オーブで先代達の墓前で自身の力不足を悔やみつつ、父に謝るカガリ。
そこへユウナがやってきます。
自分の聖域を汚された気がして嫌悪感を抱きながら怒るカガリですが、正直、こんな情勢の中で1人で出歩いてそこに来たお前が悪い。と僕は思います。
すぐにお父様やアスランなら……とか比べるところも気に入らない。
可哀想ではあるけど、ユウナの言ってることはそこまで間違ってなくて、カガリが子供すぎる部分があるので……ね?
それに、親同士が決めた婚約者ならそれはそれでお父様の意思なんじゃないか?とも思います。
ユウナはぽっと出感あるけど、許嫁である以上、お父様が選んだ人なんじゃないか?って。
カガリってよくオーブが!とかお父様は!とか言うけど、根本的に自分の立場分かってないんだよなぁ~
ユウナが言ったように、自分はアスランと結婚するからプラントとは戦えない、だから地球軍のほうが敵なんだ!って言う度胸も決意もない。
そのくせに偉そうというかなんというか……その中途半端さが嫌いです。
オーブもアスハの名前も捨ててアスランと駆け落ちするんだ!とか、オーブの為に自分が犠牲になる……父のように!とかなら応援や同情も出来るのですが……
シンに対してもユウナに対しても、最初は威勢良くても言い返せなくなると途端に被害者顔するところ……それは許さない。
代表って国の顔だからね?それ分かってる?って思いますよね……
パトリック・ザラの息子と結ばれたいならそれこそ『戦い』だということはカガリも分かっていたはずだろうに……
キラが再び戦禍の中に戻るきっかけにもなった『プロの集団』の襲撃。
バルトフェルドさんがいなければ詰んでいた……って言いたかったけど、案外マリューさんでもどうにかなってたっていう。
まあ、バルトフェルドさんが足止めしてくれたから助かったのだと思うので結局はバルトフェルドさんがいなければ詰んでたと思いますが!
キラは生身の戦闘訓練受けてないのでこういう時は役立たずなんでね……
そして″敵″はモビルスーツを出してきます。
そんな時、バルトフェルドがラクスを促します。
″鍵″とは何か?
キラ以外が知っていて、キラだけが知らなかった……その事実にキラは全てを察し、周りの皆に感謝しつつ、決意します。
開かれた鍵、皆を守る為に再び手にした剣、フリーダム。
その力は、その動きは【特殊な戦闘訓練を受けたザフト兵】をもってしても捉えることのできない圧倒的強さを見せます。
そして、キラの元へカガリから手紙が届きます。
キラはその手紙の行間からカガリの悲しみを読み取って、こんなのは間違っている……と、これまで何もしなかった自分へ苛立ちを感じます。
何もせずに見ているのは、戦いを起こそうとするものと同じぐらい罪……これはいじめ問題にも言えそうな重いテーマですね、国民(クラス)のみんなが笑って幸せそうなら自分が耐えればそれでいい?
それは違う。そんなのは間違ってる!と置き換えることもできそうです。
一方、カガリは結婚式を控えていました。
そこでユウナから口調をただすように言われて、またも「アスランなら……」と考え出すカガリ。
この期に及んでなんだコイツ?
が素直な感想です。
カガリの状況は確かに気の毒ではあるけど、自分で決めたことなのにいつまで被害者みたいな顔してるんだろう?
何が正しいのかは分からないけど、何もしないのはダメだと思うから……と動き出したキラやアスランと同格の英雄とは思えない……
シンの言うように期待をしてなければ怒りは感じないと思うので、カガリの中途半端な態度がカガリらしくなくてイライラする……ってだけのことだと思いますが。
国の姫として代表として生きるのか、1人の女の子として生きたいのか、どちらにしても相当の覚悟を持って選んだのならどちらでもいいのに。
レジスタンス経験もあるんだし、恋仲のアスランや弟のキラの為に同胞を敵に回してでも中立を貫く!って言えば付いてくるくる人いたと思うんだけど……
そもそもプラントと組まれたらまずいから地球軍は強引なんでしょう?っていう。
まあ、その歴史を繰り返す行為が正しいとも思いませんが、お父様とアスランに会わせる顔がないとウジウジする姿を見せられるぐらいなら、お父様の意思を継いで凛とした姿のカガリが見たかったかな……
って個人的な感情が僕の中にあるからここら辺のカガリにイラついてしょうがないのでしょう。
わりとマジでシンの感情に近いのかもしれない?
さて、こちらもあえて厳しく、棘のある言い方をしましょう。
デュランダル議長から託されたセイバーに乗って今さらノコノコとオーブにやって来たアスラン。
当然、オーブに入れてもらえる訳もありません。
「カガリは何をしている!?」
さすがにこれはカガリ可哀想……
勝手にプラントに行くことを決めて、カガリが大変な時に議長に盛大におもてなしされてまんまと復隊したアスランには何も言う権利ないと思います。
君は君で自分の信じた正義に従えばいいんじゃない?
シンは何故かアスランに突っかかります。
強いのにオーブでのうとうと暮らしていたアスランが気に入らないと思っていたら、ザフトに復隊してミネルバに来ることも気に入らない!?
まあ、フラフラと所属先変えるところが気に入らないのは分かりますがw
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ここまではおよそ4ヶ月前に下書きしていた書評です。改めて見ると、結構ネタバレ有りですね!
せっかくなのでこれはこれで置いておくとして、ここからは今年に入って新たに導入したやり方での感想を書きます。(2019年3月26日更新)
『戦争はヒーローごっこじゃない!!』
独自のジャスティスを駆るアスランにだけは言われたくない(笑)
とはいえ、この巻内でいろいろあってシンは以前よりアスランになつきます。
そこには彼の影響も大きいんですね……そう彼、3人目のフェイスのハイネが爽やかに現れ、みんなの心に残るのがこの2巻です。
あと、アニメで見るより小説で読んだほうがキラの凄さが分かるような気がします。あの人とんでもないことやってたんだな……
今回ですね、めちゃくちゃ期間空いちゃった訳ですが…ちょっといろいろ考えてました。
SEEDの時にも書きましたが、というかSEEDの時以上に戦争について真面目に考えるきっかけをくれる作品だと思いました。
というのも、やはりオーブという国と日本が似ているからです。
日本の平成という時代は戦争とは無縁の平和な時代として終わろうとしています。
が、その一方で間接的に関わっているかもしれない。というのは読み直してて気付きました。
うーん……難しい問題ですね。
思うことはいろいろありますが、政治的な話になるとここでは書けないので、ここまでにします。
本編に関わることで最も胸が痛んだのはシンとステラの件です。
悲劇は結構好きなのですが、この2人の物語においてそれは哀しすぎる……
あと、ネオにもちょっと…ね。時々感傷に浸るネオに対してシンクロする部分があるのも事実ですが、ネオもネオで境遇が……ね?
おまけ