・タイトル
ガンダムSEED DESTINY ③すれ違う視線
・著者情報
こちらを参照に。
gamemachine-alternativeshinku.hatenadiary.jp
・本の概要
ダーダネルスの戦闘において突如、参戦したフリーダム。
その介入によって、ミネルバは思わぬ犠牲を出す結果になった。
キラ達の行動を納得できないアスランは、単身、アークエンジェルとの接触を試みる。
一方、再び巡り合うシンとステラ。
敵同士でありながらも心を通わせ合う二人を戦争という現実が無惨に引き裂いていく……
その想いすら破壊し尽くすのが運命なのか、デストロイ!!
・点数 92点
表現力☆☆☆☆☆
深み☆☆☆☆☆
芸術性☆☆☆☆☆
ストーリー性☆☆☆☆
読みやすさ☆☆☆☆
・感想
冒頭の過去話がフラグ過ぎて切ない……
ハイネを含めて多くの仲間を失ったミネルバ。
クルーはやりきれない想いと怒りを覚えます。
それはアークエンジェルをよく知るアスランも……
そんな中、アスランは(艦長の許可は得て)1度隊を離れ、単独でアークエンジェルを探すことにします。
探索途中でかつての盟友ミリアリア・ハウに出会い、アークエンジェルに取り次いでもらいます。
キラとアスランの立場は大きく変わっていて相容れることはなく……
感情に押し流されるばかりで、現実がまったく見えていないって言葉はアスランにだけは言われたくないですけどね、僕なら……(笑)
キラの「撃ちたくない、撃たせないで……」は結構心に刺さりました。
アスラン側のハイネがニコルと重なったり、ハイネのこと仲間として好きだったんだろうなーってことを考慮すると、キラに対する抑えきれない怒りは理解出来ます。
ただ、それを、トールを殺した君がキラやミリアリアの前でそれを言うのか?ってのが僕の素直な心情です。
理想は出来ても納得出来ないこともある……まさにそれだわ、ブーメランやぞ、アスラン。
タリアからの密命でアスランを監視していたルナマリアの複雑な乙女心?や偽ラクスやキラがフリーダムのパイロットであること等、何気に極秘情報を知ったルナマリアの動向も気になるところ?
一方、調査任務担当のシンとレイ。
謎の施設を探索中、突如レイに異変が……
探索は一時中断され、シンとレイは軍医に診られることに。
疑われた生物災害だったが、特に異常はなく、施設内にウイルスや細菌等の生物兵器は見受けられず、調査を再開。
そこでミネルバクルーが見た信じがたい光景とは……
一方、ネオの元にロドニアの研究所がザフトに見付かったことが報告され、それをステラが聞いていました。
意味を理解していなかったステラはスティングやアウルにラボのことを聞きますが、それがきっかけでアウルのブロックワード、ステラのブロックワードがダブルで発動。
しかし、ステラは『誰か』の言葉が過り、「守るとは死なない」ということ、自分が「守る」と決意します。
生まれて初めて自分の意思で動き出したステラ。
単独で強行出撃し、迎撃に向かったのはインパルスとセイバー。
激闘の末、ガイアのパイロットがステラだと知るシン。
自分が守ると誓った愛しい相手がこれまで何度も対峙し、憎しみを持って戦っていた相手だった。
しかも彼女は強化人間で記憶を操作されていた……
そしてステラを「損失」と捉える軍に対してまたスティング、アウルに対していろいろ思うところがあるネオ。
初めから出会わないほうが……記憶にないほうがどれだけ楽だったか。
という意味ではシンとネオは共通していて、立場の違いと合わさって対比なのかなぁ~と感じました。
プラントの、デュランダル議長の真意を確かめる為に動き出したラクス。
それに伴い、デュランダルの秘めた想いと願いが浮き彫りになります。
そうかー、『彼』とは友達だったか……ピースは繋がりましたね!
ルナマリアから極秘任務の報告を受けるシーンは小説版のほうが丁寧というか、タリアの心中やルナマリアの戸惑いが分かりやすいと思いました。
ユウナの虚言というか強がりというかカガリを『偽者』とした上での発言は、その行為自体は正しくないにしても、ある意味ではキラ・ヤマトがデュランダル議長とプラントを信用できない理由と通ずる部分があるので、「わざわざ紛い物を用意して、その影響力を私物化して兵を巧みに操ろうとする」部分と、「本物が現れると不味いから本物を偽者として排除しようとする」というこの巻で明らかになったデュランダルの闇の一面を政治的にではなく、感情でやっちゃう駄目な人だと分かります。
まあ……それでもユウナはユウナなりに頑張ってるので、嫌いにはなれませんが。
ミリアリアさんの頼りになる感半端ないw
ミリー……あんなに可愛くて女の子らしかったのに強くなって……
ミリアリアがまさかのアスランと対比の役割を担う重要な役どころにステップアップ。
流されず、自分の意思で覚悟を持って自らの立場を擲って仲間にになることを選んだキラの昔馴染みの友人。
あ……そろそろあんまり好きではないシーンがやって来る……アウル(>_<)
ネオの指示でステラの記憶を消されてるのにステラのいた感覚がアウルには残っていた。でもいるはずのない、存在しないことになっているから記憶にはない。
その違和感に苛つくアウルを見てられない……
アウルは毒舌で飄々としてるけど誰よりも仲間想いだったのかもしれませんね……
好きではない……それでいて大好きなシーン。
アウルとシンは出会い方が違えば仲良くなれましたかね?
いや、無理か(笑) 結局ステラ関連で良好ではない関係になりそうw
そして、カガリとフリーダムへの怒り、憎しみ、憎悪の感情で更なる進化を遂げたシン。
覚醒状態のキラが驚くのって珍しい。
あー……結構いい流れだったのにほんと水指すよね、アスラン。
この人は前大戦で何を学んだんだろう?
いや、別に考えがあってザフトに戻るのはいい、それが自分の正義なら対立も仕方ない。
でもアスランは議長の言いなりだから気に入らない。そのくせ価値観押し付けてくるし。ほんと嫌い。
キラ、タリア、シンのそれぞれの葛藤を表すような描写は素晴らしいの一言に尽きます。
アウルのところもですが、キャラクターの心理描写を丁寧に描いているのがよく分かります。
アスランのことボロクソに言いましたが、ザフトのミネルバの隊長としてのアスランは嫌いではないです。
シンを咎めるではなく、諭そうとするアスランの言葉はキラがアスランに言った言葉に近いんですけどね……そこに気付けたら良かったのに。
あー……そうか、大人になった今ならシンの措置に対するタリアやアスランの危惧も分かる。
お咎めなしは確かに本人の為によくないですね、実際ちょっと勘違いしてるし……
主人公にあるまじき……あ、だから主役降ろされたのか、なるほど。
キラを励ますマリューさんの母性もたまらないですが、最愛の人を目の前で失ってなお他人を気遣う優しさと強さヤバいですね、ハグしたいです。
そして、一方で約束は無下にされ……運命の瞬間は刻一刻と近付きます。
あー、そういうことか……タリアの心境から読み解くと、プラントも議長もほんと黒い。真っ黒だ。
そして、皮肉にもシンとステラは似た境遇になったわけですね……
そして、ネオの優しさは裏目に出る。
と同時にシンに対する重い罰と反省するきっかけを与える。
上手く出来てるなぁ~
この演出はアニメの手柄だけど、心理描写が見事なので深みが増してました。
読み終わった後に改めて表紙を見ると切ない……
全体を通して言えば、前作ガンダムSEEDとの対比、Zガンダムとの既視感が感じ取れます。
この1冊だけでどうこうという訳ではないのですが、総評としては本当に切なくて哀しいエピソードでした。
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