・タイトル
ガンダム SEED② 砂漠の虎
・点数88点(小説としての評価)
表現力☆☆☆☆☆
深み☆☆☆☆☆
芸術性☆☆☆☆☆
ストーリー性☆☆☆☆
読みやすさ☆☆☆
後藤リウ
三重県四日市市出身。愛知県名古屋市在住。
南山大学文学部国語学国文学科を卒業後、文筆の道に進みます。
2003年にノベライズ ガンダムSEEDでデビュー。
主な作品
オリジナル
イリーガル・テクニカ
ちょこプリ!
うしろシリーズ
夢守の姫巫女シリーズ
こっこ屋のお狐さま
ノベライズ
ガンダムSEED
ガンダムSEED DESTINY
ラメント
こばと。
貞子3D2―再誕
人間回収社シリーズ
・本の概要
クルーゼ隊の執拗な攻撃を振り切ったアークエンジェルだったが、入射角がズレた為、目的地のアラスカから大きく外れたアフリカ北部へと降下することになる。
しかし、そこはザフトの勢力圏内。
何とか自力でアラスカを目指すアークエンジェルの前に立ち塞がるのは、ラウ・ル・クルーゼと並び称されるザフトの名将″砂漠の虎″ことアンドリュー・バルトフェルドだった。
熱砂の戦場を駆け抜けろ、ガンダム!
・感想
ストーリーよりも芸術性と深みが強い印象の作品です。
読みやすさに関しては途中考えさせられたり、人によっては読むのが嫌になるかもしれないかも?と思ったので他より少し低めにしました。
前巻同様(前の記事で書き忘れてました。ごめんなさい。)、本編の前に軽い設定資料集的なものがあります。
機体の大まかな設定と装備、(前巻の未知登場者含めての)登場人物の名前と大まかな設定、それとこの作品における世界地図(キラが落ちた場所)がMAPとして書かれています。
これ、分かりやすくてGOODポイントです。
また、前巻のあらすじも2ページ(見開き1ページ)分にまとめてあります。
復習がてら読んでもいいし、そこは飛ばしてもいいし、 そこはお好みで。
ちなみに僕は読みました。
本編としても、キラ達による『現在』のエピソードではなく、コーディネーターという種族の誕生秘話が冒頭に描かれています。
前巻よりも『設定』に対して細かく説明されているように感じました。
以下、本編の内容に触れた感想になるので、ネタバレ回避の為に商品リンクを挟みます。
・感想
前巻におけるサイとカズイのように、この巻でも、ミリアリアの優しさがトールをハッとさせ、『男として…』と考えていたトールにはなかった発想でキラがコーディネーターでよかった。と言ったり、相変わらず(トールの)心理の変化を絶妙な表現で描いていてこの技術が羨ましく…同時にノベライズの担当がこの先生でよかったと思いました(まさにトールはこれに近い感情の中にいたんだろうな)。
前巻からの繰り返しにはなりますが、この作品を読んでいると、どうしても現実で『実際に起こった事』が頭をよぎります。
確かに報復は受けた。しかし、もとはといえば、自分たちがしたことに対する報いなのだ。
と思い知らされつつ、こういう状況にならなければ中立国で何も知らずにただのうのうと暮らしているだけだった。
という少年達の状況に少しだけ自分を重ねてしまったり。
更に、トールはこうも考えています。
(当時の)地球連合はなんで撃ったんだろう?報復されるとは考えなかったんだろうか?
深い。
前巻で大きく変わったそれぞれの運命。
その中でもフレイは異質でした。
彼女の『復讐』への執念は凄かった。
理不尽に対する理不尽。
それでも退けない、後戻り出来ない『彼女』はもはや壊れていた。
この『壊れ方』の表現も素晴らしく、脱帽の限りでした。
小説版を読んで心が痛くなるこの感情はフレイに対する好意なのかそれとも同情か……そんなことさえ考えさせられました。
後は地味に怯えるその目は一瞬ののち、捕食者のギラリと光る目に変わったという表現は綺麗にこの作品におけるバーサーカーを暗示させるいい表現だと思いました。
この巻での最初の戦闘は砂漠にて複数の『バクゥ』との戦闘でした。
最初は地球の重力と砂漠の砂で思うように戦えない、まともに立ち上がることすらままならない。
そんな状況でしたが、キラの代名詞でもある超高速タイピングによるOSの書き換えでMSを砂漠に適応させます。
5機のバクゥ相手にも引けを取らず、2機を撃墜させたキラでしたが、エネルギー残量がレッドゾーンになり、絶体絶命のピンチを迎えます。
そんなキラの前に現れたのは謎の集団でした。
『死にたくなければ指示に従え』
そう言ってきた『彼女』の正体は…?
突如現れた彼らはレジスタンス『明けの砂漠』でした。
明けの砂漠のリーダーであるサイーブに連れられ、マリュー、ナタル、ムウの3人は、現在地の『アフリカ』から目的地の『アラスカ』へ向けてのルートを会談します。
その裏で、少年少女達の修羅場が発生していました。
フレイを巡ってのキラとサイが……
キラの名言?もここで生まれます。
『やめてよね―本気で喧嘩したらサイが僕に敵うはずないだろ』
キラの気持ちも分からないでもない。
サイの気持ちも分からないでもない。
どちらも悪い訳ではない……と思う。
ただ、16歳という若さは未熟なのだ。
これが学園モノであれば、青春を謳歌する上でこういうことはよくあるさ、後々笑い話になるよ!
という案件でもこの作品の場合は『重さ』が違います。
(本人の自覚症状はなしに)心の奥底でコーディネーターへの偏見を抱えつつも、サイはサイなりにキラを友達として、仲間として考えてくれていた。
その2人の関係に歪みが入ったのは素直に哀しく感じました。
未熟と言えばレジスタンスも大多数が未熟そのものでした。
慢心は身を滅ぼす…まさにその通りです。
カガリは自分の立場が分からないのでしょうか?
若さ故の未熟では済まされないカガリの行動は見ててイライラしました。
それこそ、『人の気も知らないで』ですよね。
カガリは嫌いではないですが、この場面のカガリは本当に嫌いです。
戦闘が終わった後、八つ当たりのようにキラに冷たく言葉をかけられ、尚も喚くカガリに向けて放ったキラの一言
『―気持ちだけで、いったい何が守れるっていうんだ!』
これもなかなかに印象的なセリフです。
キラの気持ちは凄く分かる。
でも、彼らレジスタンスがいなければキラとストライクは墜ちていたと思うので何とも言えないところです。
それでもやっぱり戦闘のプロを相手に慢心していたレジスタンスは好きになれない……
砂漠の虎の本拠地に潜り込んだキラはカガリとの会話や目の当たりにした光景や風景を見て考え込んでいた。
理解できないと……
これについては戦う理由の違いですよね、一番大事なものは何なのか、それが違う以上、現時点では相容れぬ存在ということなんだと思います。
昼食を食べようとしていたキラとカガリの前に現れた謎の男はその場に似合わない派手なアロハシャツにサングラスをした(帽子も被った)胡散臭い男だった。
『彼』はカガリと一悶着あった後、何食わぬ顔でキラとカガリと同じ席に着いて会話に混じっていた。
この胡散臭い男こそ、ザフトの『砂漠の虎』アンドリュー・バルトフェルドだった。
バルトフェルドはそのヘラヘラした態度とは裏腹に鋭い洞察力で『そこで起きた事件』でキラをストライクのパイロットだと見抜いてみせた。
また、彼は作中で初めてキラのことを狂戦士(バーサーカー)と呼び、同時にキラ本人も気付いていなかったキラの深層心理を見抜き、元々親友のアスラン以外では初めて『裏切り者のコーディネーター』と知りながらキラに優しい目を向け、優しく語りかけてくれた人物でもある。
バルトフェルドの印象的なセリフは、
『戦争には制限時間がも得点もない―スポーツやゲームみたいにね。そうだろう?』
『なら、どうやって勝ち負けを決める?どこで終わりにすればいい?』
『―やっぱり、どちらかが滅びなくてはならんのかねえ……?』
こう言いながらも、『今日は命の恩人でここは戦場ではない』からと、キラ達をあっさり返してしまいます。
普段はチャラチャラしていても真面目な時はとことん真面目。
時折見受けられるキラへの気遣い。
砂漠の虎と呼ばれる経緯も含めて何となく、コーディネーター版のムウさんかな?という印象を受けました。
こういう心理描写はアニメより小説版のほうが上かなー?
『例の案件』以降、負の感情に支配されるサイの心理描写もお見事です。
一方、久しぶりにクライン邸を訪れたアスラン。
ラクスとの馴れ初めを思い出しつつ、会話の中心は『キラの話題』
不意にラクスはキラのことが好きだと言い出す。
アスランは焦るも、自分達は婚約者では
あるものの、それは親の決めたことで『恋』かどうかは分からない。
自分はラクスを好意的に見ているが…と少し寂しくなり、それが影響してか、別れ際にぎこちなく(初めてだったらしい)頬にキスをした。
こう見る(書く)と甘酸っぱくも感じます。
でもこういう見方もできます。
ぎこちなかったアスランに対して終始落ち着いてマイペースだったラクス。
彼女は既に魔性の女の素質十分なのか?
それにしてもキラって婚約者の関係をブレイクするの上手いのかな?(笑)
そして、この巻には大事なエピソードが隠されています。
アスランの仲間で『ブリッツ』に搭乗しているパイロット、ニコルが実家に帰省しているシーン。
ページにして約5ページの文字量ですが、この後の展開を考えると胸が締め付けられそうになります。
サイとキラとフレイ。
3人を取り巻く関係も見事に表現されていました。
フレイの本心を知ったキラは……
キラへの対抗心を爆発させたが故に仲間の命を危険に晒して独房に入れられたサイは……
そしてフレイの心は……
ここら辺は読んでいて楽しいものではありませんが、考えさせられるものはありました。
心理描写と言えば、バルトフェルドの副官であるダコスタくん。
彼が振り回されながらも上官のバルトフェルドの事を慕っている描写が何気に感動しました。
宇宙(そら)のエリートであるクルーゼ隊のイザーク、ディアッカが来たことでそこが浮き彫りになった感じに僕は捉えました。
これは余談ですが、当時アニメを見ていたときはディアッカとダコスタくんの声が同じだったのでそこが少し気になってあまり集中出来なかったんですよねw
ちなみにダコスタくんのほうが好きです。断然。
さて、この巻では舞台が砂漠ということや、バルトフェルドがとにかく目立つせいでやや埋もれていたムウさんですが、一応出番はあります。
『―けど、敵のことなんか知らないほうがいいんだ。早く忘れちまえ』
『これから命のやりとりをしようって相手のことなんか、知ったってやりにくいだけだろ』
ここはキラの上官として、先輩パイロットとして格好良かった部分、
『バーサーカー?そりゃ、なんかの神話に出てくる狂戦士のことだろ?』
『ああ、普段はおとなしくても戦いになると興奮して、人が変わったように猛々しくなる、恐ろしい戦士のことだ』
キラの『バーサーカーって何ですか?』という質問に真面目に答えてしまったムウは知らなかったとはいえ、キラにショックを与えることになります。
そしてキラにとって辛い結末がついに訪れてしまいます。
『戦うしかなかろう!互いに敵である限り、どちらかが滅びるまでな!』
バルトフェルドの判断、行動、そして結末をどう思うかは人それぞれだと思います。
ただ、『最後のシーン』の表現はすごく綺麗でした。
・まとめ
個人的な主観ではありますが、この巻のテーマは『相反』、『対立』、『戦う理由』、『哀』だと感じました。
小さいところで言うと、キラ(コーディネーター)とサイ(ナチュラル)
そして、シーゲル・クライン(穏健派)とパトリック・ザラ(過激派)
クルーゼ隊と砂漠の虎
また、当人達の関係が良好でも、『守りたい人』の為に戦うキラと『守りたい場所』の為に戦うカガリはその点では相反する存在でした。
そして、キラとバルトフェルドも……
敵同士の、『隊長』と『エースパイロット』でありながらお互いを好意的に思い、戦った2人も結局は戦う理由の違いだったと思います。
キラに対するバルトフェルドの問いかけは自分にも当てはまるのでしょう。
解説の部分ですが、某放送局のプロデューサーさんで、ガンダムSEEDのテーマについて解説してくれていますが、これはあくまで『アニメ版』の監督、脚本、プロデューサー側の意見なので小説版としての書評には含まないことにしました。
書評に含まないだけできちんと作品全体のテーマについて解説してくれていますので読んで損はないです。
それにしても、イザークとディアッカは偉そうにしてたわりに男にも役に立たなかったし、逆に足引っ張ってたし、アークエンジェルに『逆転』のきっかけ与えたのはバスター(ディアッカ)のせいとも言えなくもないから(この巻としては)何とも複雑な結末ですよね……
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