・タイトル
ガンダムSEED④ 舞い降りる剣
・点数92点(小説としての評価)
表現力☆☆☆☆☆
深み☆☆☆☆☆
芸術性☆☆☆☆☆
ストーリー性☆☆☆☆
読みやすさ☆☆☆☆
後藤リウ
三重県四日市市出身。愛知県名古屋市在住。
南山大学文学部国語学国文学科を卒業後、文筆の道に進みます。
2003年にノベライズ ガンダムSEEDでデビュー。
主な作品
オリジナル
イリーガル・テクニカ
ちょこプリ!
うしろシリーズ
夢守の姫巫女シリーズ
こっこ屋のお狐さま
ノベライズ
ガンダムSEED
ガンダムSEED DESTINY
ラメント
こばと。
貞子3D2―再誕
人間回収社シリーズ
・本の概要
ストライクガンダム爆散!
キラという犠牲を払い、アラスカへたどり着いたアークエンジェル。だが、そこでマリューたちを待っていたのは、さらに過酷な道であった!!
一方、プラントでは地球侵攻作戦″オペレーション・ スピットブレイク″が発動し、戦火はさらに拡大する。
流れる血が憎悪を煽り、それはオーブをも呑み込むのか……
新たな剣を手にいまこそ蘇れ、ガンダム!
・感想
この巻からメインキャラクターとサブキャラクターで冒頭のキャラクター紹介に大きな違いが出ました。
主人公たちとして、あらすじも兼ねてそうな初登場時からの流れを汲んで紹介されているのが、キラ、アスラン、ラクス、カガリです。
他は所属ごとに階級や持ち場、基本性格もしくは基本設定が少し書かれています。
前巻までのあらすじはさすがに無理があったのか、2巻の内容はほぼカット状態でした。
バルトフェルドさんの名前が出されないのは少し哀しいですが、キラ、アスランそれぞれの視点から振り返っている形のあらすじになっていて、ここにきてようやくW主人公っぽくなってきた感じですね!
ちなみに第4巻からページが100ページ程増えて分厚くなっています。
この巻では主人公の2人、キラとアスランはそれぞれ行方不明という状態から物語は始まります。
タイトル「舞い降りる剣」というのが凄くいい。というかそれしかない!
流石の翻訳力でした。
以下、本編の内容に触れながらの感想なのでご注意下さい。
商品リンクを挟むので、ネタバレ回避したい方はここまででお願いします。
・感想
何かを探すようにスカイグラスパーのシミュレーターに近付いて、「トール?」と言うミリアリアを見るのも心苦しくなるし、『あの二人がそう簡単にやられるか!伊達に″赤を着てる″わけじゃないんだぞ!』と喚くイザークを見るのが辛かった……
アスランは意外と早く見つかります。
見付けるのはイザークではなくカガリ。
カガリは最初こそ怒りでアスランに詰め寄りますが、彼の話を聞き、彼の様子を見て、キラの死の責任を誰かに押し付けるのは止めようと心の中で思います。
このシーンはガンダムSEED全体で見ても象徴的なシーンだと思います。
余談ですが、ここの挿絵のカガリを見てカガリに母性を感じました。
キラが女性としては見てないけど一緒にいたら何故か落ち着くって言ったのも頷けます。
いや、キラは別の理由があるんでしょうがw
キラの帰りが遅いと思ってキラを探していたフレイはカズイから話を聞いて混乱します。
その様子が切なくて心苦しくて辛かったです。
あの……僕の書評ブログ(ガンダムSEEDシリーズ)を最初から読んでくれてる方は薄々分かってると思いますが、この小説を読み始めて、かなりフレイに感情移入しています。
それはそうと、サイって本当にいい奴なんだなーって思いました。
いろいろあったのにトールだけじゃなくてキラのことも思って哀しんでくれるし、もしかしたらディアッカと対峙したことでキラの優しさを改めて認識したのかも?
一方で、アスランを迎えに来たイザークがツンデレでなんか可愛かったです。
1人にならなくてよかったね…イザーク!
ミリアリアは怒りでディアッカにメスで斬りかかりますが避けられます。
追い討ちをかけようとするも、サイに止められて喚くことしか出来ません。
そんな折、フレイが銃口をディアッカに向けて憎しみの目を向けています。
フレイの放った言葉、
『コーディネーターなんて……っ』
『―みんな死んじゃえばいいのよぉッ!』
この言葉にミリアリアはハッとして、ディアッカを庇う動きをします。
フレイの言葉を聞いてミリアリアは思ったのです。
キラだってコーディネーターだ。
そして、彼を失って自分は悲しい。
死者を悼むことと、敵を憎むことは別なのだ。
深い……
100ページ前後のマリュー、ナタルのやりとりやアスラン、イザークのやりとりはそれぞれ性格が正反対で序盤から衝突し合ってた2組ですが、ここの会話はそれぞれ読書としては微笑ましい光景というか、心温まる光景でした。
最近、息の詰まる展開や殺伐とした雰囲気でしたからホッと一息タイムみたいなそんな気分で見守る気持ちで読めるいいシーンです。
ライバルっていいなー。って感じます!思います!
その反面、カズイには苛立ちしか感じませんでした。
多分、フレイに感情移入しちゃってるところ以外はサイの考えに近いんじゃないかなー、僕。
そして、ディアッカとミリアリア。
当時アニメ見てるときも不思議な組み合わせでしたが、今見ても不思議だ(笑)
180ページ前後になりますかね、窮地のアークエンジェルを救った『天使』は『救世主』か、それとも『悪魔』か。
圧倒的能力で一瞬にして敵の視界、武器、移動手段を同時に奪います。
『彼』は果たして本物なのか?
『彼』とはキラ・ヤマトです。
キラはザフトの制服を着て、核を搭載した新たな機体で現れました。
『データを取りたいとおっしゃるのなら、お断りしてぼくはここを離れます……』
『―奪おうとされるのなら……敵対してでも守ります』
『あれを託された、ぼくの責任です……』
再登場したキラは決意のこもった瞳になっています。
ザフト軍でも地球軍でもない『彼』の決意はそれまでのキラ・ヤマトとはまるで別人のように感じられてもおかしくない程に堂々としています。
とはいえ、マリューの言葉を信じてアークエンジェルに同行してくれるのは根本的な性格は変わってないのかなー?とは思います。
地球連邦軍の上層部が仕掛けた『悪魔の作戦』を聞いたキラは、『プラントも同じだ』と言い、シグナルロスト後の出来事を語りだします。
ここを読んでの感想は、ただただラクスが怖い。
キラからしたら別人のように感じたんだろうなー。
前巻でアスランがそうだったように。
また、アスラン視点でも大きく話が動きます。
父親であるパトリック・ザラからクライン親子は裏切れ者だから親子共々、フリーダムに関わった者を全て片付けろ。
これがアスランへの命令でした。
アスランは″元″婚約者なのでラクスの残した暗号のようなメッセージを解き、ラクスと対面します。
平和を愛するラクスがプラントを裏切るような、敵に機密兵器を渡すような真似する訳がない!と信じて。
実際にラクスと対面したアスランは、彼女の言葉に耳を疑い、錯乱するばかりです。
彼女の放つ『キラは生きています』がアスランの胸を旋律のように駆け抜け、襲います。
キラが生きていて嬉しい。その言葉にすがりたい。
でも同時に、キラが生きているなら自分はまた、『キラを討たねばならない』そんなのは嫌だ、耐えられない。
アスランの中をそんな感情が襲います。
続編のDESTINYも含めて、SEEDの序盤からシリーズの終盤まで迷いに迷って(自分のヒロインすらも流れ任せ?)優柔不断なのか、ある意味ブレてないのかよくわからないアスランでしたが、一番迷ったのがここかもしれません。
父に疑いを持っても、自分は軍人だから従うしかない。
でもキラとは二度と戦いたくない。
そして、父は自分を一切信じずにラクスの居場所を突き止める為だけに利用されたと知ったアスランはラクスに銃口を向けていたのに、ラクスを庇う行動を取ります。
彼女が例え裏切り者だとしても『罪は正当に裁かれるべきだ』
こんなやり方は間違っている。
アスランの正義はきっとこうなんだと思います。
個人的に興味深かったのは、アスランがジャスティスに乗り込むシーンで、すでに正義を失いかけている自分が用いるには、その名はあまりに皮肉と言える。それともあの公平で無慈悲な女性――裁きの女神(ジャスティス)の意思がここにも働いているのだろうか?
と、考えるアスラン。
自分の都合のいい一面だけを見て、それで相手を知ったつもりになっていただけなのではないか?
――キラは本当は……何を思っていたのか。
ここは前巻の解説で石田彰さんが言っていた通り、アスランにとっては非常に大事なシーンです。
キラとカガリの久しぶりの対面。
アスランの話になった後、改めて『何故、親友同士が戦わなくちゃならないか』を問うた。
『――ぼく、コーディネーターだし』
キラのこのセリフはキラ・ヤマトの変化を表す言葉として強く印象に残るセリフになっていると思います。
ところ変わってミリアリアとディアッカ。
この2人の奇妙な関係はここに来て少し進展します。
ほっこりしました。
イザークもまた迷っていた。
″ストライク″ のように、自分と互角に戦えるヤツこそ、敵と見なすにふさわしい。
戦闘能力を完全に失った敵など、自分は相手にしたくなんかない。
イザークの発想はもはや『戦士』の発想に近くなっていると感じました。
新人類としての優越性……それにふさわしいとイザークが思い描いたのは『アラスカで敵味方かかわりなく、その命を救おうと呼びかけた、あの見知らぬモビルスーツのパイロット』でした。
どっちもキラですね。
もしかして作中で一番キラのこと好きなのイザークなんじゃ……?
ここの場面はイザークの成長も見てとれる貴重なシーンでした。
ラミアス艦長から、船を降りるも降りないも自由で自分自身で決めるよう伝えられたクルー達。
キラの元々の仲間で言うとここで降りるのはカズイだけということになりました。
最後まで優柔不断だったカズイは相変わらずだったものの、サイはかなり成長していました。
みんな違う。自分は自分に出来ることをやる。今度は自分の意思で。
そんなサイは間違いなく格好いいです。
ミリアリアはディアッカにこれから戦いになるから釈放だとディアッカに伝えます。
戸惑うディアッカに素っ気なく簡潔に事情だけを説明しますが、不意に『こんなことになっちゃって……ごめんねっ!』と言います。
ミリィもほんと成長したなぁ~
アスランはキラと戦ったあの場所でマルキオ導師に出会います。
そこでオーブと地球軍が戦うことを知り、また、小さい子供に(ザフトということで)憎しみを向けられたことにショックを受けます。
そこでのマルキオ導師の言葉は刺さります。
『――広げるはたやすく、消すは難しいものです……戦火は……』
ついにオーブが戦場へ……
オルガ・サブナック、クロト・ブエル、シャニ・アンドラスの3人のパイロットが乗る地球軍の新型モビルスーツ、カラミティ、レイダー、フォビドゥンに翻弄されるフリーダムとアークエンジェル。
3機の動きはまるで……『コーディネーター』が操る機体のようだった。
キラの助っ人として現れたのは先日、まさにこの場所で憎しみ合って殺し合ったアスランだった。
2人の連携で盛り返すも状況はやはり不利、そんな中、突然、3機の動きが鈍くなり、ノロノロと帰還していきます。
まさかの戦線離脱に驚くキラとアスラン。
敵の本隊自体が撤退した為、お前と話がしたい。というアスラン。
こうして再び巡り会った2人。
長い時を越え、喪失と悲しみを経て、憎しみを乗り越え……同じ大地の上で向き合っている。
お互い目を潤わせながら……
まるで他人同士のようにぎこちなくお互いの名前を呼ぶ。
そんな中、カガリが叫びながら、人目は憚らず2人に抱き付く。
2人はもみくちゃにされながら目を白黒させるが、カガリの涙をいっぱいためて、泣きたいのか笑いたいのかわからない表情で自分たちを見上げてるのを見て、思わず目と目を合わせて笑うのでした。
カガリのおかげで呪縛が解けたキラとアスラン。
『それは破壊の、喪失の中から生まれた、ささやかなる萌芽だった。』
この表現めちゃくちゃ綺麗です。
キラとアスランの会話の間で書かれたこの文章はとても深いです。
『敵』の顔を知っていたから、討つのにためらいを感じ、わかってもらえなくて歯痒い思いをし――『敵』として憎むにいたって殺したあとも、その死を痛みとして受け止めた。だから彼らにはわかる。戦いの虚しさ、『敵』という概念の愚かしさ――『戦争』というシステムの非人間性が。
ディアッカはまたもミリアリアを慰めようと追いかけますが、躊躇って少し離れたところから見守ることにします。
ここの場面でディアッカの変化を感じられます。
ディアッカも成長したなぁ~
そして、ここでは直線的には関係しませんが、続編のSEED DESTINYの主人公、シン・アスカが怒る原因にもなる、地球軍の非人道的悪魔の実験がオルガ視点を介して説明されるのも特徴的です。
なんでオルガなんだろう?
一応、考え方としては一貫してるからかな?
そして、もう1つ。
SEED版の強化人間独特のルールも説明され、 先の戦線離脱の説明も兼ねられます。
そして、戦闘は再開されます。
出撃しようとするキラを止めようとするアスラン。
勝ち目はないだろ? と。
勝ち目がないからって相手の言いなりにはなれないでしょ? とキラ。
迷うアスランに声をかけたのはディアッカでした。
「やっぱマズいんだろうなァ。俺たちザフトが介入しちゃよ?」
『俺はあいつ……あいつらを、死なせたくない……!』
アスランはとうとう本心が漏れてしまいます。
『珍しく……ってか、はじめて意見合うじゃんか』
『急げよ。ぼやぼやしてっと、みんなやられちゃうぜ?』
『キサカが一晩でやってくれました』
昨夜、キサカが最低限の情報を集めてくれました。
火力重視のカラミティ。
″バスター″の後継機でハイパー火力の武装を複数積んだモンスターマシン。
可変機のレイダー。
″イージス″の後継機。
ヒット&アウェイ戦法を可能としている。
ビームなら敵なしフォビドゥン。
″ブリッツ″の亜種版。
エネルギー偏向装甲を所持し、ビームを曲げるシールドと、自在に曲がる射線を持つ。
鎌を持っているのも特徴。
また、3機共通でトランスフェイズという装甲システムがあり、実弾は無効化される。
戦闘の最中、ラウの寝室で寝起きするフレイが不満なイザークはラウに進言する。
『捕虜であるなら、そのように扱うべきだと……!』
ラウは答えます。
『銃を撃ち合うばかりが戦争ではないのだよ』
そして、ラウはフレイのことを『鍵』だと言います。
ラウの言う鍵とは?
またもアスランが助太刀に来たことに驚くキラ。
今度は難なく3機を退けます。
キラとアスランの友情もいいですが、ディアッカもなかなか。
ザフトのディアッカは嫌いですが、アークエンジェルのディアッカは好きです。
・まとめ
ガンダムSEEDという物語の折り返し地点、クライマックスに向けて進む大事なエピソードが詰まっているのが第4巻です。
フリーダムを託されたキラ、フリーダムとそれに関わったものの後始末を託されたアスラン、投降したディアッカの心境の変化、オーブの崩壊、要所のカガリという存在。
解説はアニメ版ガンダムSEEDでラクス・クラインを演じた田中理恵さん。
ラクス視点で分かりやすく解説してくれていますが、田中さん自体もラクスの真意まではわからなかったようで、そういうアニメのほうの裏話もちょこっと入ってます。
石田さん同様、自分の演じてるキャラクターの次巻でのセリフとその場面を言及してます。
それぞれの『想い』や『思惑』が交差して物語を彩っています。
個人的にはガンダムSEEDの2部だと思っています。
意外と4巻から読んでも大丈夫かもしれない。
シリーズ通さなくてもこの巻は単品でもおすすめです。
あ、途中で続編のDESTINYとシンの名前を入れたのは『あのシーン』が隠れているからです。
キラとカガリの関係が明かされたのもそういえばこの巻でした。
感想の文章を書いている段階では失念してました。
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