神黎の図書館

主観によるグラフ+点数+感想を綴る読書感想文風書評ブログです。月間で読む漫画は150冊~200冊。小説や映像作品についてもちょこちょこと。

桐島、部活やめるってよ

桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)

・タイトル

桐島、部活やめるってよ

・本の概要
田舎の県立高校。
バレー部の頼れるキャプテン・桐島が理由も告げずに突然部活をやめてしまった。
そこから、周囲の高校生たちの学校生活に小さな波紋が広がっていく。
バレー部の補欠・風助、ブラスバンド部・亜矢、映画部・涼也、ソフトボール部・実果、野球部ユーレイ部員・宏樹。
部活も校内での立ち位置も違う5人にそれぞれ起こった変化とは……?
瑞々しい筆致で描かれる、17歳のリアルな群像劇。

・著者情報

朝井リョウ

1989年 5月生まれ
出身地 岐阜県

受賞歴
桐島、部活やめるってよ小説すばる新人賞(2009年)
『チア男子』第3回高校生が選ぶ天竜文学賞(2011年)
『何者』第148回直木賞(2013年)

早稲田大学文化構想学部在学中の2009年に「桐島、部活やめるってよ」で、小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。

・点数 88点

表現力☆☆☆☆☆
深み☆☆☆☆☆
芸術性☆☆☆☆☆
ストーリー性☆☆☆☆
読みやすさ☆☆☆


・感想
まずはじめに、自転車の2人乗り且つ、スピード出すのはやめましょう。

かつての青春と言えば、男女問わずに自転車2人乗りとかあったけど、今はご時世的にも、危険性の伴う事故に繋がり兼ねない行為はやめましょう。
って感想としても注意書きしなきゃいけない程、モラルや倫理には厳しくなりましたよね、作品としては突っ込むのは野暮だけど、真似されたら困るというジレンマを抱きつつ、この感想から始めました。

ここから先はちゃんとした内容に関する感想です。

タイトルに出てくる「桐島」という高校生が部活を辞めると言っていたが、それは「事実になるのか、ならないのか」
そこに焦点を当てた一風変わった青春群像劇です。

圧倒的実力を持っていて、キャプテンで、バレーが好きで、勝つ為に厳しいことを言う、正しいけど言い方がキツい、チームメイトが窮屈さを感じる程の裸の王様感……なるほど、某バレー漫画の影山くんみたいなタイプだったか、「桐島」くんは。

学年とポジションこそ違えど、同ポジションのレギュラーと控えで友情と信頼感が芽生えてるところも似てますね。
こちらの作品では桐島と控えは同級生、ポジションはリベロです。

絶対にレギュラーとなる実力を兼ね備えたキャプテンとその背中を追っていた控え選手。
控え選手目線で描く心情は複雑で、綺麗な感情だけではないドロドロ感もありつつ、それでも人間性が現れている別の綺麗さがあって好きでした。

第三章にあたる亜矢編は、思わぬ形で桐島に触れますが、それよりも、「人間関係」や「心」を「硝子細工」のように表現する技術力の高さに脱帽です。

あと、女の怖さみたいなもの垣間見えましたよね、この作品に出てくると思ってなかった部分なので、不意を突かれました。
でも、好きなエピソードです。

うーん、切ないね、桐島くん全く関係ないところでめちゃくちゃ感情移入してしまいました、思わず。

硝子細工のような恋する乙女心を描くの上手くない?って思ってるのですが、実際の乙女心がどうなのかは性別的に分からないので、男性が思う乙女心はこれ。みたいな感じですよね、うん。

曲と歌手のイメージを効果的に使ってるのも個人的にはGoodポイントでした。
抽象的で分かりやすいと思います。

朝井さんは年上ですが、世代としては同世代なので、感覚的に「分かる」というのも大きかったかもしれません。
チャットモンチーaikoさん、大塚愛さん……多分、年齢出るよね、ここ(笑)
えっちゃんの声が可愛いことと、チャットモンチーはシャングリラしか知らんわーっていう男子の感想の部分、まんま分かる!という懐かしみもありました。
チャットモンチーは間違いなく四国の星でした。

朝井さんの書く恋愛小説読んでみたいって素直に思ったんですけど、ありましたっけ?

続く涼也編でも、桐島と接点のない映画部という視点から描くちょい甘酸っぱい部分のある高校生の残酷さが存分に出てます。

誰が決めたのか分からない何となくのスクールカースト
運動部は上で、文化部は下。
スクールカースト下位を自認する子視点の語りかと思いきや、その子は中学まではカースト上位だったという事実。

足だけは早かった。
なるほど。小学生って足速い人モテますよね、リレーのアンカーは英雄的存在ですよ、確かに。
それ故に自分は変わってないのに価値観の変化によって高校ではカースト下位にいる……不思議なようでちょっと分かる気がする。
足の速さだけで評価されるほど高校生は甘くない。
校則のギリギリラインを攻めるお洒落さがないとキツいよね。

実果編では、風助編に出てきた風助や桐島と同じバレー部の孝介の彼女であり、涼也編に出てくるかすみの友人、スクールカースト上位の女子グループに在籍する女の子が主役となります。

悪い子ではないはずだけど、自尊心の高さが目立つかな?って第一印象です。
語弊はあるかもしれませんが、女子って感じはします。
それでいて、その年齢で本音と建前を使い分けて本心を隠して上位をキープしているのだから将来性が非常に
気になる子だなって印象です。
暫定ですが、最も人間味溢れてる印象を持ちました。

実果編って風助編と涼也編の裏側にも少し触れてるからそういう意味でも好きです。
涼也達からしたら「かすみもいる上位グループ」って括りで、自分達を嘲笑うって同一化されてるかもしれないけど、グループでも当然、1人1人に個の意志があることを改めて分からせてくれる内容ですよね、好きです。

思ったことを言うことと言わないことのどちらが大人か問題はケースバイケースとしか言えないですね、関係性というよりは今後の人生において、どれぐらい関わるかで決めちゃいますかね、僕は。
このケースなら、かすみちゃん同様にそれとなく話の方向性ずらすかなぁ~

かすみちゃんの本心は触れられてないので分からないですが、ほんの数年前はそれなりに親しかった相手が笑い者にされてたら、一緒になって笑いたくはないだろうし、実は仲良かったことはバレたくないだろうし、その話題から逸れさせるのが一番だろうから、実果ちゃんが思ってるより大人かは実のところ分からない。
この曖昧性もいいですよね、話に聞いたことがある女子グループって感じします。

高校は社会の縮図みたいなところあるけど、女子のほうがそれはより強くあるかもね?って話を聞く度に思います。
女の子ってほんと大変だと思う。
男は一匹狼でも平気でも、女子はそう簡単ではないんだろうなぁ~

桐島くん全然関係ないけど、実果編に感情移入し過ぎて切なくて泣きそうになりました。
オムニバス形式じゃなければ危なかったです。

宏樹編は甘酸っぱくもなければ切なくもない。
ただただ、どんよりと暗いです。

イケメンで、運動神経抜群。部活をサボっても部長が頭を下げて「試合だけでも出てほしい」という実力、周りが羨む彼女持ち。

MARCHのどこか、一応早慶上智も受けとくか。って言える成績という絵に描いたような一軍男子の憂鬱な内面の描き方を見ていると、「ああ、これが朝井リョウさんの真骨頂なのかな」って思います。

17歳にして、真っ白なキャンバスでも暗闇の中なら真っ黒で何も描けない。って思ってる辺りが他とは違う頭の良さを演出してるかもしれません。

実果編とは違う意味で宏樹編も好きでした。
これはこれで青春なのかなって。
あおはるってやつとは程遠いけど、あおいな。って意味では青春に部類されるはず。

涼也くん視点での宏樹くんと、実際の宏樹くんの差を考えた時、実果ちゃん同様、宏樹くんも人間味溢れてて好きだなって思いました。
自分で気付いて自分で解決出来る能力があることにも好感持てますし、めちゃくちゃ続きが気になるという意味でも実果ちゃんと通ずるところあるかも。

かすみ編は14歳の頃のお話だったので、地味に気になっていた、「高校生のかすみちゃんは涼也くんをどう思っていたのか?」は結局語られず終いでしたね。

代わりに、価値観に囚われて浮いた存在の人物と関わることについて触れる深い内容になってました。

高校生は群れを為す習性があるから難しいところではありますけどね、現状の立場と好奇心もしくは校外の友情との天秤ってことですからね。

僕なら楽しいほうを選びます。
あと楽なほう。
高校の頃の自分の交遊関係……前左右両斜め前の友達付き合いだったかなぁ~
運動部、文化部、帰宅部で分けてはなかったです。席順です。

14歳かすみ編は作品のまとめ方としてはよかったですね!


・おまけ
作中から拾ったざっくり桐島くん情報
・桐島の情報その1
バレー部、実力がある、キャプテン

・桐島の情報その2
その厳しい物言いと正しさ故にレギュラー陣からは煙たがられている節があった。
同ポジションで控え選手の同級生からは好かれていた。
恋人持ち。

・桐島の情報その3
桐島の部活が終わるのを待つ為だけに放課後バスケをしていた友人が複数いる。
部活の後に塾に通っている。


・まとめ
映画版がそうだったように、やはり原作小説でも桐島くんは出てきませんでした。
タイトルに対してこの書き方は斬新だと思います。映像の世界だと特に!って、当時見たときは衝撃を受けました。

タイトルから受ける印象程、桐島くんは関係なく、5人の高校生の視点から描かれたオムニバス青春ストーリーです。

  1. α要素として、中学生のかすみ編もあるので、主役は6人の若者ということになります。

この作品の凄いところは、興味を惹かせつつも描ききらないところです。
描ききれないではなく、きらないという絶妙なタイミングで次の主役へバトンが渡される小説で満足感を得たのは初めてでした。

確かに気にはなる。気にはなるけど、不完全燃焼ではない。
それが僕の感想です。
ただし、これは感受性だったり、共感覚で左右される部分なので、必ずしも全員がそうなる訳ではないだろうな。とは思いました。
とりあえず読んで判断して下さい←

いや、朝井さんの作品は何作か勧められてきましたが、これは勧められたことなくて、昔見た映画はよかったし、買ってみようという自分の感覚で買った作品なので、他の方の意見も聞いてみたいってのが素直なところです。

作品を読み終わり、ふと思ったことは、小説の中の物語って必ずしも綺麗に完結させる必要もないのかな。ってことです。

というのも、「通行人」と言ったって、通勤中の人、通学中の人、面接に向かう人…等がいるわけで、その1人1人が大なり小なり、恐らく本人にとっては大きな悩みを抱えて生きているんだ。というのを感じさせる、それぞれの心理描写をきちんと描き、「桐島」が姿を現さないことの意味も含めて、これは想像ですが、無関係のようで、実は人と人とは何かしらの繋がりはあるんだなって思い知らされる内容でした。

「面白い!」というよりは、「ふむ……」と言った感じの深い作品でした。

マウント取るほうと取られるほうってどっちが哀れなんだろう?とかあんまり考える機会ないですもんね、人数分の視点で描く意味を存分に感じた素晴らしい作品でした。

そして、この作品を19歳で書いた朝井さんにも改めて脱帽です。


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