・タイトル
銀牙伝説WEED
・本の概要
伝説のボス犬″銀″の息子″ウィード″が、未だ見ぬ父に会うため、北アルプスから奥羽を目指して走り出した。
勇気を武器に突き進むウィードを待ち受ける試練とは……
・著者情報
高橋よしひろ
生年月日 1953年9月18日
出身地 秋田県雄勝郡東成瀬村
血液型はB型職業 漫画家
活動期間 1971年~
ジャンル 少年漫画
代表作
『白い戦士ヤマト』
『銀牙 -流れ星 銀-』受賞歴
1973年 第5回手塚賞佳作『おれのアルプス』
1987年 第32回 小学館漫画賞受賞『銀牙-流れ星銀-』秋田県雄勝郡東成瀬村の自然に囲まれた田舎で生まれ育つ。
川崎のぼるや石川球太の影響を受け小学6年生の頃に漫画を描き始めた。1971年に上京し、本宮ひろ志のアシスタントとなる。
週刊少年ジャンプ・第3回手塚賞に『下町弁慶』を応募し、落選するも編集者の目にとまり掲載されることになった(事実上のデビュー作)。『銀牙』はフィンランドなど北欧でも人気が高く、フィンランドにたびたび招待されてサイン会を行っている。
初期のペンネームに『高橋義弘』、自身、師匠、妻のそれぞれから一字ずつ取った『高宮じゅん』、『結城剛』などの名義もある。
犬漫画の第一人者で、銀牙シリーズは世代を変えつつ今なお続く超大作。
・点数 92点
ストーリー☆☆☆☆☆
画力☆☆☆☆☆
キャラクター☆☆☆☆
設定☆☆☆☆☆
没入感☆☆☆☆
・評価
一言で言うと、長いです。全60巻の長丁場はそれだけでも人を選びそうな気がします。
シリーズものの通巻でもない限り僕もめったに読まない巻数です。
そんな前置きはさておき、この作品は犬の物語なんですけど、犬目線で語られるので、犬と書いて「ひと」と読むように描かれてます。
が、前半、中盤はまだしも、後半の人間がガッツリ出てくるようになればやっぱ犬だなって思います。
とはいえ、犬種毎の特徴は県民性、野良と飼い犬の違いは育ちの違い、飼い主に恵まれてる≒環境に恵まれている。
など、通ずるものは確かに多そうな気がします。
種族で決め付けずにそれぞれを見てあげるいいきっかけになる作品だと思います。
犬達にとっては仲間の救援、ボスへの忠誠心などの明確な理由があったりするけど、犬の言葉が分からない人間からしたら犬が暴れていたり、犬の大行軍は不気味かもしれませんね、僕も野良犬怖いし、吠えられたら飼い犬も怖いし、言葉が通じないって怖いんですね、やっぱり。
ただし、人間側の都合で住みかを無くしたり生きづらくなる犬がいることも事実なので、両方の言葉が分かるとここまで世界は変わって見えるのか……という発見も出来るかと思います。
面白いというよりは奥深いストーリーです。
犬達の物語なんですけど、人間に置き換えたら普通に戦争をテーマにした作品、レジスタンス的な作品と捉えて読むことも出来るメッセージ性の強い作品だと思います。
犬を描かせたら本当に天下一品だと思います。
純粋な犬vs犬を越えて、前作同様、巨大で獰猛な生物との対峙の時の描写の細かさ、躍動感、感情の変化を表す技量の高さが伺えます。
主役が前作の主人公にして今作では伝説の大将として圧倒的カリスマ感を誇る「銀」の息子ということもあり、新世代と旧世代、更にはそれぞれの章の敵等が出てくるので、キャラクターの数は多数です。
人間含めて他の動物も沢山出ます。
所詮は犬の物語と侮ること勿れ。
隊列とか徒党を組んでる以上、カリスマ性あったり、正直天晴れな程に格好いい生きざまのキャラクターもいたり、犬種の特性が性格に表れてると思うので、犬が好きな方はより楽しめるかもしれません。
設定のこだわり方は凄かったと思います。
エピソード分けすると分かりやすいので、後述で。
キャラクターの考えが理解できるかは別問題として、その都度きちんと説明してくれるので分かりやすいです。
読み終わりの満足感はそこそこあり、面白い部分も奥深い部分も多いのですが、60巻という巻数がネックではあります。
以下、商品リンクを挟んで、内容に触れつつ、個人的に感じた感想を書いています。
ネタバレが気になる方はご注意下さい。
※巻数が多いです。
・感想
銀牙伝説WEEDは前述の通り、長編です。
ざっくりといくつかのエピソードに分けることができます。
最初は全てがまだ幼い初期の頃、病気である最愛の母親犬との別れや、後の親友?GBとの出会いがあります。
ちなみに母親からは坊やと呼ばれ、父親は息子の存在を知らない状態から始まった為、ウィードの名付け親はこのGBになります。
全てはここから始まった。
そして、奥羽の総大将の父親に会うためにウィードは奥羽を目指し、走り出します。
これが本の概要に書いた部分ですね、僕の独断と偏見で言えばここは第1部。
第1部はウィードとGBの出会いから奥羽への旅路、奥羽の2代目総大将として法玄・玄婆の凶悪兄弟が率いる大軍との全面衝突までだと思ってます。
感覚的には桶狭間ぐらい無謀の挑戦に見えました。
恐怖で支配する法玄は一種のカリスマ性がありました。
法玄・玄婆の兄弟は劣悪な環境でも生き抜く意地と誇りと実績があるんですね、本当に生きるためなら人間の肉を喰らう邪道の存在として犬からも人間からも忌み嫌われたり、畏れられたりする存在です。
この法玄を倒したことにより、ウィードは一躍犬の世界の有名犬になるのですが、一筋縄ではいかない数々のドラマがあります。
僕は法玄側に感情移入しましたが、違った見方が出来るのが一部の特徴だと思います。
続いて、僕の中の第2部。
法玄を倒して一躍有名になり、大所帯になった奥羽軍の前に現れたのは忍犬、そして猿、更にはウィードに瓜二つな容姿と必殺技を持つ幸村を筆頭に、猿と全面戦争を続ける奥羽軍に汲みさず、奥羽軍を恐れない犬達が出てきます。
それぞれと一悶着あるので、正直奥羽軍に問題があるのではないか?って思ったりもします。
実際、幸村達との対峙から奥羽軍は犬達の憧れでありながら絶対的正義ではない、融通の利かない正義感の押し付けみたいな側面も見え隠れします。
元々終わりの見えない戦争をやっている犬と猿の間に奥羽軍が割って入ることにより、ちょっと深い話になってきます。
三つ巴の状況の中、猿達のボス、将軍こと、アルビノゲルダヒヒが登場。
最初はその歪なオーラと大きさに恐怖しました……僕が←いや、お前かい(゜o゜)\(-_-)
将軍含め、猿達の厄介なところは二足歩行で手も腕もある…つまり、武器が使えます。
これがね、凄惨。
では、そもそも戦ってる理由は?
お互いが仲間を殺されたから。
何故?どちらが仕掛けた?
将軍の好物は仔犬の肉。
手に入らなければ子猿を喰らう……
つまり、犬も猿も我が子を餌とされてるんですね、怒りで戦う側と恐怖で支配される側の違いはありますが……
奥羽軍の介入は幸村の部下の猿狩りをウィード達が止めたことにより始まります。
そして、助けられた子猿はウィードになつき、突破口のきっかけになっていくのです。
そして、ウィードと幸村の関係性を含めてこの先の伏線入りまくりなので、ウィードを語る上では欠かせないエピソードだと思います。
続いて僕が思う第3部。
舞台は北海道へ移ります。
人間の都合により廃棄されたシステム、軍用犬の生き残りをかけた戦い…それは侵略しかないのか?
ここのテーマが一番深い気がします。
簡単に言えば、北海道を侵略に来たロシアの軍用犬VS銀率いる伝説の奥羽軍withウィード率いる新星奥羽軍の全面戦争です。
圧倒的力で北海道を制圧したロシアの軍用犬。
銀達は先んじて助っ人に入るも、数的有利な上に統率されたロシアの軍用犬達を前に苦戦を強いられる。
ウィード達援軍が来るまで凌げるか⁉というタイミングでの駆け引きが見所。
ちょろっと言うと、軍用犬VS忍犬は生き残りをかけた超長期戦においてはなかなか興味深く、戦地に赴き、常に命の綱渡りをしていた軍用犬に対しても銀の抜刀牙は脅威である。これちょっと面白い。
これは人間に置き換えると、戦闘のプロである軍人とレジスタンスの戦いに近いと思います。
言ってしまえば正攻法を使うのが敵で、奥羽軍のほうが後手に回って凌いで凌いで裏を掻く。みたいなイメージです。
これはガチで戦争でした。
ただ、この辺から僅かではありますが、犬達と関わりのないモブの人間が登場し、この一般人の何気ない一言によって端から見た時の犬の行動の奇妙さと不気味さを物語ってる演出は良かったです。
犬目線から見れば、ウィードが全国津々浦々から仲間に声をかけながら北海道へ向かう場面も、人間から見れば犬の大群が大移動をしているという奇怪な姿に見えるっていう……犬目線から見れば一大事だから当然の行動。でも、人間目線から見れば車道、歩道関係なく大群で横断されると迷惑極まりない。
ここまでは作品の特性上見えてなかった部分もハッキリ見えた気がします。
事実、法玄の頃からちょくちょく人間達からの攻撃(爆破系)もありました。
人に危害を加える犬許すまじ。みたいな。
この温度差も是非、読んで体感してもらいたいのですが、ここは長いので中弛みもするっていう。
それがネックです。
ちなみにウィードに恋仲の相手が出来たり、親子共演で敵に挑むエピソードでもあります。
そして、最終章。
のろけて腑抜けになったウィードは奥羽軍を辞め、仲間より女を選ぶ…というところから始まります。
これはウィードの意思半分、銀の願いという名の呪いが半分ってとこですね、仲間のピンチにも駆けつけず、要請を断る辺り、彼は極端なのだろう。
そして、シリーズ最凶の敵、ハイブリットが登場。
生き残る為に特殊な配合を繰り返して生まれた巨大な熊です。
いろいろあって、実兄と共にハイブリットと戦うウィードでしたが、ここまで幾度もピンチを救ってきた抜刀牙も、兄のネック・ザ・キリングもまともにやっても通用せず……
ハイブリット戦はこの作品では(大輔以外だと)初となる人間がガッツリとストーリーに参入するエピソードです。
そして、ウィードの実兄は銀を憎んでいる。
そこのわだかまりは果たして解けるのか?
数多の犠牲を出しつつも、ハイブリットを倒すことが出来るのか?
それとも兄とした「この戦いが終わったら…」は死亡フラグなのか?
激動のウィードの犬生(じんせい)を見届けよ!
全60巻の長さは正直、中弛みする瞬間もありましたし、個人的にはそこまで奥羽軍やウィードの考え方に共感が出来なかったのですが、面白かった部分も多かったですし、考えさせられる場面もありましたし、読み終わりの満足度もそこそこありました。
もう少し気になる方で多少のネタバレがOKな方は単巻レビューを見ていただければと思いますm(__)m
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