・タイトル
タッチ
・本の概要
高校野球を題材に、双子の兄弟である上杉達也と和也、幼馴染みの浅倉南の3人を軸にした恋愛模様を描いた作品。
努力という言葉に縁のない兄・上杉達也と、何事にも一生懸命努力する弟・和也。二人は双子の兄弟。
隣の喫茶店「南風」の一人娘・浅倉南とは幼馴染み。
三人の「青春」から目が離せない……!
・著者情報
あだち充(あだち みつる)
生年月日 1951年2月9日
群馬県伊勢崎市出身の男性漫画家。
群馬県立前橋商業高等学校卒。
血液型はAB型。代表作
『タッチ』
『みゆき』
『H2』
『クロスゲーム』受賞歴
第28回小学館漫画賞少年少女部門
(『みゆき』『タッチ』)
第54回小学館漫画賞少年向け部門
(『クロスゲーム』)少年時代は野球部に所属。
ポジションはピッチャー。その一方で、兄(あだち勉)と共に貸本漫画の読者投稿コーナーの常連でもあり、『群馬の天才兄弟』として知られた。
高校在学中に『COM』の新人賞で「虫と少年」が佳作2位に選ばれ、以後『COM』の読者コーナーにしばしば掲載されるようになる。
高校卒業後は公務員になる予定だったが、一足先に漫画家になっていた兄に誘われて上京し、アシスタントを経て、1970年に『デラックス少年サンデー』にて「消えた爆音」でデビュー。
以降しばらくは漫画原作者と連名で作品を発表し、当時のブームだった劇画調の少年漫画を執筆。
ヒットには恵まれず、幼年誌でのコミカライズや少女誌などに活躍の場を移し、それにつれソフトタッチな作風に変化。1978年、再び少年誌に戻り、高校野球を題材にした『ナイン』を発表。
少女漫画の雰囲気を少年漫画に持ち込んだこの作品が高い評価を得る。
『みゆき』、『タッチ』が大ヒットし、ラブコメ漫画の代表的作家として『週刊少年サンデー』を牽引し、人気漫画家としての地位を確立。1982年、上記2作で第28回小学館漫画賞少年少女部門を受賞。
以降も『週刊少年サンデー』で主に野球漫画を執筆し、コミックスの発行部数は、1990年4月に『スローステップ』第5巻にて累計1億部を達成し、2008年5月に『クロスゲーム』第12巻にて単行本のみの累計で小学館連載作家として初めて2億部を突破。
2009年、『クロスゲーム』で第54回(平成20年度)小学館漫画賞少年向け部門を受賞。
2009年頃より主な活躍の場を月刊誌である『ゲッサン』に移す。作風
作中にしばしばあだち自身が登場し、平然と作品に対する弁解や宣伝を行なうのもあだち作品の特徴の1つ。
・点数 92点
ストーリー☆☆☆☆☆
画力☆☆☆☆
キャラクター☆☆☆☆☆
設定☆☆☆☆☆
没入感☆☆☆☆
・評価
メインキャラクターというか、主人公とヒロインが完全なる幼馴染みであり、過去と現在、そして未来への約束という恋愛要素を混ぜつつ、約束の大筋である高校野球で甲子園に行くという野球の部分に重きを置いた青春漫画です。
公式的なタイトルの意味や、個人的展開は若干のネタバレになるので後述で。
一定の世代までは周知の事実である通り、あだち充作品は似通った絵柄(パッと見では作品毎の見分けが付かないぐらい)です。
あえてこの手法を貫いたり、作中に本人を模したキャラクターを登場させて自らを揶揄しながら自作の宣伝をするスタイルは独特の極みだと思います(笑)
タッチとしても、キャラクターの些細な表情の変化と線の使い方でセリフの有無に限らずキャラクターの感情を表す能力に長けています。
それは野球においても、恋愛においても、友情や軋轢等の人間関係においても活きています。
好き嫌いは置いといて、登場人物に無駄がなく、各々が役割を全うしているのは素晴らしいです。
青春ドラマとしても面白い理由はそこにあるのだと思います。
この作品の最大の魅力は作り込まれた世界観と繋ぐ想いにあると思います。
これはおそらく、あだち先生自身の想いが強く込められているからだと思います。
この作品を読んで泣く人も少なくはないと思います。僕は泣きました。
基本的には概ね満足な太鼓判名作なのですが、2人の上杉が「伝説」になる造りなので、呆気に取られるというか呆然とする演出も存在します。
上杉達也は優しさに包まれているので、タッチは時代を越えて令和にも通用する作品だと思っています。
以下、商品リンクを挟んで、内容に触れつつ、個人的に感じた感想を書いています。
ネタバレが気になる方はご注意下さい。
・感想
アニメ化、映画化、実写化されたあだち充先生最大のヒット作です。
タイトルの意味は過去のヒット作に倣った3文字かつ野球用語、バトンタッチに由来。
また、主人公の上杉兄弟と作中後半に登場する柏葉兄弟など、天才と呼ばれた弟(兄)に埋もれていたものの、同等かそれ以上の才を持つ兄(弟)という同じ職業でかつて天才兄弟と呼ばれたこの人達だから生まれた設定なのかな?と勝手ながら思いました。
また、達也と作品の性格が結果的にスポ根の否定になっているのも1つの特徴です。
突然現れた甲子園常連校の主力からの挑発・名乗りに対して「とても覚えきれん」と一刀両断した上で野球漫画なのに甲子園のシーンがオールカットなど。
物語序盤は幼馴染みの仲良し3人組の関係性の変化と、周りからの評価が愚兄賢弟と差のついた双子の兄弟の真剣勝負を描き、
物語中盤では弟の意思を継ぎ、ボクシング部から野球部へ移るも、女房役の松平孝太郎と衝突、和解すれば今度は野球部への復讐を果たす為に監督代行を引き受けた柏葉監督が現れ、前途多難な奮闘劇を描き、
終盤は野球も恋もライバルが現れてスクランブル状態となります。
後は中盤以降は意思を継ぐ、代わりになるということが美談なのか呪縛なのか……というテーマも見受けられます。
大人になって読むと深すぎて結構真剣に考えさせられる作品でもありました。
ずっと両想いのはずなのにどちらも報われない可能性や、前に進むことの大切さなど、大人が読んでも十分楽しめる内容でした。
初めてこの漫画を読んだのが小学5年生の頃で以後、5~6年に1回は読んでる漫画ですが、毎回違った角度で読める素晴らしい作品ってなかなかないんですよね、それこそ昔は南ちゃんに魅力を感じなかったのに今回は表情から発言から仕草まで全てがストライクで自分の好みの変化(というか幅の広がり)が分かりました。
南ちゃんは魔性タイプ、由加ちゃんは積極的(強引)タイプ。
他にも瞬間火力が高めなサブキャラクターが何人かいますが、基本的にはこの2大ヒロインで恋愛パートは進みます。
個人的に感じたストーリー軸での魅力
原田が半ば強引にタッちゃんをボクシング部に入れた理由が結構深い。
ベストカップル賞(上杉和也と浅倉南)の景品のノートの扱いがきっかけでタッちゃんが南ちゃんをぶってしまうという事件と南ちゃんの涙が最強のコンビネーション過ぎる……
南、(魔性が)覚醒。南……恐ろしい子(褒めてます)。
和也の本気。南の本気。
それを受けるタッちゃんは優しいお兄さん。
この青春はもどかしさと切なさが同時に来ます。
南との約束を果たす為、甲子園しか見えてない和也……
そして、弟想いのタッちゃんの行動とカッちゃんの選択に感動……(とある野球道具に関するエピソード)。
みんなの期待を背負った和也は1年生にしてドラフト候補の選手と互角以上に渡り合うも……
兄弟の絆は時に足枷となるかもしれない……と、作品の裏テーマに近い場面となった印象があります。
ここはタッチの中でもとても重要なシーンの1つだと認識しています。
南の夢を叶える王子が双子だったなら途中で入れ替わっても誰も気付かない……
原田のこの言葉は結構重みある一撃ですよね。
和也は婚約を、達也はいつか和也と肩を並べる意思を南に伝え、恋の三角関係は変化。
南ちゃんはタッちゃんのことが好きだという事実を3人が自覚しながらもそれでも競い合う双子の兄弟対決は幻に終わるわけですが、個人的にはすごく見たかったです。
弟想いの兄と兄想いの弟の真剣勝負はあだち充さんが描けば絶対に面白い!と断言出来るのですが、そうなるとそれはもう名作「タッチ」が生まれなかったことになる……というジレンマを抱えるのでこの話は終わりです!
タッチを知ってる人も知らなかった人も、多くの人が涙するシーンについてですが、回想の使い方と演出が素晴らしすぎて知ってても泣ける場面になっています。もちろん、個人差はあると思うので絶対!とかは言えませんが。
期待に応えようとはするものの、続かずに裏切るのがタッちゃんの趣味。
これは南ちゃんのセリフですが、誰よりも期待してた南ちゃんだからこそのセリフですよね、こういうセリフ回しもいいんですよ、これもタッチの、浅倉南の魅力だと思います。
性格の不一致はありつつも、ボクシングの才能もありそうなタッちゃんでしたが、本人の意思に反して野球部に電撃トレードされたことで物語は新たなステージへ……
中学時代から和也とバッテリーを組んできた孝太郎とタッちゃんの衝突は必然……
しかし、不器用ながら友情を深める2人にほっこりしました。
500円玉の話めちゃくちゃ好きです。
南ちゃんが新体操を始めて才能を開化させるのも2部の特徴です。
そして、タッちゃんのライバルが続々登場!
打倒上杉和也を胸に闘志をたぎらせる新田。
(暫定)高校生No.1投手の西村。
憧れから挑戦へ?な吉田。
吉田は正直格落ちですが、上杉達也のストレートのコピー、西村のカーブのコピーなので素質自体はあったかもしれませんよね、環境次第では面白い選手になったかもしれませんよね、性格がちょっと厄介なのでそこが痛いところですが。
南ちゃんにとっての恋のライバルともなる新マネージャーの新田由加(新田の妹)が登場すると、ラブコメ感が急激に増します。
南ちゃんと由加ちゃんの小競り合いはなかなかの名勝負なのか迷勝負なのかは人によるとは思いますが、見所の1つです。
監督代行の柏葉監督は人によっては見るのも不愉快なレベルのバイオレンスが入った指導方針な訳ですが、もちろん事情はあります。それも見所の1つですが、柏葉監督はスラムダンクのミッチーみたいなもんなので作品には欠かせない存在だと認識しています。
前述の兄弟の呪いの意味も合わせてむしろ必須だと感じました。
柏葉監督とタッちゃんの関係性にも是非注目してほしいところです。
全然報われないけど、普段ダメダメな高校生男子が好きな女の子の為に体を張るのは結構グッと来るものがありますよね、相手が上杉達也や新田明男だから佐々木くんに勝機は薄いけども、逆にあり得るかも?ってぐらいダメダメなので彼も密かに応援してたキャラクターではあります。
客観的に見たライバルはいても本当のライバル、達也にとってのライバルは和也だけ……
そんなタッちゃんの孤独な戦いの中で孝太郎の存在は大きいですよね、達也・和也の双方にとってのよき女房役っていう作中の影のMVPですし、幻のホームラン含めて物語における彼の貢献度はかなり高めです。
結論から言えば不朽の名作と言われるのも納得の子供から大人まで多方面に様々な方向から楽しめる作品だと思います。
まとめ方が月並みですみませんm(__)m
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