・タイトル
虐殺ハッピーエンド
・本の概要
高校生・草壁真琴は、重病の妹の治療費を稼ぐため、バイト漬けの日々を過ごしていた。
働かない父親、子供を置いて逃げた母親、バイト先でのイジメ、そんな状況にもめげず、妹を救うべく生きてきた。
しかし、無情にも妹の余命が短いと告げられ、絶望した真琴は、命の重さを問う…最凶パニックサスペンス!
・著者情報
原作:宮月新 作画:向浦宏和
宮月新(みやつき あらた)
職業 漫画原作者
活動期間 2013年~
ジャンル
青年漫画、サスペンス
代表作
『不能犯 (漫画)』
『シグナル100』
いずれも原作担当心理戦や催眠術をテーマにした作品を多く手掛ける。
向浦宏和(むこうら ひろかず)
1980年生まれ 奈良県出身
職業 漫画家
活動期間 2000年~
ジャンル 青年漫画
代表作
『カジテツ王子』
受賞
金のピコピコハンマー賞年間グランプリ
・点数 96点
ストーリー☆☆☆☆☆
画力☆☆☆☆
キャラクター☆☆☆☆☆
設定☆☆☆☆☆
没入感☆☆☆☆☆
・評価
主題が病んではいますが、一環していますし、この究極の二者択一は奥深いし、考えながら読めるので好きです。
その心情を理解するかしないかは別問題として、ストーリーとしては分かりやすいです。
良くも悪くもサクサクって表現が似合う雰囲気の画で物語は進みます。
表情や心理を含めたキャラクターの壊れ方で真骨頂を発揮するイメージの作品でした。
テーマ的にキャラクターに魅力がなければ成り立たない作品ではありますが、そこら辺は問題なく、いい意味でも悪い意味でも作品を盛り上げるキャラクターがちらほらいたのでよかったです。
業の深さは背負った運命が故?きっかけは神に喧嘩を売ったから?
世界を救うための必要悪ならそれはダークヒーローと言えるけれど、特定の個人を守る為に行う悪はエゴイズム、エゴイストになるのかな?
ネタバレなしで言える範囲はここまでですが、攻めた上でよく出来た設定でした。
節々で納得出来ない部分もあったと言えばありましたが、それも含めて、「続きが気になる」というのは常々思い、どう畳むんだろう?という展開の中、賛否両論は出そうでしたが、個人的には納得の終わり方だったので、僕は高評価です。
以下、商品リンクを挟んで、内容に触れつつ、個人的に感じた感想を書いています。
ネタバレが気になる方はご注意下さい。
・感想
大切な人を守る為に他人を犠牲にすることが出来るのか?
そのテーマに真正面からぶつかった作品です。
悲惨過ぎる悲劇と絶望の中、途方にくれて神社で神に喧嘩を売ったことで呪いにかかってしまう兄妹。
「明日がいらない」と叫んだことで自分達だけが「明日が来ない」という1日前に強制タイムループされる現象に陥ってしまう。
しかし、本人達の時間は進む為、余命宣告をされた妹の容態はどんどん悪化していく。
時を進める唯一の方法が「誰かの命」と気付いた時、最愛の人を守る為にその選択をしたことを責められる人が果たしてどれだけいるんでしょう?
少なくとも僕は責めることは出来ません。
肯定はしないけど、覚悟を持ってそういう選択をした彼やそれに付いていこうとした彼女達の生き方の否定は出来ないです。
さて、『彼女達』と言いましたが、真琴くんにとっての最愛の人はもう一人います。
家族としてではなく異性として、幼い頃より姉として慕っていた人を異性として好きだと自覚する思春期ならではのシーン、しかし、その頃彼は既にループの中にいて、まともな恋愛が許される立場でない、巻き込みたくない……そのせめぎあいの描写は見所です。
そしてもう一人、最愛の人……ではなく、真琴に助けられたと思い込み、一方的に盲信して掻き乱す勘違い女という物語を盛り上げてくれる最大のファクターがいます。
ちなみに理由は違えど、どちらも闇落ちならぬ病み堕ちの気があるので、そこも見所です。
謎の連続殺人事件の正体がタイムリープによる時間の旅行者によるもの……という詰み現象に奇しくも違和感を持ち、独自に捜査を続ける警察官の九十九との攻防も見所ですね、彼の着眼点と執着心は見事と呼ぶ他ないです。
タイムリープを実証する為に手段を選ばないところや自分の命すらも平気で賭すところは個人的には好きでした。
クライマックス(呪いの正体と終わらせ方)は賛否両論を呼びそうな衝撃の展開ってやつなんですけど、個人的には上手くまとまってると思ったので、肯定派です。
コミック
電子書籍(まとめ買い対応)
おまけ
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