神黎の図書館

漫画・小説・映画・アニメ・ドラマを主観によるグラフ+点数+批評+感想を綴り、作品の評価をあらゆる形で視覚化したブログです。有名な作品から掘り出し物的な作品まで生涯の内になるべく多くの作品に触れて伝えていけたら本望です。

ぼくらのへんたい

ぼくらのへんたい コミック 1-10巻セット (リュウコミックス)

・タイトル

ぼくらのへんたい

・本の概要

主人公は女装癖のある3人の中学生男子。
純粋に女の子になりたい=まどか(青木裕太)、死んだ姉の身代わりとして母親を慰める為に女装するユイ(木島亮介)、恋した先輩に求められるままに女装を続けるパロウ(田村修)。
それぞれが悩み、傷付き、胸をときめかせながら思春期を懸命に生きていた。
そんな3人が出会う時、物語は動き出す……。

・著者情報

ふみふみこ

生年月日 1982年8月18日

2006年、「ふんだりけったり」で第11回「kiss」ショートマンガ大賞佳作を受賞し、デビュー。

代表作
女の穴
さきくさの咲く頃
そらいろのカニ
めめんと森
ぼくらのへんたい

・点数 100点

ストーリー☆☆☆☆☆
画力☆☆☆☆☆
キャラクター☆☆☆☆☆
設定☆☆☆☆☆
没入感☆☆☆☆☆

・感想
昨今話題として挙げられるLGBTについて触れてる作品でもあり、テーマは重く、キャラクターが持つ感情もとても複雑でいて全てにおいて重くのしかかるテーマです。
が、性的マイノリティに悩み、葛藤していくキャラクター達の姿には応援したくなる気持ちや、感動する気持ち、周りとして向き合う気持ち等、考えさせられることが多かったです。
と言っても、難しいテーマを正面と鋭利な角度の双方から切り込んで
描いているので、お話としては分かりやすいです。

ふわっとした繊細な印象を受ける絵柄で、談笑シーンは普通に楽しい。
ただし、この絵柄でドス黒い感情や悲痛な叫びをされるとダメージが大きいように感じました。
そういう意味でも、とても作品にマッチした絵柄と言えると思います。

3人の主人公は女装を通じて知り合い、交流を深めます。
端から見たら同じ女装家でも、三者三様の事情があり、それを突き詰めていくのがこの作品です。
そして、それを見守る物語でもあります。

話を読み進める度に、巻数を追うごとに、タイトルの「へんたい」の意味が解る造りになっていて、構成力に脱帽でした。

特殊な事情があろうが、全員が全員優しくしてくれる訳ではない。
そのリアリティと、それでも強く生きる強さを学ばせてくれる名作です。
月並みの言い方にはなりますが、読んで損はない作品だと思います。


以下、商品リンクを挟んで、内容に触れつつ、個人的に感じた感想を書いています。
ネタバレが気になる方はご注意下さい。



タイトルや画のタッチからは想像していなかった重くて深いテーマの漫画でした。

タイトルの意味は、変態。変体。編隊。の内のどれなんだろう?と読む前は思いましたが、なるほどなー、という感じでした。
この「なるほど」の意味は読んだ者の特権……ということで。

三者三様の事情を抱えた3人の戸惑いと選択、その結果を見守る物語とも言えます。

序盤のエピソードタイトルは凝ったテーマ縛りがされててお洒落でした。
1巻は英語、2巻は花、3巻は童話。
縛りをやめた理由は面倒になったから?
ちょっと作者さんの性格好きかもです(笑)

恋のトライアングル×2で全員片想い⁉の展開にはなりますが、思ったほどドロドロにならない世界でした。
結構な人数が傷付いたので優しい世界とは言えませんが……

caseまりか
お姫様失格……自分の行為に対してそう思いを馳せたまりか。
その言葉を発した瞬間、幻想は消えて現実に引き戻される。
それはまるで淡い泡沫の様。

お姫様ではなくなったものの、内面がどんどん女の子と化していくまりか。
ただ、性欲強めっぽいからそこら辺は男の子のまんまなのかなー?ってちょっと思ったり。

女の子っぽくなったまりかと亮介の彼女との一騎討ちは1つの見所です。
裕太がまりかに変わるタイミングの物指しとしても使えるかも?

まりかの場合、年齢も年齢だけあって特有の悩みがありますよね、そう変声期。
それは突然、容赦なくまりかを襲います。
女装ではなく男装していると最初から言っていたぐらい女の子に憧れるまりかにとっての死活問題。
これも見所です。

そして成長して「女の子」になったまりかの魔性も勿論見所です。


caseユイ
主人公3人の中で唯一自分の為ではなく、人の為に女装をして悩み苦しんだ優しい子。

母親のことで悩み、姉のことで苦しみ、友達の為に怒れるとてつもなくいい子。
なんですけど、自分の都合で結果的に幼なじみの女の子を傷付けたりもしているので聖人ではない。
しかし、それがまた人間っぽくていい。
個人的には彼の、りょーちんの心理描写を描いたシーン全般が好きです。

悩み抜いてもがいて足掻いて苦しんで、それでも前に進もうとするも足踏みしたりと本当に人間らしかったと思います。


caseパロウ
パロウこと田村修の人間性と過去が明らかになればなるほど、彼の抱える闇が深いことが分かります。
ちなみに嗜虐思考の拗らせ系です。
そして天然人間クラッシャーでもあります。

これは僕の勝手な認識ですが、この人は男性と女性の両方の特性を持っていると思います。
その特性が顕著に現れてると思ったのは、修の時はメンヘラぶってて、パロウになるとメンヘラになる。この似て非なる特性を器用に使い分けてるのがこのキャラクター「タムリン」の魅力ですね。

過去のトラウマや性癖からかなり拗らせてて不器用でどうしようもない性格ですが、学校の保健室で……する離れ業をする勇気を持ち合わせた地味に凄い奴です。
支配からの卒業という言葉が一番似合うキャラクター。


サブキャラクターも魅力的なんですけど、同時にまりかの恵まれた環境でもあります。
内面が男の子でも女の子でも関係なく愛してくれる母親、女の子として接してくれていじめからも守ってくれた幼なじみの女の子、女装×セーラー服で登校していた先駆者が同級生、担任の先生が理解力ありすぎていい人過ぎるetc.
これに加えて顔が可愛くてところどころ女子顔負け⁉な描写があるのでヘイトも溜めやすい、向けられやすい性質とも言えます。

ちょこちょこパロディがあるので苦手な方は注意が必要かもしれません。
個人的には、斎藤勇気さんと南野陽奈さんはやっぱりヨーヨーとか得意なのだろうか?という素朴な疑問があります。
が、作中にこの2人が目立った活躍をすることはないです。

ラスト1話は数年後(およそ3年後)の時間軸という構成になっていました。
傷付けあい、助けあう。そうして人は変化する……というのを見事に描いていました。


最後のポイントとしては、最初から作者に嫌われていた3人の主人公達……なんですけど、きちんとそれぞれの道を歩んで成長した姿を描いたのは凄いなぁ~と思います。

少し穿った見方をしますと、自分が嫌いなキャラクターを主軸にしてここまで綺麗に物語を完結させられるのか……しかも読みやすい巻数の範囲内で……という感心と感動もありました。

読み進める度にタイトルに込められた「へんたい」の意味が分かる体験を是非。どうぞよしなにm(__)m


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