・タイトル
The Book jojo's bizarre adventure 4th another day
・著者情報
・本の概要
吉良吉影との戦いから半年後の2000年初頭、広瀬康一と岸辺露伴はコンビニの前で血まみれの猫と遭遇する。
猫の飼い主を捜して辿り着いた先には家の中で車に轢かれた女性の奇妙な死体があった。
露伴はスタンドの能力で犯人の手がかりを掴む……。
・点数 84点
表現力☆☆☆☆☆
深み☆☆☆☆☆
芸術性☆☆☆☆
ストーリー性☆☆☆☆
読みやすさ☆☆☆
・評価
ジョジョ4部の小説化企画は乙一さんの持ち込みと言っても過言ではないようです。
作者違いのスピンオフ作品とはいえ、4部本編の後日談だけあって若干気になってたもやっと感を解消してくれる(かもしれない)のがこの小説ですね!
純粋に読み物として面白かったです。
ファンタジー要素のあるミステリー小説として成り立っていたのが高ポイントです。
ただし、ジョジョとのシナジーは微妙だったかもしれません。
合ってないとまでは言いませんが、ジョジョの設定を無視したほうが面白くなった気がします。
仗助とクレイジーダイヤモンド、億泰とザ・ハンドを完璧に使いこなせるのは荒木先生だけなので、公式の同人・二次創作の域を出てないので、そこは仕方ないですが。
あと、純粋にジョジョは小説だと読みづらいのと、前提条件がある程度揃ってないと理解出来ないと思うので、読みやすさは中間点です。
オリジナルキャラクターとオリジナルスタンドの設定、使い方、立ち回り方は絶品と呼べるものだと思いました。
つまり、ジョジョの奇妙な冒険の4部、乙一さんの何かしらの作品もしくは世界観が好きな方はある程度楽しめるか、満足いく作品だとは思いますが、片割れだと評価は変わると思われます。
このピーキーさはジョジョっぽくもあり、乙一作品っぽくもあると思いましたので、どうしてもやりたかったという熱量は伝わりました。
なので、僕は全面的に支持しています。
以下、商品リンクを挟んで内容に触れつつ、個人的に感じた感想を書いています。
ネタバレが気になる方はご注意下さい。
・感想
外部から見た仗助達が倒したスタンド使いの中で観光スポットとして紹介された人(通称鉄塔男)が元気そうで楽しそうなのがなによりでした。
こういうジャブして来るんですねw嫌いじゃないぜ!
かーらーのー……アッパースイング!
急展開なんですけど、ミステリー・ホラー・サスペンスっぽくてわりと好きです。
『黒い琥珀の記憶』……いきなり出されたら気になりません?
しかも「人が死ぬ間際に放った一言」ですからね……私、気になります!
露伴先生の代表作『ピンクダークの少年』
グロテスクな表現があるものの、個性的な登場人物と特徴的な擬音、コミックの表紙の登場人物のかっこいいポーズで読者の心を掴む少年漫画……まんまジョジョですね(笑)
この小説時点で3部が終わって4部に突入するところということで……読みたい!
あの戦いを経験した露伴先生が描く漫画読みたい!!
と、関係ないところで盛り上がってしまうほど気になってしまいました。脱線してすみません!
康一くんと露伴先生の絡み面白いというか見るの好きなので小説でも見れて嬉しい。
知って不幸になるぐらいなら知らないで幸運でいたかった……それは真理なんでしょうけど、そんな偽りの幸福はいつかは滅びると思うので、そんなものは詭弁だと思います。個人的には……ね。
作品の特徴として慣れていくしかないですが、ストーリーテラー、語り手が変わるので人によっては多少の読みづらさがあるかもしれません。
それはそれとして、康一くんが露伴先生と関わると事件が起こるのは何故か?を解き明かしたい気分になりますね!
ジョジョには珍しい恋愛話が女学生視点で描かれているのも特徴ですね、幼い頃に自分を助けてくれた先輩と成長して自分が好きになった人物が一緒なら……という観点から描いてるのは正直面白いです。本編だと山岸由花子がブッ飛んでるので対比もいいですね!
オリジナルキャラクターとして絶対記憶能力の人物が出るのですが、使い方が絶妙なんですよ、キャラクターのバックボーンを描くの上手いなぁ~って思いました。
部屋の中で死体として見つかった女性。
部屋は小動物ならまだしも人は通れないという密室……さらに奇妙なことに彼女の死因は交通事故だった。
彼女は部屋の中で車に轢かれ、交通事故で亡くなったのだ。
更に彼女の体格とバンパーの痕から考えて不可解なことが多すぎる、空飛ぶ車があるならば話しは別だが……
というのが露伴先生の見解、ふむ……興味深い。
ここに来てまさかのスタンドの説明。
由来はstand by me……幽波紋の設定が消えてるのは薄々勘づいてましたが、知らない間にダジャレっぽくなってた(笑)
小説を人間に喩えたとしたら電子書籍は魂だけの幽霊みたいなものってユニークな発想ですね、正直面白い。
変な話、相手を疑わずに騙されていた人とわざわざ危ない橋を渡っていた人とでは覚悟も執念も段違いなわけで、勝負になるわけがない。くぐってきた場数が違うのだから……正義とか悪は関係なく、理屈としてはそうですよね。
Bookのスタンド?が思ったより凄い。
読んでない漫画でも当時の雑誌を再現してスローで読むことでかつては一瞬で読み飛ばしたはずの漫画を実質小説として(絵が文章に自動変換されて)読むことが出来るのか……それはほんと凄い。
『彼』と仗助のやり取りはまさに冷戦と呼ぶに相応しいと思いました。
確信がないから探っている。
取るに足らないから?相手にしていない。そんな風に感じました。
The Bookの半径は30m。
スタンドというより念能力みたい。
おー!そう繋がるのか!なるほどね!
バラバラだったピースが繋がるこの感じ好きです。
漫画のノベライズと同人誌の違いをこの
タイミングで問うのは何かしらの意図があるんだろうなぁ~
公認か非公認か……とか?
スタンドの名前は洋楽から取ることが多い。
うん、そうだね(笑)
犯人に悟らせない秘密裏の探索ってなんかワクワクしますね!
読む分にはね!
仗助の恩人で憧れのリーゼントの人の話。
原作コミックの話なんですけど、突然天の声みたいに語りかけてくるというか、小説の内容と関係ない見解を見せてくるのは正直読みながら驚きました。
時系列がバラバラなストーリー展開なので、仗助達が調査で立ち寄った場所で犯人の手がかりを得た直後にかつての怪死事件の真相がその犯人の記憶語りで読者に明かされるという……まあ、それ以前にThe Bookの能力に気付いた時点で分かってたことなので今更ではありますが。
人知れず行われた「復讐」……か。
ここでようやくパズルのピースが揃うわけですね、なるほど。
最初に犯人と遭遇したのは億泰。
ザ・ハンドvsThe Book
そして何気にThe Bookの命名シーンでもありました。
ザ・ハンドに倣ったらしい。まあ、シンプルのほうが分かりやすいよね!
億泰が頭脳戦だと⁉
もはやこれだけでジョジョ4部の読者は気になるのではないでしょうか。
失敗から学んだ野性的本能は時として緻密な計算に勝る……
なかなか見応えのある戦いだったんですけど、神聖なる図書館で空間削り取りまくった億泰は許さねぇ(笑)
クレイジー・ダイヤモンドvsThe Book
簡単に言えば、破壊力vs頭脳。
機体性能がそのまま実力差とは限らない、戦いは何も力だけではない、舌戦も立派な戦い方の1つだ。
ふむ……2人の会話の中にも出てたし、実際に最後まで読み終わった今も思うんですけど、『彼』の目的は母親の復讐で仗助達が干渉する必要があったのか?という疑問点だけが残ります。
無理に仗助と億泰が絡んだところだけ微妙というかなんというか。
いや、戦い方とか面白かったんですけどね?
つまり何が言いたいかと言うと、これはジョジョじゃなかったほうが面白かったというのが僕の率直な意見です。
もしくは類似スタンドの露伴先生&康一くんに任せたミステリー風な作風なままのほうがよかったような。
まあ、原作のほうでうやむやになった仗助の憧れの恩人についての見解を挟み込みたかったんだろうからこうするしかないのは分かりますがね……
もしかしたらそこに触れたいが為のThe Bookの能力かもしれませんね、逆算させると物語の構築がしやすい能力はこれだ!みたいな。
と言っても、僕自身が仗助をあまり好きじゃないのでそこの影響も大きいとは思います。
『彼』はいろいろ探られて復讐の妨げになるから仗助を狙って行動したのであって母親が巻き込まれたのは自分がゲームに夢中である行為を怠ったから母親が攻撃された訳じゃないですかー?
仗助ってそういう自分を棚に上げる癖ありますよね。
それでもやはり、個人的には1つ1つはバラバラの点でしかなかった謎が徐徐にジョジョに結び付いて線になり、ピースになり、繋がっていく過程が面白かったのでジョジョ4部の外伝である必要はなかったかなぁ~とは思います。
ジョジョ関係ないほうがよかったという僕の意見の根拠はもう1つあります。
本編に出てくるキャラクターやスタンドの描写、設定の話が出る以上、どうしてもジョジョ4部を見ていることが前提という敷居の高さがあります。
更にジョジョと言えばの独特の擬音はやはり漫画独特の魅せ方なんだろうな、と改めて実感しました。
面白かっただけにジョジョじゃなければ……と考えてしまった不思議なジレンマでした。
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