・タイトル
岸辺露伴は叫ばない
著者情報
『検閲方程式』
維羽裕介(イバ ユウスケ)
1987年、神奈川県生れ
2013年、Amazon Kindleで電子出版した『明浜市立東本郷中学校ポーカー列伝!』が反響を呼び、2015年、集英社より『スクールポーカーウォーズ』として出版し、デビュー。
2016年に同作を改題改稿し、新潮文庫nex『女王のポーカー』として出版。
『くしゃがら・オカミサマ担当』
吉上亮(よしがみ りょう)
1989年生まれ、埼玉県出身
職業 SF作家
日本SF作家クラブ会員、日本推理作家協会所属活動期間 2013年~
ジャンル SF
デビュー作
『パンツァークラウンフェイセズ』中高とも剣道部に所属。
文化的な活動とは無縁だったが、高校3年生の春、友人が文芸部に所属していた縁で、文化祭にゲストとして小説を執筆する。
そこで「おもしろかった」という感想を多く得たことが、創作を志す原点となった。
その後、大学ではノベルゲーム製作に2年間を捧げ、小説を本格的に書くようになったのは、東浩紀の「小説表現」の授業を受講し始めた、大学3年生になってから。影響を受けた物
冲方丁、川上稔、深見真、伊藤計劃、神林長平、飛浩隆、村上春樹(特に最初の三人)。
アーサー・C・クラーク、J・G・バラード、フィリップ・K・ディック、コリイ・ドクトロウ、ジョン・ミルトン、ジェイムズ・エルロイ。富野由悠季、押井守、北野武、小島秀夫、スタンリー・キューブリック、デヴィッド・フィンチャー、クリストファー・ノーラン、アンドリュー・ニコル、マーティン・スコセッシ、ニコラス・ウィンディング・レフン。
・本の概要
面白い漫画を描く為には手段を選ばず、リアリティを追求し続ける男が遭遇する奇妙な事象の数々とは……!?
・点数 92点
表現力☆☆☆☆☆
深み☆☆☆☆☆
芸術性☆☆☆☆☆
ストーリー性☆☆☆☆☆
読みやすさ☆☆☆
・感想
ジョジョの奇妙な冒険の4部の登場人物である漫画家・岸辺露伴を主人公にしたスピンオフ小説。
他の小説シリーズとは違い、岸辺露伴の特性上、小説にしても全く違和感のない抜群のシナジー効果があり、ジョジョを知らなくても楽しめること、4人の作家が各々エピソードを書いてある合同共作の作品。
基本的にはジョジョ×小説のシリーズの中でも屈指の出来だと思っています。
それぞれの作家さんの持ち味・作風が出ている短編小説集でもあるので、ジョジョor岸辺露伴をきっかけに好みの作家を見付けられるかも?
唯一の欠点は章毎に作家が変わる特性の弊害として、読み手にある程度の瞬発力や対応力を求められるかもしれません。
例えば、前の作家さんの話のクライマックスの盛り上がりとスロースタータータイプの緻密な計算タイプだと場合によっては擬似的な中弛み感覚に陥る可能性があります。
でも、基本的にはオススメ作品です。
以下、商品リンクを挟んで、個別に感想を書いています。
内容に触れているので、ネタバレが気になる方はご注意下さい。
くしゃがら
人生は思い通りにいかないという意味が込められた志士十五(間違ったかけ算)は尖りすぎだろ(笑)
集英社の漫画家同士の会話面白いね、片や無神経、片や神経質という対極性もまたいい。
人間としての好き嫌いと作家としての好き嫌いが違うのは分かる。
そういうの誰にでもありますよね。
芸術と商品のところはクリエーターも編集も悩むところではある。
コンプラ問題とかね。
禁止の言葉に馴染みのない言葉……更には注釈も意味の説明もなし……これは奇妙だ。
他の欲求は抑えられても知識欲だけは抑えられないってのは分かる気がします。
確かに、露伴先生の気紛れって結果的に露伴先生を苦しめてるイメージあるわ。
調べても調べても分からない言葉なのに無意識で文脈に取り入れた?
文献を探しても見つからない理由に納得。
憑き物が取れたかのようなスッキリさと引き換えに身に覚えのない注意を食らう十五でしたが、普通に受け入れてるのは人柄なのかなぁ~と思ったり。
くしゃがらの正体怖っ。
こんなもの、人類が敵う相手じゃないじゃないか……
僕なら秒速で終わるかしれません……
Blackstar.
都市伝説、スパゲッティー・マン?
気にはなる。さすがは都市伝説だ。
得体の知れないものに興味を惹かれるのは分かる気がします。
膾炙ってあんまり馴染まない言葉ですよね、その言い方じゃなくてもよくない?ってちょっと思ったり。
どの写真にも写り込む男って普通に怪奇ですね。
スパゲッティー・マンの正体エグいな。
ヒントは潮汐力、捻れですね、まさにスパゲッティーとはよく言ったものだ。
ぶっちゃけ途中から気付いてました。
この感じはお馴染みのあの財団だろうなって。
スパゲッティー・マンの正体なかなかに興味深いっていうかワクワク案件だった。
血栞塗
知りたいことに対して妥協しないのは露伴先生らしい。
類似の話には意味がない。これが露伴スタイル。
ジョジョ4部×図書館ってThe Bookを思い出します。
なんでわざわざ自ら罠に飛び込むのか……それは好奇心のせいだ。
これは分かりすぎるぐらい分かります。
好奇心と悪寒はわりと難しい2択なんですよ。
ほう、栞への攻撃が自分に返って来る……これが真っ赤な栞か、なるほどね。
予感はあったし、予想に近い働きを見せてくれましたね、図書館司書さん。
真っ赤な栞はそれ以上進んではいけないという警告のレッド……好奇心は何者をも殺してしまうということか。
好奇心という命懸けのリスクに挑むからこそ人類は進化し、繁栄するってのは一理ある。
検閲方程式
地球外文明の数を計算する「ドレイクの方程式」……うん、知らない。
ここ専門外なのでちんぷんかんぷんでした┐( ̄ヘ ̄)┌
なるほど、数字とは、あやふやな存在を誰にでも分かりやすく且つ明確にしてくれる翻訳機みたいなもの……カーッ、なるほどなぁ~、そういう解釈いいですね、いいですよ。
近森さん?の奇妙な感じはとある初期のインデックスというか禁書目録の感じに似てますね、無機質な声になるなら尚更そのイメージ。
あ、別次元とか超弦理論のほうが分かる。
解いてはいけない方程式……を通り越して近付いてはいけない方程式ってことですかね?
何となく『くしゃがら』と通じるところがありますね。
自分の意識とは関係なく思考が言語化出来てないところもまた近い…ような気がします。
絶対に近いてはいけない……だとしたら記憶を追体験するヘブンズ・ドアは……この発想は設定を活かしててよかったです。
シンギュラリティ……技術的革命。
AI……人工知能が人類の能力を越えて叡知へと至ることを指しますよね。
シンギュラリティと聞いて真っ先に浮かぶのはゼロワンでした。
オカミサマ
金銭感覚とプロ意識は落としどころが難しいですよね、露伴先生の言う取材の為なら大量に資金を投入する考えも否定は出来ないし、逆にお金が欲しい訳ではなく、ただ「読んでもらいたいだけ」ならSNSで無料公開すればいいという反論意見も一理ある。
岸辺露伴がプロである必要性か~、ムズいな。
【円】を稼ぐのはお客様が紡いだ【縁】だから縁を大事にする。
という考え方は後付けで付け加えたとしてもいい考えというか好きな表現でした。
なるほど、ハイリスクハイリターンの謎の正体は【運命操作】か、これは紛れもなくチートコードだ。
オカミサマのデメリットがエグすぎた。
これは興味本意で手を出していいものではないですね、ほんとに。
払えない対価は引き継がれる。
最悪の結末を避ける為には……
専門家のアドバイスを退けつつ、参考にして露伴が選んだ結末は漫画家としては素晴らしいものかもしれないけど、人道には反するから行為の評価は出来ないです。
でも、すごく露伴先生らしいです。
・まとめ
作家の違う5篇の物語はそれぞれ味があって面白かったです。
主役の露伴先生は共通ですが、岸辺露伴の好奇心が生み出す、もしくは捲き込まれる怪事件は世にも奇妙な物語感があるので、そういうストーリーが好きな人には本当におすすめしたい作品です!
ちなみに個人的に好きな順番は、『くしゃがら』→『オカミサマ』→『Blackstar.』→『検閲方程式』→『血栞塗』の順番です。
普段は作家さんや作品を比べてどうこうって考えるの好きではないですが、こういう企画なのであえて考えてみました。
好きな作家さん見つかるかもしれないのでこういうのもたまには悪くない……かもしれない?
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