神黎の図書館

漫画・小説・映画・アニメ・ドラマを主観によるグラフ+点数+批評+感想を綴り、作品の評価をあらゆる形で視覚化したブログです。有名な作品から掘り出し物的な作品まで生涯の内になるべく多くの作品に触れて伝えていけたら本望です。

時代も場所も異なる4つの悲劇が交差して1つの点となる:『王様ゲーム 臨場』

王様ゲーム 臨場 (双葉文庫)

・タイトル

王様ゲーム 臨場

・点数52点(小説としての評価)

表現力☆☆
深み☆
芸術性☆☆
ストーリー性☆☆☆☆☆
読みやすさ☆☆☆

・点数 55点(ラノベとしての評価)

設定☆☆☆☆
キャラクター ☆☆☆☆
ストーリー☆☆☆☆☆
構成☆☆☆
文章力☆☆

・著者情報

金沢伸明(ぱっくんちょ)

1982年 広島市呉市出身の小説家です。
大学を卒業後、IT企業に勤める傍ら、趣味として、モバゲータウンにてぱっくんちょのクリエイター名で携帯小説王様ゲーム』を執筆します(会社を立ち上げた時期と作品の投稿時期が同時期だった為、二足のわらじ状態だったようです)。

この著者の作品は王様ゲームだけですが、シリーズとして全12巻が双葉社から出版されています。

また、この作品は複数人の作家によりコミカライズされ、実写化、アニメ化などされています。

今回取り扱うのはこの中の双葉社により書籍化されている『文庫版の小説』になります。(第3作目です)

・本の概要

金沢伸明と本多奈津子のクラスで王様ゲームが行われている頃、時を同じくして、ホラーやオカルトが大好きな17歳の児玉葉月は自身の興味本意、好奇心で事件の謎を追うことにした。
やがて葉月はある廃校に辿り着き、1冊のノートを見つける。
そのノートにはもう1つの王様ゲームの経過が克明に記されていた。
さらに、葉月は夜鳴村で33年前の悲劇の真相に迫る。
異なる時間帯と場所で起きた4つ(実質3つ)の王様ゲームが交差し、1つの点になる。

・評価
仰々しいというか物々しいというか、そんな印象を受けてしまう今回のタイトル、それが臨場。
この作品の全体像を考えると、これ以上ないかもしれないタイトルですが、未読の状態だとどんな内容かの想像がしづらいというのが欠点の1つかもしれません。

この作品の売りとして1つあるのが、時代や場所すらも越えた4つの王様ゲームを紐解きながら、見えていなかった真相が見えてくる……という素材(設定)は素晴らしかったのですが、厳しめに言うと、それを扱えるレベルの文章力ではなかった。と言う他ありません。

探偵役兼全体のストーリーテラー、読者と同じ立場と目線で物語を回す狂言回し役をどう捉えるかで読み手の精神負荷が大きく変わる気はします。
好き嫌い分かれるとはいえ、キャラクターの見せ方には定評があります(僕の中で)が、今回はなかなか攻めてたなぁ~という印象です。

前作『終極』でわりと好きだったキャラクターの過去・本質(本来の性格)はむしろ嫌い。代わりに『終極』のその子のキャラクター性のモデルになっているライバルの存在等々、人が変わる瞬間をガッツリ見れる意味でもキャラクターの動かし方と見せ方は評価出来るポイントだと感じました。

構成力や表現力は微妙ながらも、キャラクター面とストーリー面で頑張ってポイント稼いで!って感じでそこは少し甘めに評価してます。


王様ゲーム 臨場
王様ゲーム 臨場

王様ゲーム 臨場 (双葉文庫)
双葉社ジュニア文庫 王様ゲーム 臨場

王様ゲーム 臨場 全4巻完結セット (アクションコミックス)
王様ゲーム 臨場 : 1 (アクションコミックス)
王様ゲーム 臨場 : 2 (アクションコミックス)
王様ゲーム 臨場 : 3 (アクションコミックス)
王様ゲーム 臨場 : 4 王様ゲーム臨場 (アクションコミックス)



・感想
何とも言い難いというのが素直な感想です。
いろんな意味で18禁かな?でも大人が読むと物足りない。
そんな板挟みにある作品と言えるかもしれません。

前作2つを合わせてここまでが王様ゲームの第1部なのかな?って思っています。
これ以降の作品を読んでないので断言は出来ませんが……。
ここから先はまた別の王様ゲーム
そんな印象を受ける終わり方でした。

ストーリーとしては3作品の中で一番好きです。
2作目の失敗を修正した感じです。
元々、読者の意見を取り入れる柔軟性のある作者さんだったのでそこは上手く取り入れて、まとめていると思います。

反面、他の全ての項目が前作2作より低い評価になりました。

バラバラだったピースを繋ぎ合わせて1つにまとめた一方で、小説としての深みはなく、表現も稚拙で、芸術性もない(下品)です。

年頃の子供には読ませたくない…って思いました。

読みやすさの点が下がったのは葉月がノートを読んでいる間が『もう1つの王様ゲーム』で、回想としてではなく、読者同様『葉月としては読んで初めて知る内容』なので脈絡もなく2つの時代が入れ替わりながら進行しているので(最後は葉月の想像で補足して伸明と奈津子の王様ゲームについて締めている)、こういう演出に慣れてないと読みづらかったり、モヤっと終わるかもしれません。

正直、いきなり出てきて勝手に想像してまとめるとかなんだコイツ……って思いましたが、レビューブログとか書評ブログも似たようなものなので強くは言えません。

葉月さんは冒頭で高校入ってからブログを書いてるって言ってたし、想像で行間を埋めちゃうし、文系なんだろうなー。

同じく冒頭で、「真面目だけが取り柄」と自己評価するほど真面目だったかは謎です。
少なくとも、それを感じさせる描写は特になかったと捉えています。

好奇心が強くて行動力があって、王様ゲームに参加したがってた割には意外と…な年頃の女の子なんだと思いました。


まとめ
あれ、文句のほうが多い?
でも、買ったことや読んだことに後悔はありません。
一応、『彼等』の結末を見届けれたのである程度満足しています。

この作品を誰に勧めるか……
終極までの王様ゲーム2作品が好きで、稚拙で低俗な表現があっても平気な方で、物好きな方ですかね、あとは奈津子が好きな人。


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