神黎の図書館

漫画・小説・映画・アニメ・ドラマを主観によるグラフ+点数+批評+感想を綴り、作品の評価をあらゆる形で視覚化したブログです。有名な作品から掘り出し物的な作品まで生涯の内になるべく多くの作品に触れて伝えていけたら本望です。

王様ゲーム 滅亡6.11

王様ゲーム 滅亡6.11 (双葉文庫)

・タイトル

王様ゲーム 滅亡6.11

・本の概要

6月11日0時、王様からさらなる命令が下された。
再び狂気の淵に落ちていく高校生たち。
日本を滅亡の危機から救うために東京の首相官邸に向かう智久と修一、
命令を自在に操るプログラム【ナノクイーン】を手に入れた蛍、
謎の少女・葉月、殺人鬼・海平……運命に導かれた5人の先に待つのは希望なのか!?
大人気サバイバル・ホラー第5弾!

・点数

総合得点 44点

表現力☆☆
深み☆☆☆
芸術性☆☆
ストーリー性☆☆
読みやすさ☆☆

・著者情報

金沢伸明(ぱっくんちょ)

1982年 広島市呉市出身の小説家です。
大学を卒業後、IT企業に勤める傍ら、趣味として、モバゲータウンにてぱっくんちょのクリエイター名で携帯小説王様ゲーム』を執筆します(会社を立ち上げた時期と作品の投稿時期が同時期だった為、二足のわらじ状態だったようです)。

この著者の作品は王様ゲームだけですが、シリーズとして全12巻が双葉社から出版されています。

また、この作品は複数人の作家によりコミカライズされ、実写化、アニメ化などされています。

今回取り扱うのはこの中の双葉社により書籍化されている『文庫版の小説』になります。(第1作目です)

・感想
簡単に言うと、緊急事態宣言直前の警戒レベルが国から発令されます的なところからのスタート。

そして、高校生という若者を動かす為に、分かりやすく「英雄」に仕立て上げる作戦を考案する官房長官
なるほど、これは一理あります。

ほぼ同時に、王様ゲームも大きく動く。
『「金沢信明」を殺した者は王様ゲームから解放する』
この悪魔の指令で、たまたま同姓同名だった「金沢信明」達の運命は大きく歪む。
ここの高校生達の行動は身の気もよだつ凄惨な行為ですが、人間は確かにこういう一面あるなって考えさせられる部分もあります。

状況が条件だけに、何が正解かは分からないけど、嘘をついたら、その嘘を貫き通す為に嘘に嘘を重ねてどんどん苦しくなるっていうのは分かります。

ウイルスに対して有効な抗体を生み出せる可能性がある者が現れたら、どんな手段を使ってでも守ろうとするのは危機管理の専門家としては当然の判断ですよね、たとえ、それが冷酷な判断でであれ。

途中から予想はしてたけど、まさかあの人の存在がここで繋がるとはね、世の中狭いもんだ。

人は理不尽な状況に対して、責任転嫁をすることがある……まさに今現在の状況に似てますよね、誰かのせいにしたって問題の解決にはならないのに……。

智恵美と智久、共に「智」から始まる名前という縁……か、なるほどね。

だから選ばれたとは言えないにしても、智久に信明の声が聞こえたのはそういう共鳴じみた何かもあるのかもしれないね?

早まった行動というか、誤った判断で先走っ た結果を後悔する蛍ちゃんは滑稽だと思っていたけど、ナノクイーンシステムが思いの外ヤバかったからすんなり行かずに苦労するぐらいでちょうどよかったって印象です。

ネットの書き込みが全て契約者の実名になるとか争いの種でしかないですよね……

勇気くんの人生について考えると、いろいろ思うところはあるけれど、こういう事例は少なからず実在するのかなって思うと悲しくもあり、寂しくもあります。

親が金持ちなだけで高級マンションに住めている……というのは他人からの視点に過ぎず、当人には人に理解されない苦難や気苦労がある訳で、妬み嫉みで貶していい案件ではない。

そして、政府を出し抜いたと喜ぶ智久と修一に対してもマイナス方面でいろいろ思うところがありますが、割愛します。

六本木ヒルズを軸に、智久&修一、蛍、広瀬達という物語のキーマンが全員出揃いつつ、ニアピンですれ違わないというのは少し面白いかもしれません。

いよいよ、蛍と主人公チームが接触

作品への期待感は正直薄いですが、蛍というキャラクターへの期待感は何気に高いです。

さあ、その一手で物語はどう動く?

海平の正体……というより、過去が明らかになったことも含めて、予告されていた「智久・修一・海平・蛍」の強い因縁の意味が分かります。

明かすの早すぎて予告した意味があったのかは甚だ疑問ですが……。

この設定自体はなかなか興味深いので、上手く活用してくれたら……と思います。

そして、この局面での智久の母親の再登場と息子との会話は人間性・親として間違っていても、家族としては正しい?

ただ、息子に生きて欲しいと願う、母の切なる願いの場面でした。

コロナ渦で言えば逆ですね、親世代のほうが圧倒的にリスク高い訳で……で、戦ってるのは国民全体だと官房長官が言ってるのもある種は共通してるのかな?って思います。

コロナ渦は世界中で渦巻いてるので、作中のように海外に逃げるなんて考えは不可能というか無意味ですが、ウイルスによって世界経済が大打撃を受けるというのは似通ってると思います。

このまま行けば日本が見捨てられる可能性があるのは東京五輪の行く末と重なる部分がなきにしもあらず……ですね。

「責任を取って辞任してくれ」

言うのは簡単ですが、重要なのは「じゃあ、誰が引き継ぐか」なんですよね、そんなハズレくじを自ら引きたがる人は恐らく政治家にはなってない。

作中で言えば、広瀬さんは悪役にもなれるし、心理に揺さぶりをかけることにも長けてそうだし、危機管理の専門家としては優秀だと思うので、急に辞任されたら後任が務まらなくてそれこそ国が終わる気がしますね、批判なんて幼稚園児にも出来ることなんだから、頭のいい大人にしか出来ない打開策・打開案を出すなり、実行するなりで結果出せばそれでいいと思います。

現金1億円を所持していなければ死ぬ。

"現金"というのがポイントね、証券じゃダメな上に直近で60歳以上の人を連れてきた人に一律10万円を配ってるから国としても資金不足……と。

どっかで聞いたことある話ですね、難しい問題だ。

生き残る為に誰かの命を奪って人間性を失いながら生きるか、自らの尊厳を守って人間として死を選ぶか……どちらが幸せなんだろう?

結局はどちらも「死」な気がしますよね、心が死ねばそれは人として生きているとは言わないのではないだろうか?

そんなことを考えさせられました。

激情型というか、思考回路が単純な蛍ちゃんは海平くんの言う通り、滑稽です。

滑稽過ぎて逆に見てて面白いぐらい。

逆に海平くんは狡猾なわりに表立って行動をせずに煽るだけなので見てて面白くはない。

化学反応が起きなければ口だけキャラで終わる危険性すらありますよね、これすらも伏線だと思っておきましょう。

高校生達は子供だから仕方ないとして、大人達のずさんな管理態勢に驚愕しました。

広瀬さんともあろう御方がその事態を全く予測してなかったのか?嘘でしょ?

予測してない、対策もしてない。なのに同じ部屋に集めて、キーアイテムを無造作に置いていたとかあり得ないでしょ……あり得てしまったみたいですが。

結構萎えました。結果にではなく、過程に…というより、根本的問題?

高校生が生き残るかそれ以外が生き残るかを高校生が決めるのはなかなか酷な話である。

が、もしも日本に高校生しかいなくなれば十中八九、他国からの侵略を受けるであろうことは分かります。それ即ち滅び……意外とよく出来た問題かもしれませんね、これはこれで。

命を懸けて、もしくは涙を飲んで…或いは歯を食い縛って全てを終わらせようとした人達を嘲笑うかのような結末ですよね、そう簡単には終わらない……というウイルスの意思なのでしょうか?

新たな生命体の誕生が意味するのは果たして何なのか。

ジェネシス……創世は本当に希望の言葉なのか?

こういう展開にしたのであれば、どう転ばすのか…手腕が試されますね。


・まとめ
信明を1部とするなら、智久は2部って感じですかね。

この作品は2部の完結編となります。
1部で明かされた事実を元に奮闘する大人が見られるのも本作の特徴です。

逆に言えば、予告のわりに活躍しない人物が5人の中にいるので、そこは萎えポイントでした。


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