神黎の図書館

主観によるグラフ+点数+感想を綴る読書感想文風書評ブログです。月間で読む漫画は150冊~200冊。小説や映像作品についてもちょこちょこと。

バッテリーⅢ

バッテリーIII (角川文庫)

・タイトル

バッテリーⅢ

・本の概要

「巧。おまえにだけは、絶対に負けん。おれがお前にとってたったひとりの最高のキャッチャーだって心底わからせてやる」

三年部員の起こした事件によって活動停止になっていた野球部。
その処分明け、レギュラー対一年二年の紅白戦が行われ、巧たちは野球が出来る喜びを実感する。
だが未だに残る校長の部への不信感を拭うため、監督の戸村は強豪校・横手との練習試合を組もうとする……。
一方、巧と豪の堅かった絆に亀裂が入って!?

青波の視点から描かれた文庫本だけの書き下ろし短編「樹下の少年」収録。

・著者情報

あさのあつこ

1954年岡山県生まれ
青山学院大学文学部卒業。
代表作
『バッテリー』、『No.6』

大学在学中から児童文学を書き始める。
『ほたる館物語』で作家デビュー。
『バッテリー』およびその続編で野間児童文芸賞日本児童文学者協会賞小学館児童出版文化賞を受賞。

・点数 80点

表現力☆☆☆☆☆
深み☆☆☆☆☆
芸術性☆☆☆☆
ストーリー性☆☆☆☆
読みやすさ☆☆


・感想
まず初めに、この作品は全6冊ある小説の3冊の感想です。

1冊毎の読み終わりの感想と、全体を読み終わっての感想で異なる部分は正直あるかと思われます。

なので、ここではあくまで、『バッテリーⅢ』に関する読んでる時のリアルタイムでの感想を中心に書いています。
作品全体を通した書評はまた改めて書く予定です。

そして、以下の感想は内容に触れているので、ネタバレが気になる方はご注意下さい。



納得出来ないことに従ってまで大人に褒められたくない、気に食わないルールに縛られてまで他者と馴れ合いたくない、このまま年齢を重ねたら自分がどんな大人になるかは考えない……
ああ、中学の頃、そうだったな、僕。
正確には高校までかな。
擦れてたんですよ、僕。
まあ、今も無駄な馴れ合いは嫌いですけどね。

だからなのか、いちいち巧に共感する節があります。

1巻のあとがきを読む限り、作者のあさのさんの感情や意図としては、「巧は常人には到底理解の出来ない天才」のはずなので、僕は特殊なのか、たまたま理解出来てしまっただけなのかは分からないですが、巧の斜に構えた態度自体にイラつくことはないので、今更ながら、この作品に対する僕の感想は世間的な常識からはかなりズレてるのかもしれません。

全く違った感想を抱いた場合は、感覚のズレを楽しんでいただけると幸いです。

部内で、部の中心人物と顧問の間で確執があり、おふざけでは到底許されない暴行事件が起きていた。
にも関わらず、首謀者達が表向き模範生だったことと受験生だったことからろくに調査せずに部活動だけ活動停止させる処分を下す学校側の対応は気に入らない。

当事者の意思や意見を無視して進んだの気持ち悪い。
こういうの実際にありそうだとも思うし。
仮に巧が背中の傷を見せていたとしても結果は変わらない気がします。
学校側の不利益になるから認めなさそう。

気に入らないし、気持ち悪いとも思うけど、ここまで来ると学校の闇として見ちゃうから怒りはないです。

処罰されない4人は贖罪のチャンスも失う訳だからそれが罰になりますよね、きっと。

かつて一世風靡してその業界にその名を知らぬ者はいない、その業界に多大なる影響と功績を起こしたレジェンド的存在というのは得てして同じ道を辿るのかもしれませんよね、妻か子供に忌み嫌われる。

その人なのかその人が関わったことに対してかはケースバイケースにしても、わりと聞く話ではありますよね、仕事や業界に全てを費やすということは家庭を犠牲にするのだから致し方ないのかなぁ~と思いつつ、家族側はたまったもんじゃないなぁ~とも思います。

悪いことしてるわけじゃないし、何なら誇れる存在としても、家族なのに遠くに感じるってことですもんね、巧のお母さんがやたら父と喧嘩するのはそういう失った時間を取り戻してる瞬間なんですよね、きっと。

純粋に子供を心配する愛は案外子供に届くもので、巧とてそれは例外ではない。
が、それと「肩に触れられること」は別である。
息子である前に投手である自負が強すぎるタイプですからね、うーん……気持ちは分からんでもない。

この場面で一番心が穏やかではないのは洋三さんか、どんな理由であれ娘の泣き顔は見たくないけど誤魔化す為に茶化してしまう、孫の将来を不安視して案じるも、野球人として気持ちは分かる。
親であり祖父である洋三さんの心の内は当人達には伝わってないんだろうなぁ~

中学野球は教育の一環。
才能よりも協調性、天才よりもチームワークが優先される。
野球は1人の力でやるものではない。

この正論に対して、真っ向から歯向かうのが原田巧という人間なのは今更案件ですね。
「俺達が全国大会に連れていってやるよ」
俺がって言わなかったから巧なりに野球は1人で出来ないことを理解はしているはず。

その上で、全国大会優勝監督にしてあげます。は巧らしい自信の表れですよね、簡単には行かないだろうけど、見てみたい。巧の行く末を。

恐らく、この場面は自信に満ち溢れて大人の言うことを聞かない態度に苛立ったり、豪のようにポカンと立ち尽くしたりする場面なんでしょうが、僕は感心の気持ちとそういう時期あったなぁ~自分。と行く末に対する興味の三本立てでした。

概要に書いてあった強豪校・横手との練習試合の打診……全国ベスト4は強豪のイメージを遥かに越えていましたが、全国区の中学と地区大会すら出てないチームか……まあ、物理的距離はとなり街でも遠すぎる存在ですよね、現実的には。

何故、そんな無謀な打診をしたのか……そこには野球人ではなく、教育者としての戸村先生がいました。
野球を通じた指導の一環、伝えたいこと……か、なるほど。

力を示す。
単純明快で効果的な作戦だ、分かりやすくて好みです。
紅白戦とはいえ、ほぼレギュラーvs1年の戦い、巧の本当の実力が見えてくるのは実は作中初めてかも?

オトムライの真意の程が分かったわけではないですが、バッテリーに穴があるとしたらそれは豪なのかな?とは少し思いました。
何故だろう?巧には苛つかないのに豪に対してはすごく苛つく。
巧は使いたくなるけど、豪を使いたいとは現時点では思えないんだよなぁ~
捕手として有能だとは思えないので。

まあ、1年で上級生より優秀な捕手なんてそうそうはいないと思うし、そこはいいんですけど、見てて気に入らないなコイツ。とは思いますね、オトムライみたいに「ガキが」って一蹴してもいいんですけど、形容し難いイラつきを感じました。

紅白戦の豪にはイライラさせられっぱなしだけど、サワこと沢口くんは健全な中学生らしさ全開で癒される。
巧も試合中はいつもより感じいいし、思ったよりチームプレイ出来るかも?って思わせてくれる振る舞いな気がします。

中学生らしくない巧の態度ですが、認めるところは認めるし、現時点の能力以上に可能性も考慮して全力でプレイする姿は個人的には好感持てます。

友情もチームワークも必要ないと考えながらも、勝つ為に必要なプレイには全力を尽くすし、プレイに集中することは野球に対する最低限の礼儀であり、グラウンドに関係ない感情を持ち込むことを許さない、そういう人間が嫌い。というのは分かりやすくて好きです。

ここに来て展西さんの評価が上がりました。
やったことの是非ではない。
損得勘定抜きで自分の意思をハッキリと伝えられるバカは嫌いじゃない。
例え、歪んでようがね。

後は、自分の為だけに野球が出来るのも凄いし、大好きなチームの為に怒れるのも凄い。
という相反する2つの事柄が噛み合えば不可能を可能に出来るのか?
頭の固い大人の圧力を突破出来るのか?
という部分は興味深いですね、

野球は1人では絶対に出来ない。
そこにも繋がるかも。

これまでもお互いがお互いを理解出来なくて小さな小競り合いはあったけど、亀裂が入る大事な衝突は確かに初めてですね、理由も納得。

天才の女房役の器としてはもうひとつ足りてなかった豪が意地の開花を見せるのか?
楽しみ。

それにしても巧は本当に良くも悪くも敵を作るのが上手い。
読みながらつくづく思うのは、巧自身が倒すべき相手もまた巧なんだろうなってことですね。
潜在下でやってるように見えるので、巧の心配はあんまりしてませんが。

自信満々のバッテリーの行方はどうなってしまうのか……次巻に続く。


さて、ここからは文庫本にのみ収録されている話の感想です。

生まれつきの病弱体質で生と死を彷徨っていたが故に幼いながらも身に付けた忍耐力と諦念力。

少し哀しくもあるけれど、その経験は青波だけのもので、そこから培われて育んだ2つの能力があるからこそ、彼は物事の本質や人の心理を突けるのだと思う。

豪速球を受けるキャッチャーの悦びって、ピタッと手中に収まる快感とバシッと来る痛みの両極端にいることを的確に見抜いてるのは流石だし、青波の視点から見ることで改めて巧と豪はただの仲良しバッテリーではないことを実感させられます。


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