・タイトル
婚約者の地位? 天才な妹に勝てない私は婚約破棄して自由に生きます
・点数 73点
掴み☆☆☆☆
読みやすさ☆☆☆☆
テーマ☆☆☆☆
総合力☆☆☆☆
・著者情報
名無しの夜
黒裄
職業 イラストレーター
・あらすじ
魔法貴族として名高いドロテア家の娘として生まれたドロシー。
彼女はどんなに努力をして魔法を身に着けても、尋常ではない魔法の能力を持つ妹と比べられ、厳格な父親と婚約者である王子に蔑まれてきた。
そんな境遇に鬱屈がたまっていたドロシーはある日、とうとう王子との婚約を破棄、貴族であることも捨てると宣言!
平民として気ままに生き始め、これまで一人もいなかった友達を作ったり、町のお店でショッピングしたりと、やりたいと思っていたことを楽しみ始めた。
すると彼女は、少しずつ周りの人間から認められていく。
ところが、まだドロシーに利用価値があると考えている父親が家に連れ戻そうと娘を捜していて――!?
・感想
選考理由は表紙の絵に惹かれたからです。
つまり、黒裄さんということになりますね。
最初に自分の立場とそれに対する不平不満、更にこれまで我慢してきた事をぶちまけてるので、何故、あらすじやタイトルにある「貴族を捨てて平民になる」に繋がるのかが分かりやすくなる構成になっていて、読みやすく、世界観にも比較的入り込み易いです。
貴族、しかも王族の婚約者という超上流階級の家柄を持つ主人公且つ、魔法が存在する世界ではありますが、全てにおいて現代社会に置き換えることが出来るので、変換しながら読むのも面白い作品でした。
主人公に対して感情移入出来るかは置いといて、貴族には貴族の悩みや苦しみがあって、しきたりが在って、窮屈な人生を強いられているのを悟らせない影の努力をしている場合があるのは凄く分かります。
辟易として平民になりたいと願う貴族は別に平民をバカにしたり、軽く見ている訳ではないと思います。
そこから学び取れるものもありますし、貴族≒お金持ちは~って一括りにする人が少しでも経ればいいのになぁ~って思います。
身の丈に合わない努力をする必要はない。って考え方もそれはそれで嫌いではない。
貴族間の話で婚約解消&家族との縁切り宣言から実質的な物語のスタートって感じですが、これって一般家庭の離婚後のシングルマザーに置き換えれるのかな?って思います。
怒りと呆れ込みで半ば勢いで縁切り宣言したり、飛び出したりした後にどうするか?みたいな。
個人的に思うこういう時に「意外と忘れがちなこと」は不平不満や理不尽はあっても、その世界で指折りの学校に通わせてくれて卒業出来たのは少なからず親の力であるということ。
一方的な縁切りって結構自分本意なケースがあるので、そこは忘れちゃいけないと思う。
直接的な内容には原則触れないのが簡易書評のルールですが、ここは個人的に納得いかない部分(考え方?)なので書きます。
Q.家を出てどうするか?
A.働いて自分で何とかする
そこはまあいいとして、本人が武器としている魔法の知識は上記の通り、親の力が影響しているわけだけど、努力したのは本人だからまあ目を瞑ろう。
問題は、質屋に買取りで王子との会食に合わせて父親に持たされた数々の宝石を売り付けたこと。
本人の希望する今生の別れにしたいならあの場で突き返すべきだし、「持たされたもの」は貰い物ではないはずなので、それは泥棒になると思います。
初期段階でのドロシーさんの考え方めっちゃ嫌い。
そもそも突然じゃらじゃらと高級な宝石を持ち込まれ、高値の値段交渉してくる若い女性って身分証明の開示が必要なんじゃないの?
犯罪に巻き込まれる恐れあり案件って捉えられても不思議ではない。
そこら辺の思慮不足を思うと、お父様が愚痴を溢すのも仕方がなかったのかもしれない。とさえ思ってしまった。
まあ、知識が力(武器)ってのは共感しますけど。
家族にもまともに相手にされず、学友もおらず、努力だけで次席にのしあがった自負だけが強みで自信ということは、裏にあるのは劣等感ってことになるからこういう凝り固まった考えになってしまうのも仕方ないのかな、とフォローは入れておく。
ああ、でもプライドは高いのか、キツいな。
ドロシーさんはちょっと目も当てられない感じだけど、知り合いの商人さんの「無駄を楽しめ」って言葉は凄く素敵だと思う。
無駄を楽しめない人は余裕のない人ってことになっちゃうから、楽しめるならば全力で無駄を楽しむべき。
「この世の中に私的じゃない話なんかない」もそうだけど、このお婆ちゃん商人さんは発想とワードセンスが素晴らしい。
世間知らずというのは本人だけの責任でもないので、0からでもマイナスからでも自ら経験をしていくことで取り返して成長出来るので、そういう意味ではドロシーさんは性格的にも伸び代満点。
チャレンジ精神の旺盛さと同じぐらい凹み易く、ネガティブシンキングな癖も慣れれば可愛いものです。
そして、メルルという名前はやはりいい子の証!!
めるる可愛い←意味が違う
女性向けラノベってジャンルって意味ではとても興味深い内容で、孤人奮闘するシングルマザーがプライドを捨てて人に頼る、チャレンジする心を諦めるチャレンジも大事。という風な考え方もあるんだよ~
って考えるきっかけになれたらいいなぁ~って思いました。
辛い時や雁字搦めになった時は誰かに頼ったり、話したりすることも検討してほしいですよね、1人で抱え込まずに、意固地にならずに。
そういう気持ちにさせてくれる側面もある作品でした。
読めてよかったです!
おまけ
おまけ2