・タイトル
バッテリーⅥ
・本の概要
「おれはピッチャーです。だから、誰にも負けません」
いよいよ、巧たち新田東中は、強豪・横手二中との再試合の日を迎えようとしていた。
試合を前に、両校それぞれの思いが揺れる。
巧と豪を案じる海音寺、天才の門脇に感情をもてあます瑞垣、ひたすら巧を求める門脇。
そして、巧と門脇のバッテリーが選んだ道とは。
いずれは…、だけどその時まで―巧、次の一球をここへ。
大人気シリーズ、感動の完結巻。
・著者情報
あさのあつこ
岡山県出身。
大学在学中に児童文学を書き始める。
『ほたる館物語』で作家デビュー。
『バッテリー』及びその続編で、「野間児童文芸賞」・「日本児童文学者協会賞」・「小学館児童出版文化賞」を受賞。
代表作
『ヴィヴァーチェ』シリーズ
『No.6』シリーズ
『ガールズ・ストーリー』
『木練柿』
・点数 80点
表現力☆☆☆☆☆
深み☆☆☆☆☆
芸術性☆☆☆☆☆
ストーリー性☆☆☆
読みやすさ☆☆
・感想
まず初めに、この作品は全6冊ある小説の最後の1冊(6冊目)の感想です。
1冊毎の読み終わりの感想と、全体を読み終わっての感想で異なる部分は正直あるかと思われます。
なので、ここではあくまで、『バッテリーⅥ』に関する読んでる時のリアルタイムでの感想を中心に書いています。
作品全体を通した書評はまた改めて書く予定です。
そして、以下の感想は内容に触れているので、ネタバレが気になる方はご注意下さい。
心境の変化が訪れた巧と海音寺の会話が地味に興味深い。
門脇を敵チームの1人としか見てない巧では、巧だけを敵対視して練習してる門脇には勝てない、どれだけ才能があったとしても……か、なるほど。
そして、オトムライは巧しか見てない門脇なら巧以外でやるという勝つ野球も示唆するのか、対外試合なのに?いや、対外試合だから?
言わんとしてることはめちゃくちゃ分かりますけどね、そちらも地味に深い。
オトムライは優しくなったと見せかけて何か別のモノを見ている?
その思惑はうっすら解る気がする。
そして、海音寺はそれを受けてどう動く?
天才且つ自信家、そして依存を嫌う原田巧は本当に永倉豪に依存してないと言えるのか?
吉貞くんがいつもの軽口で指摘したのはそういうことですよね、それを感じ取った巧はやや動揺している…と。
稀有な存在と巡り合えた幸運がもたらした変化がどう転ぶか……見物ですね、巧と吉貞くんのキャッチボール。
高校監督時代の目付きにふと戻り、元教え子を羨ましく思ったり、巧の変化をストレートに成長とは捉えない洋三さんと、相手の身内を前にしても一切態度を変えない飄々とした吉貞くんのキャラクター性いいよなぁ~
ひねくれてる場合、案外自分の本心に自分で気付いてないことあるよなぁ~
と、瑞垣くんを見てるとつくづく思います。
瑞垣くんをメインに据えると、結構ストレートに弱いんだろうなって思いますね、実はストレートが苦手だから変化球の多面待ちを見事にこなし、読みを張った状態ならストレート系も打てる。そんな雰囲気を感じました。
分かりやすく言えば、大人ぶったガキってやつですね。
そして、天才である原田・門脇よりも、策士である瑞垣よりも、純粋に野球が好きな海音寺さんが一枚上手なのかな?
永倉豪は果たして本当にワガママなのか?傲慢なのか?
その答えは巧の投げた後の感想と海音寺さんの質問への受け答えと会話で浮き彫りになります。
永倉豪は「捕手」なのか、それともただの「バッテリー」なのか?
これは豪速球投手の女房役を勤めたキャッチャーにしか分からない問いですよね、深い。
唯一凡人にも理解出来るのは、原田巧の生きた豪速球を捕るには技術力ではなく、気持ちだということ。
これは野球経験の有無は関係なく、ここまで『バッテリー』という作品を読んできた人には分かるはず。
豪の秘めざる本音の部分も見えたので、いい表現でした。
すれ違う想いというよりは交錯するバッテリーって感じですよね、恐らく、原田巧が初めて真剣に相手に気持ちを伝えようとしていて、永倉豪は傷付くのが怖くて核心に触れないように、そして近付き過ぎないようにしている……そんな感じに見えました。
なるほど。吉貞くんが巧のキャッチャーをやることで、巧vs豪の対決も実現し、吉貞という男の圧倒的センスも描けるという効果を読者に対しては生み、作中で言えば、巧の成長と更なる変化に影響を与える効果があったわけだ?
これはちょっと面白かったです、どんどん人間味が培われていくから最初期とは完全に別人ですね!
試合寸前でチームを壊しかねない行動を取った海音寺さんに驚きはないけど、彼もまた、別人みたいなもんだよなー
僕はこちらの海音寺さんのほうが好みですが。
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