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バッテリーⅠ

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バッテリー (角川文庫)

・タイトル

バッテリーⅠ

・本の概要

「そうだ、本気になれよ。本気で向かってこい――関係ないこと全部すてて、おれの球だけを見ろよ」

岡山県境の地方都市、新田に引っ越した原田巧。
天才ピッチャーとしての才能に絶対的な自信を持つ巧の前に、同級生の永倉豪が現れ、彼とバッテリーを組むことを熱望する。

「これは本当に児童書なのか!?」
ジャンルを越え、大人も子供も夢中にさせたあの話題作が待望の文庫化!!


・著者情報

あさのあつこ

岡山県生まれ。
大学在学中から児童文学を書き始める。
『ほたる館物語』で作家デビュー。
『バッテリー』およびその続編で野間児童文芸賞日本児童文学者協会賞小学館児童出版文化賞を受賞。

・点数 76点

表現力☆☆☆☆☆
深み☆☆☆☆☆
芸術性☆☆☆☆
ストーリー性☆☆☆
読みやすさ☆☆

・感想
まず初めに、この作品は全6冊ある小説の最初の1冊の感想です。

1冊毎の読み終わりの感想と、全体を読み終わっての感想で異なる部分は正直あるかと思われます。

なので、ここではあくまで、『バッテリーⅠ』に関する読んでる時のリアルタイムでの感想を中心に書いています。
作品全体を通した書評はまた改めて書く予定です。

そして、以下の感想は内容に触れているので、ネタバレが気になる方はご注意下さい。



最初がわりと暗めで気分が乗り辛い部分はありました。
ただの車で新天地に向かう引っ越しシーンなだけなんですけどね?

そのシーンの流れで、主人公の弟?にあたる子がふと口にする、「ぼくが生まれる前に死ぬなんてすごい」、「死んでから9年経ってるなんてすごい」って言うのは子供ならではの意見というか、その発想はわりといいかもなぁ~って思いました。
命日は誕生日って考え方もあるぐらいだもんなぁ~
僕は近しい人の死は引きずるタイプなので、弟くんのその感性は大事にしてほしいと思います。

生まれつき命の危険と隣り合わせで数々の病気と付き合い、入退院を繰り返す青波だからこそ嫌味なく聞こえるのかもしれませんね。

大人は知りたいことは教えてくれないのに関係ないことはペラペラ喋る……確かにね、何でだろう?
都合が悪いことから話を逸らす為の上等手段なのかな、多分。

自分が三振したのだからあれはシンカーだ。
自分が投げられない球を他の奴が投げるのは許せない。
なるほど、そう来たか……巧の性格はこの2つのセリフで十分に分かりました。
本当に、大した自信だ。

才能があるからこそ、少年野球の内に変化球を投げるのは愚の骨頂ってことか、さすが元名将。

身体が出来上がってない内に変化球を覚えると、癖になるし、肘に負担かかるし、良いことは1つもないっていうのは分かります。

真紀子さん……巧の母親なんですけど、人の話を聞かない、本質を見ようとしてないその態度を見る限り、僕の嫌いなタイプなのかなぁ~
現時点では結構イライラしました。

幼少期の巧と祖父母のくだりいいですね、好きです。
控えめに言って最高ですよね、巧もおじいちゃんに対してはわりと素直ですよね。

思春期の巧とじいちゃんの関係性は複雑というか、巧がややこしくしてるというか。
名将だった祖父に認められたいのか見てほしいのか……そんな心情の描写がありますよね、表には出してないけど、心の中でさえそこまで感情出す巧って珍しい気がする。
クールドライな印象ありましたもん。

どこか相手を和ませるところのある青波とは真逆に、発言や態度の節々に人をイラつかせる要因のある巧ですが、時折見せる意外な一面があるから憎めないよなぁ~って思います。
巧にも確かな変化はありますからね、成長の兆しは見えますもん。

野球というのは高い技術を追求していくものだから、それ以外の物は関係ない…というのも一理ある気もするし、本当に上手くなる為には相手の心理を読むことが重要なのもまた事実。
一流で止まるか超一流を目指すかの境目はこれかもしれません。

将来を考えて野球を辞めさせて勉強させたい親の気持ちも分からんでもないけどね、分からんでもない年齢になってしまったということか。

まあ、子供の人生は親のものでもないので、やりたいならやらせるべきだと思いますけどね。
好奇心なりやりたいことを我慢すると、結局引きずると思うんですよ、それがその子の子供や孫にまで連鎖することもあると思うので、子供のやりたいことや興味を持ったことには出来るだけ寄り添ってあげようよ、って思います。

巧の才能は速球やコントロールではなく、再現力の高さってことですよね、分かります。
球の速さとコントロールは分かりやすく才能なんですけど、場所や時間帯に囚われず、自分の思った所に思った球を自在に投げ込めるのはとてつもない才能ですからね。

「原田やり過ぎじゃ」
これはその通りなんですけど、巧と青波の年齢差ってたったの2歳で、巧は幼い頃から親に自分を見てもらってなくて、小4で精神的に自立せざるを得なかった。
それだけの、本当の意味ではまだ子供なので、仕方ないような気はします。

青波は気の毒ですが、無邪気さが故に人を傷付けることもあると思うので、何とも言えないですね……

巧がこんなに取り乱すのは予想外でした。
原田巧にも弱点はある。
当たり前なのに意外に思うのも不思議ですよね。


最後に
全6冊に渡る作品の1冊目でした。
個人的に好きな場面は、概要にある「関係ないこと全部すてて、おれの球だけ見ろよ」が使われた場面です。
原田巧という人物の全てが詰まっていると言っても過言ではないと思ってます。

個人的に作品や登場キャラクターに対しての苛立ちや不満、批判の気持ちは皆無なんですけど、あとがき・解説を見る限り、そういう意見も少なくはないのだと理解しました。

同時に、言われてみればその心当たりはあるな。とも思いました。

12歳とは思えない規格外の天才である巧の発言や考え方だったり、努力したってお前には無理だ。と突き放す部分は日本の教育や日本人の考え方には確かに合わないかもなぁ~と。

とはいえ、日本だとか日本人は~っていう括り方で考えるのは古いし、僕自身も嫌いなので、あさのさんが書かれているお言葉をお借りします。
「日本の教育」からすると邪道な部分があるのは間違いないです。

とはいえ、個性だったり、少数派の意見が忌み嫌われて淘汰されるほうが間違ってると僕は思っています。
まあ、僕も嫌いなキャラクターには容赦ないタイプなのであんまり強いことは言えないんですが。
実在する人物なら、分からない部分はお話聞かせてもらいたいって思っちゃいます。
相手の言い分を聞かないで勝手に判断して批判は極力したくないです。

あとがきに触れましたが、その中で、あさのさんは文庫化の際に、当時の自分と作品の未熟さ・稚拙さに気付くのと同時に、真摯さ・緊張を失っている。と書いてありますが、これって全ての業種または立場の人に言えることだと思います。

初心忘れるべからず。
初心を大事に。
初心に帰ったつもりで。
経験値の積み重ねによって成長すると共に起こり得る「慣れ」の怖さを改めて実感させられました。

そして、あとがきや解説を読みながら、「ああ、きっと自分は原田巧の解釈をはき違えてるな、あれはそんな一般論で語れる存在じゃない」と、思い直しました。

新たに読み込んだ原田巧像を意識しつつ、続巻以降は読みたいと思います。


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