神黎の図書館

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痛快コメディ!人気天才子役の腹黒い本音と芸能界の舞台裏『このゆびとまれ』

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このゆびとまれ コミック 1-3巻セット (ニチブンコミックス)

・タイトル

このゆびとまれ

・本の概要

これが子役の本音⁉超人気子役の藤江恵那は毎日お仕事で大忙し‼無邪気にでっかい野望を抱いていた。
可愛い子供の特権フル活用であらゆる芸能人を踏み台に過酷な芸能界を生きる向かうところ敵なしの小学1年生が描く痛快腹黒コメディ劇⁉

・著者情報

大澄剛(おおすみ つよし)

代表作
家族ランドマーク
このゆびとまれ
わらいだね
さんばちのおと

23歳の時にデビュー。
子供達を表情豊かに描くことに定評のある漫画家。

・点数 92点

ストーリー☆☆☆☆☆
画力☆☆☆☆☆
キャラクター☆☆☆☆☆
設定☆☆☆
没入感☆☆☆☆☆

・評価
みんなから愛される超人気子役の裏の顔⁉️が暴かれるというていで描かれる人生何周目なの?wレベルの腹黒さ、口の悪さ、痛快さが面白いコメディ作品です。概要の通りですね!
ストーリーの分かりやすさは満点。コメディながら時々ハッとさせられる奥深さも作品の魅力です。

超売れっ子人気天才子役の子供離れした卓越した演技力を表すにはコメディ作品と言えど、相当の画力が必要と言えますが……完璧でした!
瞬間的にスイッチ出来る役者は年齢問わず、天才なのです。そこを表現していたので、僕としては文句無しでした。

主人公兼天才子役である女の子が良くも悪くも圧倒的カリスマ感のあるキャラクターに仕上がっており、実在の有名人や番組をモチーフにした作品が多数出てくるのも魅力の1つです。

子役の闇を垣間見るというマネージャー視点に少しなれる作品で、面白いですし、某作品のスカウターさながらにタレントパワーを測る独特の目とか、モンスタータレントのモチーフが分かりやすい仕組みは素晴らしかったです。
その反面、実在するタレントや番組に頼った部分、主人公の天才子役の元ネタが誰なのかを探るみたいな風潮で風評被害が出かねない部分には一切のフォローがなかったので、唯一の減点箇所でした。

純粋に話が面白かったので集中して読めました。面白かったので満足感も高いです。
何なら、あの子がどんな道を選んでどんな大人になるのかを見たかったなぁ~まであります。


以下、商品リンクを挟んで、内容に触れつつ、個人的に感じた感想を書いてます。
ネタバレが気になる方はご注意下さい。


このゆびとまれ 1
このゆびとまれ 2
このゆびとまれ 3


・感想
人気天才子役は腹黒かった。
腹黒子役が野望を胸にサバイバル必須の芸能界を生き抜く為にあらゆる手段で好感度UPだったり、コネ作りをしていくコメディ&パロディの物語です。

普通に面白かったのですが、このパロディの部分が問題で、その画力的再現率と名前の法則から元ネタが何となく分かってしまうことですね。
これは良くも悪くも働く作品の特徴だと思います。
一歩間違ったら暴露本なの?って取られかねないギリギリのラインを攻めた挑戦作だとも思っています。

そして恵那さんの特殊能力(演出上過度な表現になっています)
見ただけで名前と年齢と独自に算出したタレントとしての総合能力(MAX100)が分かるEna's Eye……ポーズ的には「キラッ☆」の感じですが、スカウターみたいなもんですね、すごっ。

そして、この能力で90以上を算出すると現れるコンパクト(妄想上の演出)はひみつのアッコちゃん×妖怪ウォッチorポケモンみたいなイメージでした。
円形のアイテムを縦に開いて「GETだぜ!」って言ってるからポケモンかな?いつか「出てこい、恵那の友達!」って言ってほしかった←

子役あるあるだけではなく、売れてない、緊張で空気も読めずに司会者のアシスト(パス)もことごとく潰す芸人が人気タレントの機転でプチブレイクした時に火付け役に恩恵が特にないとか結構闇深いですよね。

つまり、彼女きっかけで駄々滑りしていたネタがブームを呼ぶ影響力を持った子役です。

そして、大人を突き動かす影響力も持っています。
事務所のゴリ押しで嫌々やっていたタレントを改心させて尊敬されたり、中だるみして視聴率が下降傾向にある現場の空気を引き締めさせて視聴率を回復させたり、子役どころかベテラン顔負けの実力とプライドと志を兼ね備えた尊敬できる存在です。

また、恵那さんがずば抜け過ぎてあれですが、同世代の子役もなかなか濃いです。
ライバル心剥き出しだったり、チャラかったり、食い意地張ってたり。
喧嘩しててもオドオドしてても「よーい」がかかれば瞬間的にスイッチが入って撮影モードに切り替わる。子供の集中力って凄い。って読んでて思いました。

恵那さんの演技論。
台本を頭に入れて読み解いて理解して初めて自分のものになる。
これが若干6歳の口から出てくるとは……


恵那さんのタレント能力はこんな感じです。
以下、妄想込みの作中出てきたパロディ抜粋(全部じゃないです)
クッキンアイドル
あしたのジョー
志村どうぶつ園
プリキュア
もしかしたらパロディ?
正直しんどい(正直めんどいという深夜番組が作中に登場)
八重の桜(ゆるふわなイメージの主演女優とその名前から推測)

中でも園長、市村こぶしさんの市村どうぶつ園の画的再現率は凄まじく、どれが誰なのか分かるクオリティなので結構圧巻です。


恵那さんを取り巻く環境は父子家庭。
娘大好きで単純で娘の仕事の為の送迎車でついでに出勤しようとするダメ親父とポンコツ中のポンコツのマネージャーに挟まれてるから腹黒で大人を下に見つつもしっかりしているのかもしれません。
結局そのバックボーンは描かれずに終わりましたが……

このポンコツマネージャー、最後にはアシスト貰って一応見せ場を作りますが、マネージャースキル皆無なくせに「恵那さんは一段ずつ下げたって感じですよね」とか無駄なところでは頭働くみたいでほんと嫌いでした。
ダメンズ好きにはオススメかも?

恵那さんは小1とは思えない発想力と語彙力なんですが、きちんと子供らしくて可愛いところもあります。
そしてツンデレです。
だから父親とマネージャーは振り回されつつも幸せそうなんだと思います(笑)


人は選ぶが、個人的に好きだった作品の特徴……ダジャレ。
九九の回で出てきた「ククッ」「…はい」
鉄棒回の「棒演技」と「藪から棒」、「生涯をかけて障害を越える」
このセンス好きです。

サブキャラにはなりますが、裏切られ続けたベテラン女優の「感謝を忘れてはいけない」の言葉は胸に刺さります。
この人が言うからこその重みみたいなものがあって、これを入れるタイミング、活かし方など、作者さんの魅せ方と構成力が素晴らしかったです。


向かうところ敵なしの天才子役の前に現れた「天下無敵」の2世子役……桃田萌々。
萌々ちゃんは恵那さんを脅かす脅威の存在にして初めて恵那さんに挫折を与える張本人……ではあるが、彼女もワケあり。

腹黒の天才vs母親の操り人形の子役の頂点を賭けた熾烈な争いが今始まる❗❗
というところでまさかの打ち切り。
せっかくオリジナリティが出せるチャンスだったのに勿体ない……


そして、番外編の主役でもある、油断できない中堅?37歳のシリアスからコメディ、番組司会までこなす個性派俳優の松田さん。
前述の「正直めんどい」の司会者でもあります。

やる気があるのかないのか分からない掴み所のない人物ですが、地味に格言が多いです。

「表なんて所詮裏の一部と裏の中に表隠す」
「努力しても絶対に埋まらないものは『年齢』、どんなに凄くても子供としか見てもらえない、だからこそ彼女は『子供』であることを武器にした」

マネージャーよりも誰よりも恵那さんのことをしっかり見て理解している……

女の強みを最大限活かして取り入ろうとすることを嫌う熱血漢っぽい若手カメラマンに、編集で切れることが「制作側の強み」と返した上で、「戦場に向かうのに手ぶらでは行かないでしょ?あったら使うでしょ、武器なんて」と返したり、

「満足は枠組みの中でしか成立しないもの」
「小数点以下に続く無限は同時に画面に映るものが全てじゃないと教えてくれる」
「それら全てを知ろうと追い求めれば求めるほど完璧からは離れていくもの」

掴み所ないから実際のところどこまでが本音か分からないのが彼の魅力だと思います。


この作品、打ち切りエンドなんですけど、作者側のコメントとしては「一旦終了」や「再開は難しい」なのでなんか事情はありそうだなーとは思います。

それと直接的に繋がるかは分かりませんが、一部の高過ぎるパロディ描写が故に読者側がまるで犯人探しのように元ネタの芸能人や子役を当てに行く、風評被害みたいなのもありそう。っていう際どい作品でもあります。

ギャグ・コメディ漫画として割り切れる以外は読むべきではない作品でもあります。
思い込みで勝手なことを言わないように。


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