神黎の図書館

主観によるグラフ+点数+感想を綴る読書感想文風書評ブログです。月間で読む漫画は150冊~200冊。小説や映像作品についてもちょこちょこと。

ミスミソウ

ミスミソウ コミック 全3巻完結セット (ぶんか社コミックス)

・タイトル

ミスミソウ

・本の概要

三角草。それは厳しい冬を耐え抜いた後に雪を割るようにして咲く花。
閉鎖的な田舎に転校してきた少女「春花」を待っていたのは凄惨ないじめだった。
あと2ヶ月で卒業という中、最悪の事件が起きる。

本格的精神破壊ホラー作品。
雪化粧に紛れた最悪の復讐劇が幕を開ける。

・著者情報

押切蓮介(おしきりれんすけ)

本名:神崎良太
生年月日 1979年9月19日
出身地 東京都目黒区
職業 漫画家、同人作家、ミュージシャン

活動期間 1998年~
ジャンル ギャグ漫画(不条理漫画)、ホラー漫画、ファンタジー漫画、青年漫画
ゲーム漫画、バトル漫画、エッセイ漫画、風刺漫画、4コマ漫画

代表作
『でろでろ』
『ゆうやみ特攻隊』
『ピコピコ少年』シリーズ
ミスミソウ
『プピポー!』
ハイスコアガール
『焔の眼』

受賞歴
ヤングマガジン月間新人漫画賞佳作
ブロスコミックアワード大賞(2012年)

祖父は直木賞作家の神崎武雄

1998年に『週刊ヤングマガジン』に掲載された『マサシ!!うしろだ!!』でデビュー。
独特の絵柄と多彩な作風を持っており、ホラーギャグなる特異なジャンルを開拓したことでも知られるがジャンルに縛られない多作な作家。

バンド『怪奇ドロップ』のメンバーであり、音楽活動や同人活動も行っていた。

・点数 100点

ストーリー☆☆☆☆☆
画力☆☆☆☆☆
キャラクター☆☆☆☆☆
設定☆☆☆☆☆
没入感☆☆☆☆☆

・感想
作品のテーマ的に面白いという内容ではないですが、メッセージ性と奥深さ、胸糞悪いながらもどこかその内容惹かれてしまう不思議な魅力を持った作品でした。
僕の個人的な解釈としては、その醜さこそが人間の真理みたいなところがあるから強烈に惹かれるのだと思います。

言うなれば、表紙でまず惹かれる。そういうパワーがあります。
作中でも様々な表現で読者の感情を揺さぶってくるので、これぞ押見作品…の例に漏れない素晴らしさがあります。
同時にメンタル結構持ってかれる覚悟をしたほうがいい程の魔力も兼ね備えた画力ですが、それもまた作品の魅力です。

大体がマイナス方向に振り切ってて、個性が強いです。人をイラつかせるほうに振り切った演出とも言えますが。
でも、それ故に惹かれます。人間だから。
読んでくと分かりますが、カリスマ性を感じるキャラクターがちらほらと。

大体は概要の通りであり、タイトルの意味も含めて作り込まれた設定と、随所に織り込まれた人間の愚かしくも愛おしい部分が見え隠れします。
この作品を胸糞悪く思う人の多さは学生時代を振り返った時のいじめを見て見ぬ振りした過去、いじめ関連で後悔のある人が多いってことなんだろうなぁ~っていうのは心理学的観点から見るとそうですよね、事の発端は思春期にありがちな些細な事だと言うのもまた……ね?

没入感は最高クラスでした。
読んでる最中は他の事考えてる余裕ないぐらい集中してたし、続きが気になりすぎて一気読みもしました。
そして、読み終わりの満足感も(作品のテーマに対して)めちゃくちゃ高いので、文句無しの満点評価です。

点数でお気付きでしょうが、個人的にはめちゃくちゃ好きな作品です。
だからと言って、大人に対して、「これ読むべき!」とする作品ではないですが。


以下、商品リンクを挟んで~ですが、
この作品の感想は完全なるネタバレを含みます。
ネタバレが嫌な方、回避したい方はここまででお願いします。
気にしない方はよければ最後までお付き合い下さると幸いですm(__)m



厳しい冬を耐え抜いて雪を割るようにして小さく咲く花、それが三角草。
別名?はにかみ草。はにかんだ笑顔が可愛い。(作中キャラより引用)

完全版は表紙のカラー絵が綺麗で好きです。

少子化の影響で廃校になる中学校と最後の卒業生、その誇りを胸に3年間苦楽を共にしてきた生徒達と卒業2ヶ月前に突然転校してきた少女との確執と精神崩壊を見事に描いた作品です。

いじめの背景と人間関係が複雑過ぎるのも作品の特徴でした。

学生間のいじめというのは大抵はスクールカーストで決まると思います。
が、クラスのボス的存在にして「野咲春花」をいじめの標的にした少女の小黒さんの感情の縺れがこの最悪の物語を生み出すきっかけになってしまったのです。
彼女だけは他の人とは違う何かがあるので作品のカリスマ的存在でもありました。

そしてこれまたややこしい問題なのが少年法ですね。
最悪捕まってもすぐ出れるとか親にはバレたくないとか後悔の念より先にそういう言葉出るのはよくないッスね。
こういう反省しない、全て人のせいにしちゃう人は逮捕して罪を与えても意味はない。だからこそ罪の重さと罰の重大さを気付かせる為の更正施設と制度が必要ってことでの少年法だと思うんですよね、償うのにも順序立てる必要があると思うんですよ……

少年法についての個人的見解は置いといて、法律とか関係ないところで物語は動きます。復讐劇なのでね。

主人公の野咲さんは家族に心配をかけないように……といじめに耐えていましたが、いじめの延長線上で起こった事件のショックで声が出なくなり、はにかんだ笑顔が可愛いと言われたその顔から笑顔が消えてしまいます。

そんな彼女が織り成す復讐劇はまさに圧巻。
鬼神の如くパワーを振るう怒りの一撃。
声と表情を失ったが故の気迫。
まさに鬼迫の印象を受けました。

きっかけは少し意外なもので、これは思春期独特の未熟な精神が故に起こった悲劇としか言えないんですけど、そんな詭弁で片付けられない凄惨さと作中で命を落とした人の数なんですよね……

狩りに行く時、人は当然、「自分が狩る側」だと思って挑むと思います。
が、果たしてそうなのか?狩る側と狩られる側が相手から見たら逆ってことはないか?ってこの作品を読みながらふと思いました。

雪化粧に紛れた最悪の復讐劇という触れ込みに違わぬ内容だと思います。

ここまでは野咲さん側に寄り添いましたが、他の人物から見たらどうなのか?
それも考えてみました。

ほとんどの事件と無関係なのに責められ、精神崩壊して命を落とすことになった担任の先生。

最初の印象からすると、いじめを見過ごして生徒の圧に逆らえていなかったダメ教師。
ですが、この人も学生時代にいじめを受け、後遺症で悪口を言われれば吐くという状態で教師になっていました。

相手が毒親とはいえ、言動に問題はありました。口も悪かったので勘違いされても仕方ありません。
偶然にも隠れ蓑の役割を果たしてしまった形ですね、過去にいじめを受けていた生徒が教師になり、自分のクラスでいじめが発生した時、そこで復讐を始める可能性……ね、有り得るとは思います。

ちなみに毒親は自分の子供がいじめられるよりはいじめる側のほうがいい。と断言するタイプでした。そして大勢に責められて家にも石?を投げ込まれ、そりゃ精神崩壊するわな……という同情の余地は有りだと思いました。

そして、作中では凄惨ないじめ描写と煽るような言動をした挙げ句、最期の間際に「野咲が転校して来なければ……」と言っていますが、それは理不尽でもあり、事実でもある。そんな複雑な設定でした。
あとはほんとにボタンの掛け違いとドミノ倒しですね、気付いた時にはもう取り返しつかない。

野咲さんと元々のいじめっ子グループのリーダー小黒さんの関係性と本音は作中で数少ないいヒューマンドラマの部分で、直前に言葉、表情、人間性を取り戻した野咲さんが事件後に初めてまともに対話をする場面でもあります。
これからそれぞれが明るい未来を進むために必要な本当にいいシーンでしたが、その後に小黒さんを襲う悲劇はもう止められませんでした。

野咲さんから家族を奪ったグループ最後の生き残り佐原。
少年法を盾にしようとしたあの子です。
野咲さんがいなければ自分が小黒さんからのいじめの標的になる。
でも憧れの存在。

この子の行動理由はいつだって小黒さんでしたね。
憧れが憎しみに変わり、ついには……です。
ちなみにこの作品最大の顔芸担当です。
余談ですが、僕が唯一嫌いなキャラ。

そして野咲さんがいじめられ始めてから精神的に支え続け、ミスミソウは野咲さんに似てると言った張本人で、野咲さんを復讐鬼から人間に戻した張本人……でありながらcrazy love精神のイカれ狂人の相場くん。

本人はその性質に無自覚なところもまたキャラクターとして立っています。
何故、そのような性質になったのかもきちんと描かれていますので個人的にはそこまで驚きも怒りもないです。
復讐劇あるあるじゃないですか、信じてた人が実は……みたいな。

ラストは予想してたのと全然違ったので少しぽかーんとしました。
実写映画と小説版は結末だけ違うらしいです。


さて、今回は結構内容書きましたが、勧められたから読んだのに後味悪いとか胸糞悪いとか言われても困るというのも多少はあります。

サイコパスとバイオレンスが両立してることを伝えた上でそれ言われたら、個人的に「は?」って返しちゃいそうなので(笑)

これは僕の中では読みやすい部類なのであえて言いますが、このジャンルに対する苦情は「全然胸糞悪くない」と「全然後味悪くない」だけだと思ってます。
サイコパスって売り込みしといて精神異常者がいなければそれは売り込んだ側の解釈不足なので謝りますが、ジャンルに違ってなければ何でもかんでも批判するのもどうだかなーと思ったりもします。

この作品は心理描写が結構素晴らしく、「いじめ」と「復讐」についてわりと正面から向き合った作品だと思います。
片側からの視点からだけではなく、結果からだけではなく、双方の視点と過程を明かしているからこそ誰も報われない哀しい復讐劇なんだなって僕は感じました。

面白半分だとか復讐だとか理由は関係なく、人の命を奪った者、或いは奪おうとした者は自分も命を落とす。
言い方を変えれば、「撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ」と同義ですね。

きちんと読めば教訓としても生きる作品だと思います。
個人的には道徳の教科書に載せてもいいレベルの内容だと思っています。
勿論、それ用に多少の改編は必要でしょうが。


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