神黎の図書館

漫画・小説・映画・アニメ・ドラマを主観によるグラフ+点数+批評+感想を綴り、作品の評価をあらゆる形で視覚化したブログです。有名な作品から掘り出し物的な作品まで生涯の内になるべく多くの作品に触れて伝えていけたら本望です。

呪われた出生:『奇子』

奇子 1

・タイトル

奇子

・本の概要

呪われた出生という生まれながら背負わされた宿命に弄ばれた奇子という女性を媒体に、地方旧家、一族の闇、戦後の闇を描いた作品です。

・著者情報

手塚治虫(てづか おさむ)

本名:手塚治(てづか おさむ)
1928年(昭和3年)11月3日-1989年(平成元年(2月9日)

兵庫県宝塚市出身(出生は大阪府豊能郡豊中町、現在の豊中市)。

職業
漫画家、アニメーター、アニメーション監督。
大阪帝国大学附属医学専門部を卒業後、医師免許取得、のち医学博士(奈良県立医科大学・1961年)。
血液型A型。

称号
勲三等瑞宝章

活動期間
1946年-1988年

ジャンル
少年漫画
少女漫画
青年漫画

代表作
『新寶島』
ジャングル大帝
鉄腕アトム
リボンの騎士
火の鳥
どろろ
ブラック・ジャック
三つ目がとおる
他多数

受賞歴
第3回小学館漫画賞(『漫画生物学』『びいこちゃん』)
第1回講談社出版文化賞児童まんが部門(『火の鳥』)
第28回ヴェネツィア国際映画祭サンマルコ銀獅子賞(劇場アニメ『ジャングル大帝』)
第4回日本漫画家協会賞特別優秀賞(『ブラック・ジャック』)
第1回広島国際アニメーションフェスティバルグランプリ(『おんぼろフィルム』)
第21回文藝春秋漫画賞(『ブッダ』『動物つれづれ草』)
第1回講談社漫画賞少年部門(『ブラック・ジャック』『三つ目がとおる』)
第29回小学館漫画賞(『陽だまりの樹』)
第10回講談社漫画賞一般部門(『アドルフに告ぐ』)
第10回日本SF大賞特別賞受賞
第19回日本漫画家協会賞文部大臣賞
アイズナー賞

戦後の日本においてストーリー漫画の第一人者として、漫画の草分け的存在として活躍します。

大阪帝国大学附属医学専門部在学中の1946年1月1日に4コマ漫画『マアチャンの日記帳』(『少国民新聞』連載)で漫画家としてデビュー。

1950年に漫画雑誌に登場し、『鉄腕アトム』、『ジャングル大帝』、『リボンの騎士』といったヒット作を次々と手がけます。

1963年、自作をもとに日本初となる30分枠のテレビアニメシリーズ『鉄腕アトム』を制作し、現代につながる日本のテレビアニメ制作に多大な影響を及ぼします。

1970年代には『ブラック・ジャック』、『三つ目がとおる』、『ブッダ』などのヒット作を発表します。

また、晩年にも『陽だまりの樹』、『アドルフに告ぐ』など、青年漫画においても傑作を生み出す。
デビューから1989年まで第一線で作品を発表し続け、「マンガの神様」として語り継がれます。

・点数 88点

ストーリー☆☆
画力☆☆☆☆☆
キャラクター☆☆☆☆☆
設定☆☆☆☆☆
没入感☆☆☆☆☆

・評価
純粋に闇が深い作品であり、全3巻でありながら、1巻、2巻、3巻で毛色の違うストーリーになっており、分かりやすいとは言い難いストーリーでした。

奇子の成長とそれに伴う周りの者の感情表現が見事で、これが手塚先生の本気か……と痛感しました。
読んでで頭とか心がおかしくなる可能性すら秘めた画力と言っても過言ではないかもしれません。

むしろキャラクターの役割こそがこの作品の真骨頂である。ということだけお伝えしておきます。
とあるキャラクター(ここで伏せても概要に書いてます)がその魅力故に人の人生と自分の人生を翻弄される模様が作中で描かれています。
読んでいる内に、その人の虜になってしまう読者や、振り回されてしまう読者もいるかもしれません。
そのポテンシャルは十分あります。

細部まで、そして最後まで、練りに練られた世界観とブレないテーマもまた、この作品の魅力です。
昭和の時代の…戦後の闇を正面から描いている作品と言えると思います。

迷いはしましたが、没入感は満点評価にしました。
戸惑った部分、衝撃だった部分、諸々を含めて、読んでいる最中は間違いなく作品の虜になっていたからです。

読んでいる最中に読者の人格や心に何かしらの影響を与える可能性のある結構ダークな話です。
太宰チックと言えば分かりやすいのでしょうか?
青年コミックとして書かれた意味がすごく解る気がします。


以下、内容に触れつつ、個人的に感じた感想を書いています。
ネタバレが気になる方はご注意下さい。


奇子 1
奇子 2
奇子 3


奇子 手塚治虫文庫全集(1)
奇子 手塚治虫文庫全集(2)


・感想
噂に聞いてた問題作です。
漫画の神様が描いた闇全開の作品はなかなかに興味深い内容でしたが、両手離しで「面白い!」というものではないですし、大袈裟ではなく、吐き気を催す邪悪を読みながら感じたので読むのであればそれなりの、もしくは相当の覚悟が必要かもしれません。
こればっかりは読者の感受性…感性次第なので一概には言えませんが、内容としてはなかなかハードなものです。

真っ黒な内容に柔らかい絵柄という奇妙な世界観は案外クセになるもので、独自の世界観に誘われる感覚でした。

短い巻数ながら内容が内容だけになかなか読み応えがありました。
反面、時代の流れが激しいので読者側が置いてきぼりになるかもしれません。
もしかしたら思考力を天才の手塚先生に合わせられる人のみが真にこの作品を読解出来るのかもしれません。
僕はざっくりと理解してる程度なので、その域には至れませんでした。面目ない…です。

この作品は元々人に勧められた作品でした。
ネットの感想とかレビューとかでは奇子がエロ過ぎるとか、ラストの後味が悪すぎると書かれているのを見たことがあります。

僕の個人的な感想としてはどちらも思いませんでした。
確かに奇子は常識から逸脱したストレート過ぎる愛情表現をしますが、育った環境等を考慮すると、エロいって表現は違う気がします。
どちらかと言うと美しさや神秘的なイメージに近いものを感じました。

また、奇子を可哀想とも思いませんでした。
だって奇子自身が認識してないのに勝手に周りが可哀想な子だと決め付けるのはおかしくないですか?
奇子奇子なりに彼女らしく行動してただけだと思うので、僕はむしろ立派に感じました。

ラストについてはネタバレになっちゃうので伏せますが、元々がダークな雰囲気あるのでそんなに驚くこともなく、わりとすんなり受け入れられました。

これも個人的な意見ですが、人に勧めるような作品ではないと思います。
読んだ人によって捉え方が変わりそうなのでそういう意味では面白い作品だと思います。

人に勧めるのは違うと思いましたが、すごく読んでよかった作品だと思いました。
普通に生きてるだけでは知れないことが描かれているので。


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