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漫画・小説・映画・アニメ・ドラマを主観によるグラフ+点数+批評+感想を綴り、作品の評価をあらゆる形で視覚化したブログです。有名な作品から掘り出し物的な作品まで生涯の内になるべく多くの作品に触れて伝えていけたら本望です。

奇跡の小学生・染谷輝一と甲斐慶一郎の人助け活動記の是非『キーチVS』

キーチVS コミック 1-11巻セット (ビッグコミックス)

・タイトル

キーチ VS

・本の概要

奇跡の小学生・染谷輝一が起こした国会議事堂前占拠事件から10年。
大人になった染谷輝一と甲斐慶一郎はNPO法「キーチズ・カンパニー」を設立し、「真っ当でいろ」というモットーの元、様々な人助けを行っていた。
しかし、運命が輝一に安寧を与えるはずもなく…

・著者情報

新井英樹(あらい ひでき)

生年月日 1963年9月15日
出身地 神奈川県
明治大学卒業

漫画家を目指すために文具会社を退職し、作品の投稿を始める。
ちばてつや賞入選などを経て、1989年に『8月の光』がアフタヌーン四季賞夏のコンテストにおいて四季大賞を受賞しデビュー。
デビュー当初は非常にソフトで柔らかいタッチだったが、後に反社会的な表現を多用する現在の特徴的な作風になった。

第38回(1992年) 小学館漫画賞青年一般部門受賞『宮本から君へ』

ゼロ成長論を提言した経済学者の下村治の「経済成長よりも完全雇用がそれに先立つ」という考え方を素晴らしいと思ったと語っている。

・点数 80点

ストーリー☆☆☆
画力☆☆☆☆
キャラクター☆☆☆☆☆
設定☆☆☆☆
没入感☆☆☆☆

・評価
作品としては一貫していて、ストーリーは奥深い。でも、分かりやすいとは言えないどころか難解な部類に入ると思います。
染谷輝一という人物を概念として見た時、彼を変わったと取るか変わらないと取るのか、変わったのは輝一なのか世間なのかを問う内容と言っても過言ではないと感じました。

新井作品が持つ画のパワーが遺憾なく発揮されています。

世間を巻き込み、法人カンパニーとなったことで輝一を取り巻く環境は前作以上に複雑化しています。
その分、役割も明確になり、個性が出ています。

世界観の設定というよりは人間関係や人の持つ感情に注視されていて、前作を前座にしてまで作者が作品を通じて伝えたかったメッセージはこれか。と納得する圧巻のラストでした。
ただ、途中ごちゃごちゃし過ぎて分かりやすいとは言えないのでちょっと減点。

前述の通り、ラストは納得しているので、個人的な読み終わりの満足感は高いです。
前半の引き込まれる輝一のカリスマ性も健在で、気になる引き寄せ方は見事でした。
減点箇所は中弛み部分があること。
ただし、この中弛み箇所は染谷輝一にとっては決して欠かせない部分なので、文句はないです。
文句はないけど、途中辛かったなぁ~って思ってるので減点はしました。


以下、商品リンクを挟んで、内容に触れつつ、個人的に感じた感想を書いています。
ネタバレが気になる方はご注意下さい。


キーチVS (1) (ビッグコミックス)
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・感想
前作と比べると、ストーリー性ダウンの画力アップって印象です。
採点項目の画力(がりょく)ではなく、画力(えぢから)ですね。

ですが、さすがの新井作品、メッセージ性はかなり強いです。

染谷輝一という存在と概念や輝一については前作から変わりないので、説明は省きます。
分からない場合は前作のレビュー記事を読んでいただけたらと思います。

前作の時点で、政府に反する勢力でありながら国民からの支持を受けている特殊な存在でしたが、今作では最初の時点で民衆が見てる前で犯罪者を庇う大胆さでその在り方が進化しているように思えます。
困っているなら助ける。それが輝一だ。と言わんばかりに……

そして、回を増すごとに、輝一を取り巻く環境も大きく変化することになります。
支持は批難へ……それでも支持する人は過激派へ……その様子はまさに宗教と言えそうです。

親友であり、相棒でもある甲斐くんとの別行動もなかなかにエモーショナルな演出に仕上がってます。
お互いを想いあってる親友なのに仲違いする意味とは……友達としてなのか、革命家としてなのか、その生き方の意味を考えさせられる内容でした。

終盤になるにつれ、輝一が戦っているモノは果たして何なのか?
世間が求めているのは染谷輝一なのか、キーチくんなのか?
輝一が輝一をやめた時に起こる現象と弊害とは?
等、怒涛の展開でストーリーが進みます。

最後のシーンは1人の人間の生き様、存在価値の是非を問う内容なので、読者側の考え方次第で読み終わりの感想は大きく左右される作品なのだと思います。

キーチVSに限らず、『キーチ』という作品を通じて伝わってくる気迫があり、読者に訴えかけてくる確かな想いがあると思います。

誰かが人生を懸けて行動しても、その「信念」はねじ曲げられてしまうかもしれないし、英雄と称される人物と蛮行と称されてしまう人物は紙一重なんだろうなって作品を通じて思いました。

結局は受け取り方次第なのだから、変わるべきは民衆ということですね、都合のいい時ばかり英雄を利用しようとして利用価値がなくなれば手の平返しで叩く人種こそが悪だと分かる作品だと思いました。

では、悪を生み出さない為にはどうするべきか?
それは各々がきちんと考えて出すしかないと思います。
この作品は考えるきっかけをくれるにはなりますが、答えをくれる訳ではありません。

ですが、素晴らしい問題提起でした。

そして、漫画ならではの画力はここぞの場面で発揮してきます。
テーマのわりには読みやすい部類の漫画だったと思います。


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