神黎の図書館

主観によるグラフ+点数+感想を綴る読書感想文風書評ブログです。月間で読む漫画は150冊~200冊。小説や映像作品についてもちょこちょこと。

同じ月を見ている

[まとめ買い] 同じ月を見ている(ヤングサンデーコミックス)

・タイトル

同じ月を見ている

・本の概要
ある夜、ひとりの少年が1本のペンを手に、少年院から脱走した。
その男の名は水代元。
2年前の忌まわしい事件の犯人として捕まり、少年院に収容されていたのだ。
元は、幼い頃から絵を描くのが好きで、人の心の中に浮かんでいることを絵にできる不思議な少年であった…。
数えきれないほどの不幸を背負いながらも、全身全霊で真実の愛を貫き通す男・ドンが見せる、切ないほど逞しい青春像、すれ違う2人と3人の純愛を描く青春劇。


・著者情報

土田世紀(つちだ せいき)

生年月日 1969年3月21日
出身地 秋田県平鹿郡大森町

職業 漫画家
ジャンル 青年漫画
代表作
同じ月を見ている
編集王
受賞
ちばてつや
四季賞

幼い頃はそれほど漫画を読んでいたわけではなく、姉や友人が買ったものを読ませてもらう程度で、数を読むようになったのも漫画家としてデビューした後だった。
絵に関しても近所に住んでいた人から基礎を教わった程度だったが、絵を描くことはむしろ得意な方。
漫画らしきものを描き始めたのは高校生になってからで、その頃からクラスの仲間に見せてまわっていた。また高校時代の土田には自分の描いた不良たちのような一面もあり、「気合いの入った」髪型にするだけでなく、飲酒運転や無免許運転で捕まることもしばしばだった。
高校2年生の時に、ニューヨークを舞台にした青春ストーリーを『漫画アクション』の新人賞に応募し、奨励賞を受賞。

1986年、『残暑』にて『モーニング』ちばてつや賞一般部門・入選を受賞。
『未成年』にて『月刊アフタヌーン四季賞を受賞。
『未成年』の舞台は東北であり、都市に対置される地方人の「泥臭さ」をテーマとして意識するようになる。
実際に土田はインタビューで「僕が何を描いても泥臭くなっちゃうと思うんですよ。特に舞台がどこっていうのを意識しているわけじゃないんだけど」と語っている。

俺節』、『編集王』、『ギラギラ』、『同じ月を見ている』など、ヒットが続き、1990年代半ばには一週間に2日しか家に帰れない日々が続いた。
同じ月を見ている』で、平成11年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。

作風
土田自身が「泥臭い」と自嘲するように、その作風はしばしば時代錯誤的であったり「反トレンド」だとされている。
世間や大勢に反発する登場人物たちは、涙や怒りを我慢しないが、それは単なる一手法ではなく、「人は本気で泣いたり笑ったり出来るし、そうしたいと思っている」という土田の哲学によるものである。
ストーリーが時代に逆行するような泥臭い展開をみせても、読者はそこに溢れる感情の流れに快いカタルシスを感じてしまうのである。

この横溢する感情は作画によっても表現されている。
例えば夏目房之介は、土田の描く服のシワや顔の陰影が、「非常にしつこい」上、「演歌のような」重さがあることを指摘し、それが主人公の感情やコマの流れと連動して、巧みに(鉛筆によるデッサン画からほとんど白っぽい画面まで)軽重が変わりカタルシスにつながると述べている。
夏目によれば、このように絵と感情とを同期させて凝縮し、読者を「掴む」ことこそ土田の真骨頂である。

少年時代に特に漫画を読んでたわけではなく、漫画家の友人も特にいない土田が好む作家は宮沢賢治であり、しばしば作中にも登場している。

浜田省吾の大ファンとしても知られ、『俺節』に浜田をモデルとしたキャラクター「浜田山翔」が登場する他、1998年〜1999年にはファ
ンクラブ会報の表紙漫画を担当していた。

・点数 92点

ストーリー☆☆☆☆
画力☆☆☆☆☆
オリジナリティ☆☆☆☆☆
テンポ☆☆☆☆
熱中度☆☆☆☆☆


・感想
同じ月を見ている』の主人公の水代元は宮沢賢治がモデルであり、作品の中にも、自分を勘定に入れない生き方(『雨ニモマケズ』)や、この身を何度焼かれたって構わない(『銀河鉄道の夜』)、世界全体が幸せにならない内は、個人の幸せはありえない等、宮沢賢治の詩や言葉を引用しています。
直接の引用だけでなく、「自己犠牲」といったテーマにも共通するところがあります。

最初に触れておきますが、GOOD ENDとは言い難い内容なので、物語に綺麗さ、整合性を求める方には合わないかもしれません。
決して後味の良くない悲運な物語だと思います。

悲運とは言っても、それは第三者視点なので、主人公であるドンちゃんにとっては満足のいく人生だったのかもしれません。
それは読者毎の解釈でいいんだと思います。

この作品を通じて考えられるのは人の持つ業と闇でした。

家柄や育ちや出来によって幼少期から虐げたり、差別するのは人道的に如何なものか?とか、罪を他人に、それも友人に被られて償う機会を封じられてしまっては人格に歪みが生じてしまってもある程度は仕方ないのではないか?とか、作中で何度も訪れますが、善行や自分の思ったままの行動とはいえ、待つほうからしたら堪ったもんではないだろうな…ってことだったり、俯瞰的に見て「人間性」を考えさせられたり、見つめ直させてもらった作品でした。

ドンちゃんは汚れなき純真な心を持ち、対峙した時に自らの心や本当の姿を暴かれてしまうので、反応も人それぞれで、それもすごく人間らしかったです。

純粋で在るがゆえにある程度予測しやすい方向に物語は動きますが、想定を越えてきた結末には脱帽の限りでした。
誰かの犠牲なくして世界は回らないんだろうなって実感させられます。

決して美しくはない、芸術性よりも泥臭さを描いた土田ワールドを是非ともご賞味あれ。


ドラマ

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