・タイトル
岸辺露伴は戯れない
著者情報
【幸福の箱】、【シンメトリー・ルーム】担当
吉上亮(よしがみ りょう)
1989年生まれ、埼玉県出身
職業 SF作家
日本SF作家クラブ会員、日本推理作家協会所属活動期間 2013年~
ジャンル SF
デビュー作
『パンツァークラウンフェイセズ』中高とも剣道部に所属。
文化的な活動とは無縁だったが、高校3年生の春、友人が文芸部に所属していた縁で、文化祭にゲストとして小説を執筆する。
そこで「おもしろかった」という感想を多く得たことが、創作を志す原点となった。
その後、大学ではノベルゲーム製作に2年間を捧げ、小説を本格的に書くようになったのは、東浩紀の「小説表現」の授業を受講し始めた、大学3年生になってから。影響を受けた物
冲方丁、川上稔、深見真、伊藤計劃、神林長平、飛浩隆、村上春樹(特に最初の三人)。
アーサー・C・クラーク、J・G・バラード、フィリップ・K・ディック、コリイ・ドクトロウ、ジョン・ミルトン、ジェイムズ・エルロイ。富野由悠季、押井守、北野武、小島秀夫、スタンリー・キューブリック、デヴィッド・フィンチャー、クリストファー・ノーラン、アンドリュー・ニコル、マーティン・スコセッシ、ニコラス・ウィンディング・レフン。
・本の概要
杜王町在住の人気漫画家・岸辺露伴。
自らの作品を読んでもらうためには一切の妥協を許さず、あらゆる犠牲も厭わない男が、見えざる引力に誘われてめぐり逢う、謎めいた怪異の数々とは……!?
『岸辺露伴は動かない』シリーズ待望の短編小説が完全無比のクオリティで登場!!
・点数 84点
表現力☆☆☆☆☆
深み☆☆☆☆☆
芸術性☆☆☆☆
ストーリー性☆☆☆☆
読みやすさ☆☆☆
・感想
3人の作家がリレー形式でそれぞれの作風で描いた短編小説版『岸辺露伴』シリーズ第2弾。
前作と比べると、整合性よりもミステリー色強めでした。
完成度としては前作のほうが上に感じましたが、そこら辺は好みの問題です。
ネタバレ考慮だと前作の評価と大幅に被るので割愛します。
気になる場合はお手数ですが、前作の記事をご覧下さい。
gamemachine-alternativeshinku.hatenadiary.jp
以下、商品リンクを挟んで、内容に触れながら個人的に感じた感想を書いています。
ネタバレが気になる方はご注意下さい。
幸福の箱
亀仙人と孫悟空の間にロロノア・ゾロを置くセンスは確かにピーキーだ。
奇妙な箱とかはめられたとかではなく、スタンド案件なのか?
壊された物が持つ歪さがないというのはなかなか重要なヒントかも?
露伴が解き明かす前に幸福の箱の正体が分かったかも。
この箱はヤバイね、もしも自分が選ばれたとしたら終わりだと思う反面、どういう構築になるのか気になります。
うーん、情報量が少ないから確実性には欠けますが、恐らく、千波さん好きなタイプです。
天国の扉と鍵……あーね?
愛し合ってはいるのにお互いの求める幸福が違いすぎて上手くいかない、すれ違う。
まあ……奥さんヤンデレだしなぁ~
哀しくも興味深い案件でしたよ、幸福の箱。
夕柳台
露伴先生は相変わらず性格クソだね(笑)
そして、子供にも容赦がない。
露伴先生、また好奇心に負けるのかい?
まあ、でも、リアリティを求めた結果なら仕方ないか。
見えない猿に怯える少年……か、スタンドなのか、イマジナリーフレンドなのか、はたまた……
面白い漫画を描くのに必要なのはアイデアではなくリアリティってのは分かるかも。
漫画、小説、ドラマ、映画、動画限らずに言えるのは、バズる為に必要なことは、独創性より共感力なんだと思います。
流行らせたいならやりたいことをやるよりも、より多くの人が共感する出来事を作品に反映させればいい。
露伴先生が言ってるのもその範囲にあると解釈してます。
お爺ちゃんっ子だった身としてはけっして愉快な結末ではなかったですが、罪と悪の違いとかは興味深い感じはしました。
そして、夕柳台の雰囲気は僕も好きなので、こういう場所行ってみたいです。
シンメトリー・ルーム
ここに来て本格ミステリー?殺人事件とはね、しかもモツなしアジの開き…
全てがシンメトリーな人間って果たして存在するの?
それはもう人間としては歪ですよね。
シンメトリーに拘るあまりにアシンメトリーを認めない。
そして、自分の美学を他人にも押し付ける……うん、これは確かにプロじゃないね、プロとしては失格の迷惑な奴だ。
そんなクレイジーな奴を相手に、シンメトリーを崩さずに脱出することって果たして可能なのだろうか……
全てがシンメトリー。空気の流れすらシンメトリー ……ん?空気の流れがシンメトリーってどんな原理だ?私、気になります!
と、疑問に思われるのも想定済みなのでしょう…疑問に感じるのとほぼ同時に説明してくれてくれるから親切設計だ。
シンメトリーな文字しか使えない環境下で対応する辺りはさすが露伴先生というかさすがプロって感じでした。
「読んでもらうため」に漫画を描くことと、「読ませるため」に漫画を描くことは違う。
そう、違うんだ。これが分からなければプロじゃあない。
心持ちがプロではないからそういう結末になるんでしょうね、所詮はその程度…同感です。
楽園の落穂
食べた人間の体質を変える「楽園の落穂」
それもどう変化するかは食べた人間次第で、その人に合った変化をする…か、ほう、興味深い。
そして、そんな興味深い代物を岸部露伴が口にしないわけがない……と。
まあ、そうだろうね。
あの露伴先生が食べた幸福感を人に伝えたくなるだと?
どんなカラクリを仕掛ければそうなるんだ……
子供を巻き込まない為に好奇心を自制するとは……この露伴、何かが違うね。
展開というか描写、様子的にその予感はあったけれども、ここまでとは……まさに異形と言えると思います。
ヘブンズ・ドアの打ち消しってケースは初めてかもしれませんね、脳波に異常を与えてそれが肉体に作用してるのかな?
なるほど……「楽園の落穂」の正体が分かってしまえばそれは哀しき宿命を帯びた生物でしかなかった。
ヘブンズ・ドアが掻き消されて書き換えられる理由も納得。
そして、露伴の喩えもまた美しかった。
この話はミステリーなのかSFファンタジーなのかホラーなのかその全部なのか……はたまたリアルなのか……そういう観点から見てもなかなか興味深いお話でした。
まとめ
今作の好きな順番は、
楽園の落穂→幸福の箱→夕柳台→シンメトリー・ルームです。
面白さよりは興味深さ重視の順番なのですが、最後に読んだからとかではなく、楽園の落穂はテーマ性が本当に好きでした。
このテーマで論文書いてる人いたら読ませてほしいレベルです。
関連商品
おまけ
おまけ2
検索で引っかかったおまけ