・タイトル
不能犯
・本の概要
数々の変死事件現場に現れる謎の男・宇相吹正。
しかし、誰も彼の犯罪を証明することが出来ない。
人は彼を、犯罪を立証することが出来ない容疑者「不能犯」と呼ぶ…。
憎悪、嫉妬、欲望、そして愛……
宇相吹は依頼人の歪んだ思いに応え、次々と人を殺めていく…。
戦慄のサイコサスペンス開演!
・著者情報
原作 宮月新 漫画 神崎裕也
宮月新
宮月新(みやつき あらた)
職業 漫画原作者
活動期間 2013年~
ジャンル 青年漫画、サスペンス
代表作(どちらも原作担当)
『不能犯』
『シグナル100』2013年、『グランドジャンプ』10号にて『不能犯』の連載が開始され、原作を担当。
2015年、『ヤングアニマル』の新連載攻勢第1弾作品として15号より『シグナル100』の連載を開始。
2019年8月、『シグナル100』の実写映画化を記念して、スピンオフ作品である『シグナル100 零』の連載を『マンガPark』にて9月5日より開始。
2019年9月、『ヤングアニマルZERO』にて、創刊号より『去勢転生』の連載を開始(後にヤングアニマルに移籍)。
2020年2月、『マンガPark』にて『救い給え、殺り給え』の連載開始。
心理戦や催眠術をテーマにした原作漫画が多いのが特徴。
神崎裕也
神崎裕也(かんざき ゆうや)
出身地 熊本県
職業 漫画家
活動期間 2001年~
ジャンル 青年漫画
代表作
「ウロボロス -警察ヲ裁クハ我ニアリ-」2001年25歳の時に第5回ヤングジャンプ月例MANGAグランプリにて「ツキノマホウ」が佳作と月間ベスト賞を受賞。
数度の読切を経て、2005年に『亜熱帯ナイン』で『週刊ヤングジャンプ』に初連載。
・点数 100点
ストーリー☆☆☆☆☆
画力☆☆☆☆☆
キャラクター☆☆☆☆☆
設定☆☆☆☆☆
没入感☆☆☆☆☆
・評価
人間の心理の真理を題材にした作品であり、事件への関連の証明・刑の執行が共に不可能な犯罪、所謂不能犯を主人公とした心理に直接響く衝撃作です。
ちょっと難しい心理学的な要因等の話も出てきますが、丁寧に説明してくれるので分かりやすい部類だと思います。
それでも億劫に感じるなら難しいところを読み飛ばしても多分何とかはなります。
そういう風に造られていたと思います。
そして、それぞれのエピソードタイトル毎に違ったアプローチで仕掛けてくる人間の深層心理が奥深くて興味をそそられた作品です。
画力に関しても申し分なく、分業制の強みを大きく感じました。
一見するだけでは何を考えてるか分からない、本心が分からない、平気で思ってることと逆の事をする・言う人間達の愚かさ・愛おしさ・面白さを見事に表現しています。
表情の変化が凄くて、二面性を描くのも、心のエラーを描くのも天下一品でした。
メインの主人公、その対極に位置するライバル役兼もう一人の主人公も魅力的なカリスマ性の持ち主ですが、何より特筆すべきだと感じたのはエピソード毎に異なるそれぞれのゲスト主役のそれぞれが見事に輝いてることです。
さすがにネタ切れになりそうなところも乗りきり、作品としての魅力を底上げする全ての出演キャラクターと描き切った作家陣に拍手と賛辞を送りたい程です。
主題的に当たり前なんですけど、緻密に作り込まれ、計算で愚かさを演出し、尚且つ初っ端から攻めてきた斬新さを評価して満点評価です。
正義と悪の定義を心理学的な観点から付いた哲学も見所。
心理戦と催眠術なんて結構見尽くしてきたのに熱中するほどに面白く、終始満足感のある終わり方でエピソードを繋げ、続きを手に取りたくなる最高レベルの作品でした、
以下、商品リンクを挟んで、内容に触れつつ、個人的に感じた感想を書いてます。
ネタバレが気になる方はご注意下さい。
・感想
単刀直入に言うと、めちゃくちゃ好みの作品でした。
人間の愚かさ、醜さ、哀しさ、愛おしさを様々な角度から描いているのもよきでした。
原作者・宮月さんの得意分野、心理戦と催眠術は遺憾なく発揮されています。
心理学に基づいた催眠術、マインドコントロールを駆使して犯行・依頼の遂行が行われる設定の為、原理の説明の際に様々な心理学用語が出ます。
聞き慣れなかったり、難しかったりしますが、結構核心を付いていることもあり、非常に勉強になる部分があります。
そんな立証不可能な犯罪者、宇相吹正を追えば追うほど闇に堕ちていく。
真っ直ぐで熱いハートと正義感を持った熱血刑事ですらも、正義と悪の狭間で揺れ動く。
正義とは何か?悪とは何か?
正義は存在するのか?
それすら思い込みなのか?
正義を捨てなければ止められない悪が存在するとしたら正解は何なのか?
正義絡みで問いかけられる問題は山積みでした。
また、共感力が高いと破滅に向かってしまう可能性があることも哀しく、時に切なく描いています。
クライマックス場面では、悪の概念と正義の象徴の正面衝突が描かれます。
見出だした答えについては、衝撃を受ける方と予想の範疇という方の半々だと思います。
僕は後者でしたが、とても楽しめました。
結末は賛否両論分かれるかもしれませんが、この作品らしく、話の流れからして最も自然な形だと感じたので、僕はとても好きです。
大筋のストーリーは不能犯の宇相吹を逮捕したい多田刑事と、「死ぬ為に生きている」という理由から「自分の能力が効かない≒自分を殺せる稀少な存在」として多田刑事に執着する宇相吹さんのいたちごっこなのですが、
宇相吹・多田によって人生に何かしらの影響を受けるキャラクターが多数出てきます。
というのも、この作品の(巻数毎の)エピソードタイトル毎に異なる依頼者とターゲットが出るからです。
その内何名かは更なる混沌の闇に堕ち、再登場もあります。
そこで改めて、正義や悪の概念を考えさせられたり、人間の愚かさの意味を問われたり、簡単には語れない深い作品でした。
また、人間の感情をダイレクトに表す画力の高さも作品の魅力です。
登場するサブキャラクターの多さから一部絵柄が似通う部分もありますが、そのキャラ同士の共演はないので特に問題はないです。
ということでご愛敬。
・まとめ
個人的に人間の感情の変化や反応、深層心理等に興味があるということもあり、様々な意味で楽しませてもらった結構好きなタイプの作品でした。
救いがあるかは人によりますが。
また、この作品には小説版と実写版もあります。
漫画に抵抗はあるけど、内容は気になるという方はそちらも一考の余地はありかと思われます。
コミック
電子書籍(まとめ買い対応)
小説
[asin:B07XF6TY2P:detail]実写
・おまけ
偶然か必然か、昨年のおうち期間にハマっていた漫画の作者さん同士のタッグでしたので、その際に書いた過去記事をそれぞれ関連リンクとして貼り付けておきます。
興味があればどうぞ~。
虐殺ハッピーエンド
gamemachine-alternativeshinku.hatenadiary.jp
ウロボロス
gamemachine-alternativeshinku.hatenadiary.jp
実写版(映画)の評価はこちら。
gamemachine-alternativeshinku.hatenadiary.jp
おまけ2
[asin:B09LBZT4ZC:detail]おまけ3
[asin:B0C3BL6CTY:detail]
[asin:B09YPR4QB3:detail]
[asin:B0BYX729D2:detail]