神黎の図書館

漫画・小説・映画・アニメ・ドラマを主観によるグラフ+点数+批評+感想を綴り、作品の評価をあらゆる形で視覚化したブログです。有名な作品から掘り出し物的な作品まで生涯の内になるべく多くの作品に触れて伝えていけたら本望です。

飛田ニキイチが描く獣たちが支配する世界での狩猟者の物語『MONSTER×MONSTER』

Monster×Monster コミック 1-3巻セット (少年サンデーコミックス)

・タイトル

MONSTER×MONSTER

・本の概要

時は大狩猟時代、巨躯なる獣たちが支配するこの世界において、獣を狩り、それを物資とする事は、生活の基盤となっていた。
皆が獣を狩る職業・狩猟者(ブリンガー)を目指す、夢と活気に満ちあふれた時代!!

この漫画の主人公もまた、狩猟者を目指す…

事はなかった。
少年漫画史上類を見ないほどのクズっぷりを見せつける主人公の職業はニート
向上心=0、自己評価=100の主人公(名前はまだ無い)が繰り広げる、主に家の中を中心とした大冒険活劇?

・著者情報

飛田ニキイチ

職業 漫画家。
イラスト・漫画投稿サイトPixivなどでの活動を経て、『週刊少年サンデー』2014年20号にて「MONSTER×MONSTER」の読切で漫画家デビュー。

点数 80点

ストーリー☆☆☆☆
画力☆☆☆☆☆
キャラクター☆☆
設定☆☆☆☆☆
没入感☆☆☆☆

・評価
今だと、異世界転生したらモンハン風の世界で俺は相も変わらずニートしてた。的なタイトルとしてヒットしてもおかしくないような気がします。

この作品は転生モノではないですし、異世界モノでもありません。
ただし、今の世からすれば現実離れした世界です。
強いて言うなら、もしかしたら有り得たかもしれない世界っていう感じです。

ストーリーは比較的シンプル且つ一貫したテーマ性を持っています。
簡単に言うと、ニートは立ち上がるのか立ち上がらないのか、脱却するのか、しないのか、心を入れ替えるのか、替えないのか、そんな感じです。
世界観的に命がけのニート脱出劇とも言えます。

画力は圧巻の一言であり、美麗。
ダイナミックさが求められる世界観の中で繊細に描かれるタッチの画は魅力であり、作品の最もセールスポイントになる部分だと思われます。

反面、キャラクター面はやや物足りないです。
巻数的にコンパクトにまとめなきゃいけない性質上仕方ないですが、微妙に活躍しきれてない設定の無駄遣いとも取れるので、あえて厳しく査定させてもらいました。
独特の個性を持つ主人公のクセは凄いし、十二分に発揮されていますが、サブキャラクターから人生をあまり感じなかったと言いましょうか…言葉にすると難しいですが、感覚的にはそんな感じです。
それぞれのバックボーンがしっかりしてただけに勿体無かったですね。

獰猛なモンスターから人間の道具として使われるモンスターまで、様々なモンスターが存在する世界観は面白かったし、ワクワクしました。ゲームチックなので。
モンハン的な皮や牙・鱗から武具や日用品を作ることもあれば、液晶を立体的に映し出したり、見たものを記憶するモンスターを組み合わせて僕らの世界で言うゲーム機やスマートフォン的な役割を果たす等、一部モンスターは狩られずに人間と共存しているのもまた特徴です。
この世界観×この主人公という組み合わせがなかなかに異色だとは思います(笑)

根本的に主人公クンの精神が腐ってるので、そこが売りでもあり、魅力なのですが、最初の1巻が鬼門です。
事情や能力が明らかになったり、慣れてくると読み終わりの爽快感に繋がります。

巨大だったり狂暴なモンスターを人間が狩る。
それが有り得る訳がないと思う方もいるかもしれませんが、地球は元々恐竜が栄えた場所ですし、旧石器時代はマンモスも狩っていたと思うので、同じ時代に存在したら狩るのを選ぶのが人間なんだと思います。

モンスターの素材から作った武具なら人間が使えるサイズでもモンスターに有効だと思うし、基本的に生活必需品も戦闘能力が皆無な弱いモンスターの持つ個性や個性の掛け合わせで賄われる世界なので、無駄がなく、ある意味スッキリした世界に思えます。
人間側も餌になる危険性ありますし、分かりやすい世界で案外いいかもしれません。

そんな世界でニートをやってるニート歴15年のアラサーが主人公としてやっていけるのか⁉️は見てのお楽しみということで。
と言っても流れみたいなものはこの後、ざっくりとは書きますが。


以下、商品リンクを挟んで、内容に触れつつ、個人的に感じた感想を書いています。
ネタバレが気になる方はご注意下さい。


MONSTER×MONSTER(1) (少年サンデーコミックス)
MONSTER×MONSTER(2) (少年サンデーコミックス)
MONSTER×MONSTER(3) (少年サンデーコミックス)



・感想
ニートにはニートの事情がある。
そして、変わりたくても簡単に変われるものでもない。
という観点からいろんな人に読んでもらいたい作品かもしれません。
もしかしたらそういう息子さんをお持ちのお母さんにも刺さるかもしれません。

そんなニートくんですが、都合が悪くなると逃げ出す、自分を棚上げして人を小馬鹿にした態度を内心で取る(実際はヘコヘコしてる)、母親にだけは強気。という絵に描いたようなニート像を体現した男ですが、一回り年下の青年の言葉に素直に感銘を受けて改心しようと心掛けたり、エロパワーで奮闘出来たり、ニートならではの純情さとも言えるアイデンティティを兼ね備えています。

そして、そんな彼が15年の時を経てトラウマを克服した時、他の誰にも出来ない彼ならではの狩猟者の路が切り拓くのでした。


この作品はどちらかと言うと尻上がりタイプな作品だと感じました。
序盤は世界観と主人公であるニートくんの人となりの説明に費やす部分が多いというか、そこに比重を置いているので、コメディ色があるとはいえ、もしかしたら不快感を示す人もいるかもしれません。

中盤は伏線と回想のニートの真実編(今僕が勝手に名付けました)です。

そしてクライマックスにかけては熱いバトルと格好いい場面が続き、ラストは……って感じです。


全3巻という絶妙なバランスが上手いことアクションとコメディを両立させた気がします。

そして、一部では圧巻とも言える画の迫力が凄いです。
ストーリー展開とニートの気持ちにリンクした画って感じです。
なので、クライマックスシーンはマジで格好いいですし、人を小馬鹿にする場面は心底ムカつきましたし、終盤の勘違いMAXの一人で盛り上がった恋愛描写は滑稽です。

人には色々な可能性があることを改めて教えてくれるいい作品でした。


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