神黎の図書館

漫画・小説・映画・アニメ・ドラマを主観によるグラフ+点数+批評+感想を綴り、作品の評価をあらゆる形で視覚化したブログです。有名な作品から掘り出し物的な作品まで生涯の内になるべく多くの作品に触れて伝えていけたら本望です。

六畳間のピアノマン

まずはじめに、このドラマはオムニバス形式なので、加藤シゲアキさんの主演ドラマのつもりで見ると、思いの外出番がないので、それ目当ての方は注意する必要がある作品です。

1話の冒頭と最終回のラストが同一なので出だしに置いてかれてもめげない気持ちが必要です。
以上の点をクリアすれば結構いいドラマだったと思います。

まず、原作との相違点ですが、
原作のほうは『逃げ出せなかった君へ』は、東京を舞台に、パワハラが原因で自殺する夏野誠に関わりを持つ6人の人物(誠の同期の村沢と大友、定年退職を迎えた誠の父、居酒屋の元店長、交通事故の現場に臨場した警察官、女子高生)に関する6つのエピソードから構成されてます。
逃げ出せなかった君へ
六畳間のピアノマン (角川文庫)

一方、ドラマでは大阪を舞台を大阪に、誠の同期・村沢、誠の父・泰造、誠にパワハラを働いていた元上司・上河内、女子高生・美咲の4名をメインに据えた4つのエピソードに再構築された物語が展開します。
(1)「自分を救う勇気」

今回はこのドラマ版に関するレビューです。
全てのエピソードで主役が異なるオムニバス形式ですが、この造りが素晴らしかったです。順番も含めて全てが好みでした。
始まりこそ切なくてやるせなくて許せない気持ち…怒り、哀しみ、憤りもありますが、心が救われるというか、人と人の関わりや縁ってものは凄いなって思って見入ってしまいました。
録画してたんですけど、一気見してしまう作品でした。

1話の中にあり、他の全ての物語に通じる大筋というか始まりのエピソードとして、サラリーマンの夏野が上司からのパワハラで追い込まれて事故死してしまう……という部分があります。
そして、夏野は辛い仕事の合間に、ピアノマンとして動画をあげていました。
ピアノマンの動画は苦境に立たされる人々の心を救う救いでもあったのです。

そんな彼の死を受けて、変わった人、そしてこれから変わり行く人、影響を受けた人…様々な想いが交錯しながらも人は前に進めるんだ。と思わせてくれる作品でした。


ここからは話数毎に書きます。
1話
夏野の同期の村沢が主役の話です。
とはいえ、1話であること、同期であることから、村沢・夏野・大友の同期3人による事故が起こる前のエピソードもあるので、最も2つの時系列が動くエピソードです。

会社に洗脳された社畜と化した新人社員を救うべくパワハラ上司を撃退する村沢。
そんな彼の過去も会社に洗脳された社畜でした……そんな彼の言葉だからこそ刺さるし、響くのです。
社畜って自覚ないから社畜なんだよなぁ~っていう言葉の原点に帰りました。

起点となるエピソードなので、第一印象がめちゃくちゃよかった訳ではないです。

そして、原田泰造さん演じる上河内の圧が凄い。そして強烈で凶悪。関西弁にしたことでより強固に感じる……かなりヘイトを向けられそうな役柄を演じられてるなぁ~って正直思いました。


2話
事故死した夏野の父親が主役のエピソードです。
これは本当に切ない。
息子を事故で失う哀しみや苦しみ、上司からのパワハラを知った時の憤りと憎しみ、気付いてあげられず、救えなかったことへの絶望感と虚無感。

そんな中、定年退職を迎え……何の因果か、笑顔で働く上河内を見つけて憤慨します。
しかも上河内は自分を覚えてないという……

怒りと憎しみ、虚無感に苛まれるも、息子のかつての同級生から息子の話を聞き、自身の中に未来の息子がいること、ピアノマンとしての息子の動画の存在を知り、前向きに生きていく決意をするのです。

社会復帰する最後の場面若者に励まされたわりに少々上からな物言いはちょっと「ん?」って思わなくもないですが、それはまあ、いいでしょう。

本当に弱い人は人に優しくする余裕なんてない。だから、たとえ損な役回りでも、人に優しく出来る人は強い。
これ格言だと思います。


3話
上河内が主役のエピソードです。
パワハラ上司として曝された後に記憶を失い、何とか踏ん張って生きている健気なおじさんです。
頑張って仕事もしてるし、笑顔も素敵だし、子供にも優しいし、それでこそ原田泰造だよ!って感じの印象です。

記憶がないからこれは別人なんだ、過去は流せよ。
とはさすがに言えませんが、健気すぎて好きになりました。

記憶を取り戻す、そして自分の家族を探す為に探偵を雇う上河内ですが、過去の自分の最低さと自分を探している人物がいない現実を突き詰められます。この場面は見てて結構辛かった…

過去の最低さを知るきっかけになったのが、2話とのリンク場面になる「知らないおじさんから向けられた殺意」による恐怖心というのもまた……

そして、記憶を失った上河内とも普通に接し、あのパワハラ上司だと知った後も普通に接してくれる優しい環境にも恵まれ、彼は「いい人になりたい」と願うのです。

そんな上河内がピアノマンの動画を紹介されて心洗われたり、素晴らしいと評価したり、ピアノマンの動向を少し気にする場面は心苦しかったです。

最も好き嫌いが分かれそうなエピソードです。
ちなみに僕はめちゃくちゃ好きです。


4話
やりたいこと(歌手活動)とやりたくないこと(アイドル活動)の狭間で揺れ動き、夢と現実の違いに悩み、絶望する女子高生を主役としたエピソード。

彼女はピアノマンの動画に勇気をもらい、励まされ、希望を抱きますが、母親の浮気、運営の金儲け、信じた人から裏切られる等が重なり、自暴自棄になってしまう。

直接的な付き合いや会話はなくても、ストリートライブをする若きアーティストと、見向きもされない駆け出し大道芸人の絆を描いた一面もあります。

これは南沙良ちゃんが可愛かったという理由で何度も見ました。

そして、1話に帰結するエピソードでもあるので、普通に好きなエピソードでもあります。


総評すると、原田泰造さんの演技力の高さと、音楽の良さが光る作品でした。

そして、全く異なる人生を送っているようで、思わぬところで人と人は繋がっている。
その事を感じさせてくれるドラマでした。


原作


おまけ(脚本家の代表作)

百円の恋

百円の恋

  • 安藤 サクラ
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おまけ(主要キャストの代表作)
加藤シゲアキさん

段田安則さん

原田泰造さん

南沙良さん

三浦貴大さん

上地雄輔さん


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劇場

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  • 山﨑賢人
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