神黎の図書館

漫画・小説・映画・アニメ・ドラマを主観によるグラフ+点数+批評+感想を綴り、作品の評価をあらゆる形で視覚化したブログです。有名な作品から掘り出し物的な作品まで生涯の内になるべく多くの作品に触れて伝えていけたら本望です。

破滅と絶望の最悪のシナリオ:現代風リメイク版『人間失格』

人間失格 コミック 全3巻完結セット (BUNCH COMICS)

・タイトル

人間失格(漫画版)

・本の概要

太宰治の問題作「人間失格」の現代風リメイク版。
「恥の多い生涯を送ってきました」
ネット上で見つけた大庭葉蔵の半生が赤裸々に綴られた日記。
掲示されていた3枚の写真は葉蔵の転落人生の軌跡を描いていた。
読み進めるほどに堕ち、崩壊していく葉蔵の人生。
彼は何に恐れ、何に怯え、何から逃げていたのか……
新たな解釈で現代に蘇った平成版人間失格!(連載当時は2009~2011年)

・著書情報

古屋兎丸(ふるやうさまる)

生年月日 1968年1月25日
東京都出身
本名 古屋剛

小学生の頃に「手塚治虫の漫画通信講座」を受け、『少年キング』の似顔絵コーナーの常連だった。
高校在学中はアングラな世界に目覚め、3年時に求めていた表現が油絵であるとに気づき美大に入学。
在学中は東京グランギニョルに憧れて演劇も行っていた。その後、抽象的な表現よりも具体的な形を求めるようになる。

卒業後はアーティストを志す。
油絵だけで身を立てるには難しい時世だったため、アルバイトでイラストを描いて収入を得る中、昔漫画を描いていたことを思い出し、漫画家への転身を決意。
その後、『月刊漫画ガロ』1994年9月号掲載の「Palepoli」でデビュー。
当初は高校の美術講師をしながら漫画執筆をしていた。

趣味は映画鑑賞、読書、散歩、バイクいじりなど。

伊集院光に心酔しており、『伊集院光 深夜の馬鹿力』のコーナーだった「デビッド・リンチ占い」をもとに描いたという『少年少女漂流記』、『π』、『ライチ☆光クラブ』も伊集院の影響を受けている。

多彩な画風と繊細で正確な描き込み、ブラックな作風を得意とする。

代表作
『ハピネス』
ライチ☆光クラブ
『彼女を守る51の方法』
『幻覚ピカソ
人間失格
帝一の國

・点数 100点

ストーリー☆☆☆☆☆
画力☆☆☆☆☆
キャラクター☆☆☆☆☆
設定☆☆☆☆☆
没入感☆☆☆☆☆

・評価
ダークなテーマの人間ドラマと言えば『人間失格』。自暴自棄になる作品と言えば『人間失格』。
深いテーマとメッセージ性は原作さながらであり、原作へのリスペクトを込めて違った切り口で描いているところが兎丸版の人間失格の特徴であり、魅力です。

古屋兎丸先生のアクの強い画が作品に対して絶妙にマッチして、深みのある闇、あり得たかもしれない救い、『人間失格』を現代に甦らせた意味を考えさせられる作風であり、言い表せないパワーを感じる絵柄でした。

キャラクター性に関しては言うまでもなくですね、なんか書くとネタバレになりそうなので、ここでは控えます。

設定に関しては、原作者リスペクト?の自己投影型の作者と同名同職業のキャラクター視点で解いて再構築された原作準拠型のストーリー構成になっており、尚且つ連載当初とはいえ、現代の設定も取り入れられ、読みやすくなった平成版の「人間失格」と言えます。

人間失格って何回も見て、中身も知ってるのに何でこんな息詰まって没頭してしまうのだろうか?
っていつも思います。
結末分かってても面白いのって凄いですよね。
そして、そんな作品を壊さずに完璧にリメイクしたこの作品も凄いです。


以下、商品リンクを挟んで、内容に触れつつ、個人的に感じた感想を書いています。
ネタバレが気になる方はご注意下さい。


人間失格 1巻 (バンチコミックス)
人間失格 2巻 (バンチコミックス)
人間失格 3巻(完) (バンチコミックス)


・感想
現代に甦る腐朽の不朽の名作!
と言っても10年ほど前の作品になりますが。

基本的には原作に忠実です。
違いとしては古屋という漫画家の存在(読者視点)と独自の解釈による微妙に分解して再構築したストーリーと限りなく0に近くてもギリギリ救いの可能性が残されたラストですかね。
救いのない原作よりかは幾分か読みやすいと思います。

あとはちょこちょこ現代風(連載当初)のアレンジが入ってるのでやはり諸々含めて読みやすくなっていると思います。

そして各巻末は原文の引用で元のストーリー、原作の雰囲気を感じ取ることもできるので、内容知ってる人も見れる内容だとは思います。
部分的な読み比べが1冊の中で出来るのって地味にスゴいですよね!

太宰治さんをリスペクトしつつもほんの少し違う切り口から人間の堕落と怖さと醜さ、そして愚かさを真正面から描いた作品です。

正直ミスミソウとこの人間失格は漫画だけど学校の図書室に置いてもいいと思います。
何ならこれを教材に道徳の授業してもいいんじゃないかな?って思うぐらい解釈しがいのある作品だと思います。

斜に構えてる人からしたら今時こんな展開ありえないってなるんだろうし、タイトル通り大庭葉蔵がクズ過ぎる部分を批判して作品自体を貶すかもしれませんが、そんな単純な表面上の話ではなく、深いところを感じ取ってほしいなー、勿体ないなーと思います。

小説版との大きな違いについてですが、古屋さんのアクの強い引き込まれる絵が作品の雰囲気ととにかくマッチしている。というのもこの漫画の魅力の1つです。

冒頭のクチコミで聞いた噂の日記を見付けた時の3枚の写真よかったです。
何がどうなってこの人は廃人になってしまうのか?と気になる作りになっています。

原作なり他の媒体の何らかの形で内容知ってる方に対するアピールポイントとしては、「あの人間失格から僅かな希望と救いを求めた新たなる解釈の人間失格」です。
破滅と絶望の最悪のシナリオではないので物足りないと言われればそこまでですが、一見の価値はあると思います。


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